交通事故による半月板損傷の症状と認定される後遺障害等級について

半月板損傷は交通事故の外傷に多く、事故の衝撃で膝を強くひねった際に膝関節にある半月板が傷つくことで発症します。半月板が損傷すると、膝関節の動きが制限されたり、膝に痛みやひっかかりを感じたりと、後遺症が残る可能性があります。

交通事故により、半月板損傷で後遺障害等級が認定されると、加害者へ損害賠償請求をすることができます。後遺障害の症状や程度、それらをどれだけ立証できるかによって認定される等級は異なり、損害賠償の金額も変わってくるため、適正な等級認定を受けることが大切です。

この記事では、交通事故による半月板損傷の症状、認定される可能性の高い後遺障害について解説します。

交通事故による半月板損傷とは

半月板とは膝関節の中にある軟骨様の板で、関節に加わる負荷を分散させるクッションのような役割を持っています。半月板損傷は膝を強くねじったときや急激に負荷がかかったときに起こりやすく、交通事故の外傷としてよく見られる症状です。

例えば、バイク事故では車と衝突した際に運転手が地面に打ち付けられて、着地するときに膝関節が本来動かない方向に曲がってしまうことがあります。そこで、膝に大きな衝撃を受けた際に半月板を損傷することがあります。

半月板損傷の主な症状

半月板を損傷した場合、膝関節を動かすときや膝に負荷がかかったときに、強い痛みやひっかかりのような違和感を感じます。症状がひどくなると、膝関節内に水や血液が溜まったり、膝の曲げ伸ばしがまったくできなくなるロッキングという状態になったりと、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

半月板損傷の検査方法

半月板損傷の症状がみられる場合は、以下の検査を行う必要があります。なお、半月板はレントゲン写真には写らないため、基本的に単純X線検査は行われません。

MRI画像検査

医師の診察で半月板損傷が疑われる場合は、MRI画像検査を行います。MRI画像では、半月板の断裂だけではなく、靭帯損傷の合併の有無なども確認できます。

マクマレー・テスト

マクマレー・テストは主に半月板損傷の検査として行われるものであり、特別な器具は用いずに手で患者の足を動かしながら検査していきます。患者を仰向けにさせて膝を曲げ、ゆっくりと内側、外側へ動かしながら痛みの程度を診察します。

グリンディング・テスト

グリンディング・テストもマクマレー・テスト同様に、器具を使わずに手で行う検査方法です。患者をうつ伏せにさせて膝を曲げ、踵を下に押し付けながらまわしていき、痛みの程度を診察します。

半月板損傷の治療方法

半月板損傷の治療には、保存療法と手術療法の2種類があります。リハビリテーションや投薬などで症状が改善する場合は保存療法が用いられますが、痛みがひどい場合、半月板のひっかかりで膝の曲げ伸ばしができない場合は手術療法が用いられます。

手術療法では、損傷した箇所を切り取る切除術と、損傷した箇所を縫い合わせる縫合術があります。現在は内視鏡手術が進歩していることから、損傷箇所のみを切除し、その他の健常箇所は温存する方法が一般化しています。

半月板損傷の後遺症

交通事故で半月板損傷を負った場合、健常時のように膝を動かせなくなったり、痛みやひっかかりなどの違和感が続いたりと、事故の後遺症が残ることがあります。半月板損傷は治りにくい外傷であり、後遺症の症状によっては後遺障害として認定されます。よって、交通事故の後遺症が残った場合は、後遺障害申請を検討する必要があります。

半月板損傷の後遺症で認定される後遺障害等級

半月板損傷の後遺症で認定される可能性のある後遺障害は、関節の可動域が制限される「機能障害」と、膝の痛みやひっかかりが残る「神経障害」の2種類です。

機能障害

半月板損傷における機能障害では、関節を動かせる範囲に応じて後遺障害等級が決められています。正常な股関節の可動域と比較し、膝を曲げたり伸ばしたりしたときにどの程度動きが制限されるのか確認し、等級認定が行われます。

機能障害の後遺障害等級

半月板損傷の機能障害では、後遺障害等級8級7号、10級11号、12級7号のいずれかが該当します。

後遺障害等級 後遺障害の程度
8級7号 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
10級11号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

参考:国土交通省『後遺障害等級表』

膝関節が完全に動かない、もしくはこれに近い状態(健側(骨折をしていない側)の10%程度以下、又は可動域角度が10度以下に制限されているもの)の場合は「用を廃した」として8級7号が認定されます。また、健側(骨折をしていない側)の膝関節と比べ可動域が2分の1以下に制限される場合は10級11号、4分の3以下に制限される場合は12級7号がそれぞれ認定されます。

