遷延性意識障害で1級を取得した80代女性が6,124万円を獲得した事例

介護関連費用として2,200万円を獲得!

遷延性意識障害で1級を取得した80代女性が6,124万円を獲得した事例

介護関連費用として2,200万円を獲得!
後遺障害内容・部位 遷延性意識障害
診断名・症状名 脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血
後遺障害等級 別表第一第1級第1号
主な自覚症状

当弁護士法人後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い

賠償項目 獲得金額
治療費 375万円
入院雑費 95万円(裁判基準超)
近親者の付添看護費 50万円(裁判基準超)
付添人交通費 5万円(裁判基準超)
休業損害 345万円(裁判基準超)
後遺障害逸失利益 1,025万円(裁判基準超)
傷害慰謝料 320万円(裁判基準超)
後遺障害慰謝料 2,800万円(裁判基準超)
親族慰謝料 250万円(裁判所基準)
<将来介護費>➀ホーム入居一時金 576万円(裁判基準超)
<将来介護費>②月額施設料金料金 1,316万円(裁判基準超)
将来の雑費(オムツ代) 300万円(裁判基準超)
<後見等関係費用>➀後見等関係申立費用 20万円(裁判基準超)
<後見等関係費用>②後見人報酬等 260万円(裁判基準超)
合計 7,737万円(裁判基準超)
以上から既払金を差引き後、15%の過失で6,124万円の認定

ご依頼の経緯

1.ご依頼の経緯と事故態様について

本件は、事故からまだ間もない頃に、被害者の娘様から後遺障害や今後の生活をどうすればいいのかわからないとご相談のお電話を頂きました。被害者が入院する病院で初めてお会いした時は、未だお母様の変わり果てた状態を受け止める事が出来ない悲痛な面持ちでいらしたことが、今でも記憶に残っています。

 

今回の事故は、被害者が自転車で車道を横断しようとしたところ、右方から進行してきた加害者の自動車に衝突されたというものです。

このように動いている者同士の交通事故では、多くの場合、過失割合が争点の一つになります。特に本件の場合は、事故現場をどのように捉えるかが過失割合を決める上で重要な問題でした。

当初の相手方提案では被害者に30%の過失を主張されました。もし、現場を交差点として捉えると、被害者に30%近くの過失割合が認められてもおかしくない事案でした。

しかし、本件で被害者は、砂利の駐車場の脇に駐車場オーナーが鉄製のポールを渡して作ったとみられる小道から道路に出たところを車に衝突していました。

そこで、本件事故現場は交差点ではなく、被害者が路外から道路に出たときに起こった事故であり、横断歩道上を走行していたことから被害者の過失は最大で15%であると主張し、15:85で示談することに成功しました。

結果(後遺障害部分)

2.後遺障害について

被害者は事故直後からJCSでⅢ-300と判断される重篤な意識障害を呈していました。JCSは意識障害の程度を評価する指標の一つですが、これによるⅢ-300という評価は「痛みや刺激に全く反応しない」状態を指します。

その後、被害者には1年間にわたる治療が施されましたが、意識は回復せず、主治医により遷延性意識障害(いわゆる寝たきりの状態)と診断されました。

頭部外傷に起因する脳損傷に伴う症状は、「神経系統の機能または精神の障害」として後遺障害の審査・判断が行われます。この分野の障害は、骨折や欠損等のように目には見えないものの、社会生活に深刻な支障をきたすことが少なくないため、「神経心理学的検査」等を用いて、その程度を可視化することにより等級審査を行うのが通常です。

しかしながら、遷延性意識障害の場合、そもそも検査を実施することが不可能なため、重要な判断要素が一つ失われることになります。そのため、等級申請においては遷延性意識障害の状態にあることを明確に主張し、神経心理学的検査を実施することすらできないほど重篤な状態であることを伝えていくことが重要となります。

本件被害者は、このような重篤な状態にあることが認められたため、別表第一第1級第1号という適正な等級の認定を受けることができました。

 

示談交渉の経緯

3.示談交渉について

本件の加害者は、任意保険としてJA共済に加入していました。共済の場合、保険会社の任意保険と比べ示談金額について提案額・相場観ともに低額であることが多く、本件でも交渉は難航しました。

本件では、一般的に交渉のポイントとなりやすい①基礎収入の額や②保険会社からの赤い本基準の80%提案に加え、③付添費用とこれに係る交通費、④親族慰謝料、⑤将来介護費、⑥後見関係費用が争点となりました。

 

 ➀ 基礎収入の額(主婦の休業損害と家事労働の逸失利益)

