交通事故による背骨骨折の後遺障害と慰謝料について解説


交通事故で背中や腰に強い衝撃を受けると、背骨骨折が生じることがあります。
背骨を骨折すると非常に強い痛みが生じ、寝返りも打てない状態になることが多いです。治療によって痛みは軽減していきますが、後遺症が残ることも少なくありません。
この記事では、背骨骨折に関する基本的な知識や、後遺症が残った場合の後遺障害等級、慰謝料相場について解説します。
背骨骨折とは
背骨骨折とは、文字どおり、背骨の一部に骨折が生じた状態のことです。以下で、背骨骨折について詳しく解説します。
背骨の範囲
背骨は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨という5つの部位から構成されています。
しかし、仙骨と尾骨は骨盤骨を構成する骨でもあることから、交通事故の後遺障害認定では、仙骨や尾骨の骨折は骨盤骨折として扱われます。
そのため、本記事では、頚椎、胸椎、腰椎のどれかを骨折した場合のことを、背骨骨折に当たるものとして解説していきます。
なお、交通事故による背骨骨折で多いのは、胸椎骨折と腰椎骨折です。胸椎は12個の椎骨により、腰椎は5つの椎骨により構成されています。
骨折の種類
ひと口に骨折といってもさまざまな種類がありますが、背骨骨折では主に次の3種類のものが生じます。
- 圧迫骨折…上下からの圧力によって骨が押しつぶされるように変形したもの
- 破裂骨折…骨が押しつぶされて折れてしまい、骨片が前後(脊柱管内)に飛び出したもの
- 粉砕骨折…骨が砕け散り、3つ以上の破片に別れたもの
圧迫骨折より重度のものが破裂骨折、それよりさらに重度のものが粉砕骨折と理解しておくとよいでしょう。
背骨はもともと臼状の椎骨がいくつもつらなって構成されていることから、背骨骨折の圧倒的多数は圧迫骨折であり、粉砕骨折にまで至るケースは少数です。
脊柱圧迫骨折との違い
脊柱圧迫骨折とは、背骨骨折のうち、破裂骨折や粉砕骨折を除き、圧迫骨折に該当するもののみを指すものです。
なお、背骨と脊柱はまったく同じ意味です。医学用語では「脊柱」、日常用語では「背骨」と呼ばれています。自賠責保障法施行令の別表(後遺障害等級表)では、「脊柱」と称されています。
交通事故による背骨骨折の原因と症状、治療方法、治療期間
次に、交通事故による背骨骨折の原因や症状、治療方法、治療期間について解説します。
主な原因
背骨骨折の主な原因は、背中や腰に強い衝撃を受けることです。
歩行中に自動車と衝突した場合や、バイクや自転車に乗車中の事故で転倒した場合などに背骨骨折が生じることが多いです。
自動車に乗車中でも、後方から勢いよく追突された場合などで背骨を骨折することもあります。
症状
背骨骨折の主な症状は、強い痛みです。起き上がりや立ち上がりが困難になり、寝返りも打てないほど強く痛みます。
破裂骨折と粉砕骨折では、砕けた骨が脊髄を圧迫するため、手足の痺れや麻痺、筋力低下、歩行困難、排尿障害などを伴うことがあります。
圧迫骨折でも、変形した骨が脊髄を圧迫することにより、これらの症状が出る場合があることに注意が必要です。
治療方法
背骨骨折の治療は、保存療法が基本です。コルセットで患部を固定し、受傷直後は安静にします。ただし、脊髄への圧迫が強い場合などでは、手術が行われることもあります。
痛みが治まってくると、筋力や可動域を回復させるためのリハビリを行います。
治療期間
背骨骨折が完治するまでの治療期間は、3~6ヶ月程度が目安となります。
後遺症が残るケースでは、リハビリ期間も含めて6ヶ月~1年程度の治療を要することも多いです。
交通事故による背骨骨折の後遺障害等級と慰謝料
交通事故による背骨骨折で後遺症が残った場合は、後遺障害等級の認定申請をすることにより、治療期間に応じて支払われる入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
以下では、背骨骨折による後遺障害の種類ごとに、認定される可能性がある後遺障害等級と、後遺障害慰謝料の目安をご紹介します。
変形障害
変形障害とは、骨折後に骨が変形したまま固まってしまい、元に戻らなくなった障害のことです。
変形障害によって認定される可能性がある後遺障害等級と後遺障害慰謝料の目安は以下のとおりです。
