後遺障害等級認定の手続きの流れを解説
交通事故による怪我で後遺症が残ったら、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求する前提として、後遺障害等級の認定を受けることになります。
その認定結果によって、最終的に受け取れる損害賠償金の額は大きく変わることに注意が必要です。
適切な額の損害賠償金を受け取るためには、あらかじめ後遺障害等級認定の手続きの流れを知っておいた方がよいでしょう。
ここでは、後遺障害等級認定の手続きの全体的な流れをご紹介した上で、各ステップにおける注意点も解説します。
適切な後遺障害等級を獲得するためのポイントもご説明しますので、ぜひ参考にしてください。
後遺障害等級認定の手続きの全体的な流れ
後遺障害等級認定の手続きの全体的な流れは、以下のとおりです。
- ①医師の指示に従って治療を受ける
- ②医師から症状固定の診断を受ける
- ③医師に後遺障害診断書を作成してもらう
- ④後遺障害等級認定の申請をする
- ⑤損害保険料率算出機構の審査を経て認定結果が通知される
- ⑥認定結果に納得できない場合は異議申立てをする
以下では、後遺障害等級認定手続きの流れの中で、重要なステップについて個別に解説します。
症状固定とは
症状固定とは、怪我の症状が良くも悪くも変化しなくなり、それ以上は治療を続けても改善が見込めない状態になることを指します。
症状固定に至ったかどうかは医学的な判断なので、医師が症状固定と診断するまでは治療を続けましょう。
治療中に保険会社が「そろそろ症状固定にしてはどうでしょうか」などと打診してくることがありますが、安易に応じてはいけません。
まだ症状に変化が見られる状態で後遺障害等級認定の申請に進むと、「治療継続により改善が見込める」などの理由で後遺障害等級に非該当と判断されるおそれがあるからです。
保険会社から症状固定や治療終了の打診を受けて、納得できないときは主治医や弁護士に相談した上で対応しましょう。
後遺障害診断書のもらい方
症状固定の診断を受けたら、その医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書とは、症状固定時に残った後遺症についての他覚症状や自覚症状などを記載した診断書のことです。
後遺障害診断書は、「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」という専用の書式で作成してもらわなければなりません。そのため、まずは書式を入手する必要があります。
加害者側の任意保険会社に申し出れば、書式を送付してもらえます。後でご説明する「被害者請求」をする場合は、加害者側の自賠責保険会社に連絡して送付してもらうことも可能です。
また、国土交通省の「自賠責保険・共済ポータルサイト」などからダウンロードした書式を使用しても構いません。
用意した書式を医師に渡して依頼すると、早ければ数日中に後遺障害診断書を作成してもらえます。医師が多忙な場合は1ヶ月ほどかかることもありますが、基本的には待つしかありません。
後遺障害等級認定の申請方法
適切な内容の後遺障害診断書を受け取ったら、後遺障害等級認定の申請を行います。
申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2通りがあります。
事前認定
事前認定とは、後遺障害等級認定の申請手続きを加害者側の任意保険会社に任せる方法のことです。
事前認定によれば、被害者は後遺障害診断書を保険会社へ送付するだけで済むので、申請のための手間や時間がかかりません。
しかし、加害者側の任意保険会社は必要最低限の資料しか審査機関に提出しないのが通常です。そのため、資料不足により後遺障害等級に非該当と判断されたり、実際よりも低い等級に該当すると判断されるおそれがあります
被害者請求
被害者請求とは、被害者自身がすべての必要書類を収集し、後遺障害等級認定の申請を直接行う方法のことです。
収集した必要書類を加害者側の自賠責保険会社へ提出すれば、申請手続きは完了です。その後は自賠責保険会社から損害保険料率算出機構へ書類が送られ、審査が行われます。
被害者請求による場合は、後遺障害診断書の他にも、保険金請求書や交通事故証明書、事故発生状況報告書、レントゲン写真などをはじめとして、数多くの資料を用意しなければなりません。
漏れなく資料を集めるためには、多大な労力と時間を要します。有益な資料を準備するためには、専門的な知識も要求されます。
その反面で、被害者請求によれば有益な資料を自由に収集して審査機関へ提出できるので、適切な後遺障害等級を獲得しやすくなります。
事前認定と被害者請求はどちらがよい?
