基礎知識

賠償金の計算方法

ここでは、賠償金の計算方法について、解説いたします。
事故後、加害者側の保険会社とやり取りをしている中で、示談案を提示されることがあります。そんな時、被害者の方々は、「見方がよくわからない」とか、「適切な提示額なのかどうか分からない」といった状況に陥らざるを得ません。保険会社は、保険のプロなわけですから、この提示額がいかに妥当なものであるかを説明してきます。
しかし、先にも述べましたとおり、多くの場合、このような提案書は①自賠責保険の基準か、または②任意保険の基準に基づいて作成されているものですから、③裁判所の基準よりも低いのが当たり前です。
それだけでなく、保険会社は、できるだけ賠償金の支払いを少なく済ますために、各項目の計算についても自社に有利な解釈をもとにして計算することが多々あります。
まず、主な賠償金の項目をご覧ください。

主な賠償項目

財産的損害積極損害 ①治療関連費用
[治療費、通院交通費、付き添い看護費、将来の手術費など]
消極損害 ②休業損害
[事故で休業した機関の収入]
③後遺障害(死亡)逸失利益
[将来得られたであろう収入のうち、後遺障害(死亡)によって得られなくなるであろう減収分]
精神的損害慰謝料 ④傷害慰謝料 
[事故による負傷によって受けた精神的苦痛に関する慰謝料(入通院期間や怪我の内容により基準が定められています]
⑤後遺障害(死亡)慰謝料
[後遺障害が残った場合(被害者の方が亡くなられた場合)の精神的苦痛に関する慰謝料(後遺障害等級ごとに基準が定められ、死亡の場合は被害者ご本人の他に遺族固有の慰謝料が認められます)]

事故の日から長期間通院治療を続けているうち、主治医の先生から、「もう通院は終了でいいでしょう」とか、「これ以上は通院してもよくならないでしょう」といったお話をされます。これを症状固定と言います。しかし、保険会社は、その主治医の先生が決めた症状固定の日よりももっと前に本当は症状固定しているはずだという考えをもとに、賠償金額の提示をしてきていることがあります。

例えば、ある年の7月まで治療をしたのに、保険会社は3月までで症状固定していると考えている場合、治療費や休業損害は3月までしか認められませんから、4か月分、実際に生じた損害より少ない賠償額の提示がなされていることになります。
また、慰謝料についても、6か月間にわたり週3回通院していたような場合に、弁護士であれば全通院期間である約180日分(30日×6か月=180日)の慰謝料を請求しますが、保険会社は、実際に通院した日の分だけ、つまり、180日を26週間とすると、週3回ですから、78日分(26週間×3回=78日)の慰謝料だけを支払という提示をしてくることがほとんどです。
これは飽くまで氷山の一角です。それでも、保険のプロの方から、流れるようにもっともらしい説明を受けると、「そういうものなのかなあ。」と思ってしまうものです。
しかし、急いで応じなければならない理由はありません。すぐに応じないから不利になるということは全くないのです。
「少し考えさせて下さい。」と伝えて回答を保留し、専門の弁護士に相談すればよいのです。

交通事故に遭うこと自体、辛く忌まわしいことです。
あなたのその思いをきちんと保険会社に伝え、正しい損害賠償額を受け取ってこそ、本当の解決と言えるのです。そして、交通事故のことをきれいさっぱり忘れて、新たな一歩を踏み出していただかなければなりません。
一生に一度あるかどうかの大切なことです。「保険会社から示談案の提示を受けたが見方がよくわからない。」、「本当にあの担当者は私の話を聞いてくれているのだろうか。」、「賠償金額の内容に納得できないところがある。」。そんな時は、そのままサインすべきではありません。一人で悩まず、まずは弁護士に相談されるべきです。