神経障害

半月板損傷における神経障害とは、神経が圧迫されることで生じる膝の痛み等の症状です。後遺障害等級の認定は、画像等で症状が医学的に証明できるかどうかで判断されます。

神経障害の後遺障害等級

半月板損傷の神経障害では、後遺障害等級12級13号か14級9号が該当します。

後遺障害等級 後遺障害の程度
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

参考:国土交通省『後遺障害等級表』

MRI画像などで症状が医学的に証明できる場合は12級13号、画像では証明できないものの症状について医学的に説明できる場合は14級9号が認定されます。

半月板損傷の後遺障害で請求できる慰謝料

半月板損傷の後遺症で後遺障害が認定された場合、交通事故の被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます。後遺障害が認められたことによる損害賠償には、後遺障害慰謝料と逸失利益の2種類があります。

後遺障害慰謝料は認定された等級によって基準が決められ、逸失利益は被害者の年収や労働能力喪失率などから算出されます。

機能障害の慰謝料

半月板損傷の機能障害で認められる後遺障害等級は、8級7号、10級11号、12級7号のいずれかです。各等級の慰謝料基準や労働能力喪失率は、以下の表を参考になさってください。

後遺障害8級7号の場合
慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 労働能力喪失率
331万円 830万円 45%
後遺障害10級11号の場合
慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 労働能力喪失率
190万円 550万円 27%
後遺障害12級7号の場合
慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 労働能力喪失率
94万円 290万円 14%

神経障害の慰謝料

半月板損傷の神経障害で認められる後遺障害等級は、12級13号か14級9号です。
各等級の慰謝料基準や労働能力喪失率は、以下の表を参考になさってください。

後遺障害12級13号の場合
慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 労働能力喪失率
94万円 290万円 14%
後遺障害14級9号の場合
慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 労働能力喪失率
32万円 110万円 5%

交通事故の半月板損傷で等級認定を受けるには

交通事故の被害者が半月板損傷で等級認定を受けるには、以下の3つのポイントを意識するとよいでしょう。

事故後なるべく早めに精密検査を受ける

交通事故に遭った後は、なるべく早めに病院でMRI画像検査を受けましょう。
交通事故の後遺症で等級認定を受けるには、事故と外傷の因果関係を証明する必要があります。時間が経つと関係性を証明しづらくなり、等級認定に不利になってしまいます。そのため、早い段階で精密検査を受けておくことが大切です。

治療中に複数回可動域検査を受けておく

半月板損傷によって関節の可動域に制限が生じていることを証明するために、可動域検査は治療中に複数回実施してもらいましょう。また、毎回同じ医師に検査を担当してもらい、測定値に変動がある場合は数値の記録のみならず、なぜそうなったのか原因を追求してもらうことも大切です。

正確な後遺障害診断書を書いてもらう

これ以上治療しても治る見込みがない状態を「症状固定」と言い、医師は症状固定を判断したあとに後遺障害診断書を記入することになります。

後遺障害診断書は、後遺障害認定を受ける際に非常に重要な役割を持ちます。よって、正確かつ適切な診断書を書いてもらうことが大切です。交通事故に詳しい弁護士に相談すると、診断書の内容チェックや、場合によっては医師へ修正・加筆を依頼してもらえます。

半月板損傷は等級認定がされにくい!高齢者の事故は特に注意が必要

半月板損傷は交通事故に多い外傷ですが、半月板の異変は加齢によるものとみなされる場合があります。高齢者は半月板が弱くなるケースが多いためですが、保険会社はそれを理由に事故との因果関係を認めないことがあります。

高齢者の場合に限らず、半月板損傷は等級認定がされにくい外傷ですので、交通事故に強い弁護士に依頼して、適切な診断書を作成して事故との因果関係を立証する必要があります。

交通事故の半月板損傷で後遺症が残ったら弁護士に相談すること

交通事故の半月板損傷で後遺症が残った場合は、交通事故問題に精通する弁護士に相談・依頼しましょう。

交通事故被害者のために、弁護士ができることは以下の通りです。

  • ・適切な治療や検査の受け方についてアドバイスできる
  • ・後遺障害認定されるための条件や過去の判例を医師に説明できる
  • ・後遺障害診断書の書き方や内容に関してサポートできる
  • ・希望の等級認定が受けられなかった場合は、証明となる書類を集めて異議申し立てができる
  • ・医学的証拠に基づく高水準の示談交渉

まとめ

半月板損傷は交通事故の外傷として散見されますが、事故との因果関係を証明しづらい一面があります。特に高齢者の場合、半月板が傷つきやすいため、後遺障害等級が非該当になるケースが多いため要注意です。

よって、後遺障害等級の認定を受けるには、なるべく早めに弁護士に相談することが大切です。弁護士法人オールイズワンは、これまで交通事故で半月板損傷された方のサポートを数多くおこなってきました。経験豊富な弁護士にぜひご相談ください。