事前認定と被害者請求は、それぞれに一長一短があるため、一概にどちらがよいとはいえません。
ただし、必要最低限の資料でも後遺症の内容や程度が客観的に確認できる場合は、事前認定でも適切な後遺障害等級に認定されやすいといえます。
例えば、骨折などで骨が変形したケースや、手足・指を切断したケース、外貌醜状が残ったケースなどが挙げられます。
一方で、後遺症の内容や程度が客観的に確認しにくい場合は、被害者請求をした方がよいでしょう。例えば、むちうちで神経症状が残ったものの、レントゲン写真などでは異常が認められないケースが挙げられます。
このような場合でも、カルテや医師の意見書、被害者が作成した陳述書などの資料を補充して、負傷した状況やその後の症状の経過などを説明できれば、後遺障害等級に認定される可能性があります。
とはいえ、事前認定と被害者請求のどちらがよいかはケースバイケースなので、後遺障害診断書を受け取った時点で一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。
後遺障害等級認定結果の通知
後遺障害等級認定の申請後、平均して1~2ヶ月程度の審査機関を経て、認定結果が書面(通知書)で通知されます。
通知書には、何級何号の後遺障害に認定されたのか、あるいは「非該当」といった認定結果とともに、その理由も記載されています。
認定結果に納得できない場合は、理由もよく読むことが大切です。
認定結果に納得できない場合は異議申立て
通知書に記載された理由を読んでも認定結果に納得できない場合は、異議申立てをすることで再審査を求めることができます。
異議申立ての手続きは、「異議申立書」を提出するだけでもできます。しかし、新たな資料を補充して提出しなければ、認定結果を覆すことは難しいのが実情です。
そのため、当初の申請を事前認定で行った場合でも、異議申立ては被害者請求で行うことをおすすめします。
認定結果を覆すほどの資料を準備するためには専門的な知識を要するので、異議申立ての手続きは弁護士に依頼した方がよいでしょう。
適切な後遺障害等級を獲得するためのポイント
症状に見合った適切な後遺障害等級を獲得するためには、以下のポイントに注意が必要です。
症状固定の診断時期が適切か
症状固定となるまでの期間は怪我の内容や程度によって異なりますが、最低でも6ヶ月程度の治療を要することが多いです。
この点、保険会社は怪我の種類ごとに治療期間の目安を定めています。例えば、むちうちでは3ヶ月程度が目安とされています。
その期間が経過すると実際の状況にかかわらず、「そろそろ治療を終了しましょう」「治っていないのなら症状固定にしてはどうでしょうか」などと打診してくることが少なくありません。
しかし、症状固定の診断時期が早すぎると、まだ症状の改善が見込まれることに加えて、治療期間が短いことから軽傷とみなされてしまい、後遺障害等級に非該当と判断される可能性が高くなります。
早期に保険会社から打診を受けた場合は医師に相談し、まだ治療の必要性があると言われたら保険会社にその旨を伝えて、治療の継続について交渉すべきです。
それでも保険会社が治療費の支払いを打ち切ろうとする場合は、健康保険に切り替えて自費で治療を継続するのもひとつの方法です。
その後に医師から症状固定の診断を受けて後遺障害等級に認定された場合は、自費で支払った治療費も保険会社に請求できます。
後遺障害診断書に適切な内容が記載されているか
後遺障害等級認定の審査では、後遺障害診断書に記載された症状のみが対象となります。そのため、後遺障害診断書は適切な後遺障害等級を獲得するために非常な重要な書類です。
特に自覚症状については、被害者本人が医師に訴えなければ正しく記載されません。
後遺障害診断書の作成を依頼する際には、どの部位にどのような症状が残っているのかを、漏れなく具体的に伝えましょう。
また、医師は交通事故の損害賠償請求のプロではないので、すべての医師が後遺障害診断書の適切な記載方法を心得ているわけではないことにも注意が必要です。
後遺障害診断書の記載内容に不備や不足がある場合には、後遺障害等級認定の申請に進む前に、修正や再発行を依頼しましょう。
できる限り、後遺障害診断書を受け取ったら弁護士に相談して記載内容を確認してもらい、アドバイスを受けることをおすすめします。
症状の原因を医学的に証明できる資料があるか
後遺障害等級認定の認定を受けるためには、原則として症状の原因を医学的に証明できる資料が必要です。交通事故が原因で症状が残ったことを証明できなければ、事故以外の原因で症状が生じたものと判断されてしまうからです。
例えば、むちうちによる神経症状では、詳しい検査を受けなければ異常が見つからないことも多いので、ご注意ください。
レントゲン写真で異常が見つからなくても、CTやMRIの画像、神経学的検査などで異常が見つかることもあります。
このような検査結果によって神経症状の原因を医学的に証明できた場合は、12級13号の後遺障害等級に認定される可能性が高いです。