| 後遺障害等級 | 後遺障害の内容 | 後遺障害慰謝料(自賠責基準) | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
| 第6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの | 512万円 | 1180万円 |
| 第8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの | 331万円 | 830万円 |
| 第11級7号 | 脊柱に変形を残すもの | 136万円 | 420万円 |
運動障害
運動障害とは、骨折が治った後も首や背中、腰の可動域が事故前よりも狭くなり、思うように動かせなくなった障害のことです。
運動障害によって認定される可能性がある後遺障害等級と後遺障害慰謝料の目安は以下のとおりです。
| 後遺障害等級 | 後遺障害の内容 | 後遺障害慰謝料(自賠責基準) | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|---|
| 第6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの | 512万円 | 1180万円 |
| 第8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの | 331万円 | 830万円 |
荷重障害
荷重障害とは、体幹を支える機能が著しく低下し、コルセットなどの硬性補装具を装着しなければ姿勢を保てなくなった障害のことです。
荷重障害は運動障害に準じて取り扱われるため、認定される可能性がある後遺障害等級と後遺障害慰謝料の目安は、運動障害の場合と同じです。
神経障害
神経障害とは、骨折が治った後も痛みやしびれ、まひなどの神経症状が残った障害のことです。
神経障害によって認定される可能性がある後遺障害等級と後遺障害慰謝料の目安は以下のとおりです。
| 後遺障害等級 | 後遺障害の内容 | 後遺障害慰謝料(自賠責基準) | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
|---|---|---|---|
| 第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
| 第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 |
保険会社から慰謝料の減額を主張されたときの注意点
加害者側の保険会社は、任意保険基準で慰謝料を算定します。その計算方法は非公開のため不明なので具体的な金額はご紹介していませんが、後遺障害慰謝料については、自賠責基準とほぼ同額を提示してくることがほとんどです。
そのため、保険会社からの提示額は弁護士基準による正当な慰謝料額より大幅に低いことがほとんどですが、そこからさら保険会社が減額を主張してくることも少なくありません。
慰謝料で損をしないためには、減額を主張されるケースや反論するためのポイントを理解しておくことが大切です。
背骨骨折で慰謝料の減額を主張されるケース
先ほどご紹介した後遺障害等級に該当する症状が残ったとしても、以下のケースでは、保険会社が慰謝料の減額を主張してくることが多いです。
- 被害者が骨粗鬆症を抱えていた場合
- 被害者に既往症があった場合
特に、被害者が高齢者の場合や、事故前から椎間板ヘルニアなどで背骨に問題があった場合などで、減額を主張されやすいです。
これらのケースでは、被害者の体質や持病の影響で症状が悪化し、損害が拡大したものと判断されるのです。このように、被害者がもともと有していた要因を考慮して慰謝料を減額することを「素因減額」といいます。
反論するためのポイント
裁判例でも素因減額が行われたケースは数多くありますが、必ずしも素因減額が行われているわけではありません。
被害者が高齢者のケースや、既往症があったケースであっても、症状の悪化に影響しないケースはありますし、影響したとしても、その度合いは事案ごとに異なります。
素因減額を主張するなら、保険会社の側で、どのような要因がどの程度、症状の悪化に影響したのかを医学的に証明しなければなりません。