 賃金センサス(厚生労働省による賃金に関する統計調査の結果をまとめたものです。)によると、収入の金額は40~50代がピークであり、それ以降は下降していきます。

本件における相手方共済の提案は「70歳以上の方の平均賃金を基礎収入の額とする」というものでした。

この点、被害者は事故受傷時点で80歳を超えていたため、相手方共済の提案は一見妥当に見えます。しかしながら、実態としては、被害者は家事従事者として自身の家の家事を全てこなすだけでなく、隣家で暮らす娘さん家族の家事も多くの部分を担い、更には家の周囲やご近所宅の花の手入れも手伝うほどの働き者でした。

そのため、当法人は、被害者の基礎収入は70歳以上の低い平均賃金ではなく、全年齢帯を対象とした平均賃金を基礎とするよう主張し、結果、これを認めさせることができました。

これに基づき、主婦の休業損害、後遺障害逸失利益とも認定を受けることに成功し、この部分だけで賠償金額は1,375万円となりました。

 

 ② 赤い本基準の80%提案

慰謝料の交渉では、任意保険会社がまず「任意保険基準」による提案を行うのに対して、弁護士が介入することで「赤い本基準(裁判基準、弁護士基準等とも呼ばれます。)の80%」程度で解決できれば御の字、というのが一般的な相場観という印象があります。しかしながら、当法人が介入する場合は極力100%での示談を目指して交渉に当たっています。

本件でも、害慰謝料・後遺障害慰謝料ともに100%の金額を認めさせることができました。この二つの慰謝料の合計金額は約3,120万円に上りました(別途親族慰謝料の認定を受けています。この点については以下の④をご参照下さい。)。

 

 ③ 付添費用とこれに係る交通費

相手方共済は「被害者の入院先が完全看護体制の病院であること」を理由として、ご家族の付添費用とそのための交通費については認めない旨を主張していました。

しかしながら、医師や看護師等が実施する看護とご家族による看護は、その性質が異なります。実際にご家族は、被害者にとってより効果のある「ご家族からのお声掛け」、「身体をさする」、「歌を歌って聞かせる等の音による刺激」等、ご家族にしかできない看護を実施していました。

そのため、このようなご家族の頑張りを漏れなく主張することで、付添費用・交通費ともに示談金額に計上することが認められました。

 

 ④ 親族慰謝料

被害者は、夫にとっては勿論のこと、娘さんやお孫さんにとってもかけがえのない存在でした。そのため、被害者は目覚めることができるのか、寝たきりの状態はいつまで続くのかがわからない先行き不透明な状態が、ご親族にも甚大な精神的苦痛を与えることは明らかでした。

当法人では、この点を重く捉え、示談金額の中にしっかりと組み込むよう主張し、結果として250万円の親族慰謝料を認めさせることができました。

 

 ⑤ 将来介護費

被害者は症状固定以降も寝たきりの状態が続くことが見込まれていたため、この費目は非常に重要でした。ご家族は、被害者の入所先施設について、「被害者が人工呼吸器を装着しているため、24時間、看護師が常駐している医療体制が万全な施設であること」、「そもそも、人工呼吸器を装着している被害者の受け入れが可能な施設であること」、「ご家族が付き添い、見舞うことが可能な場所であること」を希望していたため、これらを叶えるため、細かい費用も漏れなく算定して費用を計上しました。

そのような条件の施設は保証金がかかる上に月額使用料も高額であることから、何としても認定を受けるべく徹底的に交渉しました。結局、入居一時金(保証金)と月額使用料に加え、これとは別建てでおむつ代等の雑費についても十分に認定を取り付けることができ、合計で約2,200万円の認定を受けました。

 

 ⑥ 後見関係費用

被害者は今後も意思決定ができない可能性がありましたので、現実問題として後見手続は見過ごせない事項でした。しかしながら、相手方共済は当初、現実に申立てが行われていない段階で費用を認めることはできない旨を主張していました。

そこで、当職にて後見開始の申立てを行い、後見人の報酬についてもエビデンスを用意した上、後見人の報酬についても賠償の対象とされるべき旨を粘り強く訴えました。裁判例の中でも、後見開始の申立費用に加え、後見人の報酬についてまで認定される例は非常にレアですが、本件では、いずれについても示談金額に組み込むことが叶いました。

所感、争点

4.所感

本件では、相手方共済との計算書のやり取りが7往復にもおよびましたが、以上の争点を中心として交渉を重ねた結果、1級取得当初の相手方共済の提案額37,342,655円に対して、最終的に61,240,000円での示談を行うことができました。

被害者は症状固定の時点で目覚めることができなかったため、ご親族が以降の介護生活を安心して送れるよう金銭的な準備を実現することが、本件における当法人の使命でした。  

最終的に、娘さんからも感謝のお言葉を頂いて、本件を終えることができ、弁護士冥利に尽きるケースとなりました。