症状の一貫性と継続性を示す資料があるか
症状の原因を医学的に証明できなくても、事故が原因で症状が残ったことを医学的に「説明」できる場合は、後遺障害等級に認定されることがあります。その代表例が、むちうちによる神経症状です。
詳しい検査で異常が見つからなくても、事故直後から特定の症状が一貫して、かつ継続的に表れていたことを資料で証明できれば、医学的な「説明」が可能です。
その場合は、14級9号の後遺障害等級に認定される可能性があります。
症状の一貫性と継続性を示す資料としては、医師が毎月発行した診断書や、カルテなどが考えられます。これらの資料に十分な記載がない場合には、医師の意見書や被害者が作成する陳述書、家族などが作成する報告書などが有効です。
このように、むちうちによる神経症状で他覚所見がないケースでは、被害者請求で充実した資料を提出した方がよいでしょう。
等級認定できても保険会社は後遺障害に関する賠償を認めないことがある
後遺障害の賠償には、精神的な苦痛による「後遺障害慰謝料」と事故がなければ将来的な労働によって得られたはずの利益である「後遺障害逸失利益」などがあります。
後遺障害が残ると1級~14級までの等級認定を受けますが、この等級に応じて賠償金額が算出されます。そのため、等級認定は重要になりますが、保険会社は必ずしも後遺障害に応じた適正な賠償金を支払うわけではありません。
また、等級取得ができて安心したのもつかの間、いざ示談交渉が始まり、そこで相手保険会社が「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」を認めないということがあります。
当然ながら、「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」を認めないと、賠償金は減額になります。さらには、保険会社は任意保険基準による賠償金を提示してくるため、低い賠償金で示談してしまうリスクがあります。
後遺障害等級認定の手続きを弁護士に依頼するメリット
適切な後遺障害等級を獲得するために最も有効な手段は、弁護士に手続きを依頼することです。弁護士のサポートによって得られる具体的なメリットは、以下のとおりです。
- 保険会社からの治療費打ち切りの打診に対応してもらえる
- 医師への症状の伝え方についてアドバイスしてもらえる
- 後遺障害診断書の記載内容が適切か確認してもらえる
- 後遺障害診断書の修正や再発行の依頼の仕方をアドバイスしてもらえる
- 事前認定と被害者請求のどちらがよいかを判断してもらえる
- 被害者請求や異議申立ての手続きを代行してもらえる
- 弁護士基準による賠償金の増額が期待できる
後遺障害等級の認定を受けた後は、引き続き、保険会社との示談交渉を弁護士に任せることができます。
慰謝料などは弁護士基準で計算して請求してもらえるので、自分で示談交渉する場合より賠償金の大幅な増額も期待できます。
後遺障害等級認定の手続きを弁護士に依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
まとめ
等級が決まった後には保険会社との示談交渉が待っています。怪我に相応しい後遺障害等級認定を取得できたとしても、適切な賠償金が得られるわけではありません。
また、示談交渉を弁護士に依頼しても、その弁護士の力量によって賠償金に大きな差がつくことがあります。また、弁護士によっては、裁判基準の7割程度の水準で示談していることも多いのが実情です。
オールイズワンでは、後遺障害の医学的分析などをもとに、ご依頼を受けたほとんどの事案において裁判基準100%での示談解決の実績を持っています。
後遺障害認定でお悩みなら、どうぞお気軽にご相談ください。
オールイズワンの等級認定後の示談交渉実績
弁護士法人オールイズワンは、等級認定後の交渉で数多くの実績があります。その一例をご紹介します。
顔に傷跡が残った方の場合、後遺障害等級が取得できても、相手保険会社は後遺障害逸失利益を全く認めないということはよくあります。オールイズワンは、これまで全ての事案で後遺障害逸失利益を取得してきました。
被害者は後遺障害9級で、さらに親族の精神的苦痛までの慰謝料認定を受けることは、通常、極めて困難ですが、オールイズワンは認定を勝ち取りました。
高次脳機能障害で2級の方で、身体の自由までは奪われていない77歳の被害者の方でしたが、保険会社に介護費用を日額11,000円以上を認めさせ、介護費用だけで合計で約5,000万円を取得しました。
高次脳機能障害を負われた方ですが、60歳定年ということは明らかでしたが、法定の再任用制度があり、その給与体系についても証拠を示して交渉し、最終的に100%の慰謝料を獲得することに成功しました。
事故の骨折で手首が曲がりにくくなり、10級を取得されてからご依頼された被害者の方ですが、ご依頼から1か月で裁判基準を超える約2,800万円を取得しました。