したがって、慰謝料の減額を主張された場合には、被害者が「高齢者であること」や「椎間板ヘルニアの治療歴があること」などは、それだけでは素因減額の理由にならないことを伝えて、医学的な証明を求めるべきです。
主治医に相談して、医学的な観点からの意見書を作成してもらい、保険会社へ送付するのもよいでしょう。
交通事故による背骨骨折で後遺障害認定を受けるための注意点
背骨骨折で後遺症が残った場合、後遺障害に認定されるか、認定されるとしても何級の後遺障害になるかによって、慰謝料の金額が大きく異なります。
適正な後遺障害等級の認定を受けるために、以下のポイントに注意しましょう。
十分な治療を受ける
まずは、医師が「症状固定」と判断するまで、継続して治療を受けましょう。
症状固定とは、「これ以上は治療を続けても症状の改善が見込めない」という状態に達することです。
治療継続中に保険会社が「そろそろ症状固定にしましょう」と打診してくることもありますが、安易に応じてはいけません。
医学的に症状が固定していないにもかかわらず治療を終了すると、後遺障害等級認定の申請をしても、症状改善の見込みがあると判断され、後遺障害に認定されないおそれがあります。
また、治療期間が本来より短くなるため、入通院慰謝料も本来の金額より減額される可能性が高いことにも注意が必要です。
詳しい検査を受けておく
後遺障害等級の認定を受けるためには、残った症状の内容や程度を、診断書やカルテ、検査結果などの書類で証明しなければなりません。
そのため、後遺障害等級認定の申請を行う前に、詳しい検査を受けておくことが非常に重要です。
例えば、神経障害では、骨が脊髄を圧迫していることをCTやMRIの画像で証明できれば、第12級13号の後遺障害に認定される可能性があります。
しかし、X線検査しか受けていなければ脊髄の圧迫を証明できずに、第14級9号に認定されたり、非該当と判断されたりすることにもなりかねません。
後遺障害診断書の内容を確認する
症状固定の診断を受けると後遺障害診断書が発行されます。後遺障害診断書には最終的に残った症状の内容や程度が記載され、その症状のみが後遺障害認定の審査対象となります。
そのため、後遺障害等級認定の申請を行う前に、後遺障害診断書の内容を確認しておくことが非常に重要です。
しかし、医師は後遺障害等級の認定申請のプロではないので、必ずしも適切な内容の後遺障害診断書を作成してくれるわけではありません。
そのため、後遺障害診断書を受け取ったら、一度、弁護士に相談して内容を確認してもらうことをおすすめします。
交通事故による背骨骨折の示談交渉は弁護士に相談を
交通事故による背骨骨折で適正な慰謝料を受け取るためには、早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士のサポートを受けることで、以下のメリットが得られます。
- 治療の受け方や、受けておくべき検査についてアドバイスが受けられる
- 症状固定の時期について正しいアドバイスが受けられる
- 後遺障害診断書の内容を確認してもらい、必要があれば医師に修正や再発行を依頼してもらえる
- 必要に応じて後遺障害等級認定の申請を被害者請求で行ってもらえるので、適正な後遺障害等級に認定される可能性が高まる
- 弁護士基準で慰謝料を請求してもらえる
- 加害者側との示談交渉を任せられる
- 法的な観点から交渉してもらえるので、納得のいく賠償金が期待できる
被害者が自分で対応すると、保険会社から一方的に不利な示談案を押し付けられ、泣き寝入りすることにもなりかねません。
賠償金で損をしないためにも、弁護士による専門的なサポートを活用するとよいでしょう。
まとめ
交通事故で背骨を骨折すると、しばらくは安静が必要となることが多いです。後遺症が残ると、その後もずっと、仕事や日常生活に支障をきたすおそれがあります。
それだけに、適正な補償を受けることは欠かせません。そのためには、十分に治療を受けた上で適正な後遺障害等級を獲得し、弁護士基準で慰謝料を請求することが重要です。
弁護士法人オールイズワンは、交通事故に専門特化した法律事務所です。背骨骨折で後遺障害を負った方の示談交渉をサポートしてきた実績も豊富にございます。
背骨骨折の賠償問題でお困りの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。






