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2019年9月3日

ご紹介いただける信頼関係

1.受任ルートは、弁護士によって様々ですが、ウェブや法律相談、知人の紹介というのが、一般的な受任ルートのようです。

しかし、私の場合は、一度ご依頼を受け、事件処理をさせていただいた方からのご紹介が、実に全体の3分の1を占めています。
Tさんは、普通自動車で走行中、脇から出てきた自動車に側面から衝突を受け、車が一回転する事故に遭い、相談にいらっしゃいました。Tさんは犬のブリーダー事業を起業されたばかりで、休業損害や逸失利益の請求は困難を極めました。また、走行中に同乗していた犬も亡くされ、慰謝料の請求も希望されていました。取引の対象としての犬を失った点に関する逸失利益と共に、慰謝料を請求することには相当の工夫を要しましたが、過去の類似事案の検証とTさんとの相談を繰り返しました。
その後通院の末、後遺障害等級14級が認定され、休業損害、逸失利益、犬を失った点に関する逸失利益、慰謝料等全ての請求を認めさせることに成功し、物損と合わせて1,000万円程度の賠償金を獲得しました。
その後、Tさんからは、その後、交通事故は勿論、刑事事件や離婚等その他の分野に関しても、何人ものご友人をご紹介いただいています。

2.Hさんと初めてお会いしたのは、一昨年のある秋の温かい昼下がり、浦和の弁護士会の法律相談センターの一室でした。

その日は特に交通事故の専門相談の日ではなかったのですが、Hさんは交通事故の負傷による3年間にわたる通院生活を終えられ、損害賠償について保険会社とのやり取りに途方に暮れて相談にお見えになりました。偶然私の専門分野でしたので、主治医の先生への積極的アプローチを繰り返し、また過失割合に問題のある事案でもありましたので、飯能市の現場に赴き現場検証を行い、万を持して賠償請求を行いました。
その結果、後遺障害等級11級が認定され、賠償金は、保険会社の当初提示額である500万円から4,000万円にアップしました。Hさんが交通事故により受けられた肉体的・精神的苦痛を思えば、十分な賠償金額などあり得ないところです。しかし、Hさんはご自分の交通事故体験について心より納得され、終止符を打たれたようでした。
最後に事務所でお会いしたとき、「青木先生にお会いすることができて、本当に良かった。」とおっしゃって下さったその言葉が、今も胸の奥深くに残っています。
納得の賠償金をお受け取りいただき、最後にお客様が見せて下さる会心の笑顔が、私にとっては宝物です。
その後、Hさんから別件のご依頼があり、またお会いすることができました。Hさんは見事交通事故を克服され、実に晴れがましい笑顔で、元気にお仕事に戻られているとのお話を伺うことができ、私は何とも嬉しい気持ちになりました。

3.Tさんは、普通乗用自動車運転中、バイクに追突される事故に遭いました。

しかし、この件で加害者は、単純な追突ではなく、追い越そうとしたときにTさんの車が突然飛び出してきたので事故を起こしたという主張を崩しませんでした。
受任当日、Tさんは、「そんなアホな話はない!後ろからぶつかってきたんや!!」と怒り心頭でした。
訴訟において、裁判官は、証拠によって事実があるかないかを判断しなければならず、決定的な証拠がなければ、お互いに真逆のことを言っている原告と被告のどちらが本当のことを言っているのか、なかなかわからないものです。
本件では、決定的とまでいえる証拠はありませんでしたが、Tさんの車両の損傷について、バイクの衝突による力の入力方向の検証結果を軸に、加害者の供述のおかしさを追求し、尋問で見事、加害者の主張が根本的に破綻していることを示すことができました。
私は、ここまできたら判決を頂きたいという気持ちになっていましたが、Tさんは、「もういい。和解でええやろ。」とおっしゃり、弁護士費用も含めての異例の条件で勝訴的和解が成立しました。
和解成立後、「良かった!すっきりしたわ~!」と、いつもは物静かなTさんの大きな声が法廷にこだましました。私にとっても痺れる瞬間でした。
Tさんは、「今度は相続の相談に乗ってくれるか。わしの弁護士としてな。」と言い残し、裁判所の駐車場に消えていきました。
加害者から事実と全く異なる事実の主張を受けて困惑され、怒りに震えていたTさんの顔が、満面の笑みに変わっていく一部始終を目にすることができた、掛け替えのない案件の一つです。