基礎知識

交通事故で依頼した弁護士を変更したいときの対処法と注意点

住友麻優子

【監修】 弁護士 青木芳之
/弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所

交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。

交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。

交通事故被害に遭って弁護士に依頼をしたけれど、その対応に不満を感じるというケースがあります。そうなると、このまま交通事故の示談交渉を依頼した弁護士に任せていいものか、不安が募ることでしょう。

しかし、一度依頼した弁護士を変更することができるのか?解任しても問題ないのか?疑問が浮かび上がるものです。結論から言うと、交通事故で弁護士を変更することは可能です。

この記事では、交通事故で弁護士を変更したいときの対処法から注意事項について解説します。

※弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所は、交通事故で弁護士を変更されたい方からのご相談を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

交通事故で弁護士に依頼中でも変更できる

交通事故の示談交渉や損害賠償請求を弁護士に依頼する際には、委任契約書を交わします。いったん契約書を交わすと容易には弁護士を変更できないと考えている方が多いですが、実は自由に変更できます。

法律上、弁護士への依頼は「委任契約」に当たります。そして、委任契約はいつでも自由に解除できることとされています。したがって、今まで依頼していた弁護士との委任契約を解除し、別の弁護士と委任契約を結ぶことは依頼者の自由なのです。

交通事故で依頼した弁護士を変更する際にはいくつかの注意点がありますが、正しい手順で行えば変更すること自体に問題はありません。

交通事故で弁護士の変更を検討した方がよいケース

依頼した弁護士を変えたいと思うのは、弁護士に対して何らかの不安や不満があり、信頼関係を維持できないと感じたときでしょう。

その弁護士に大事な事件処理を任せ続けているとストレスがたまりますし、納得のいく結果が得られなければ、悔やんでも悔やみきれません。

一度依頼した弁護士であっても、信頼できないようならば、変えることを検討してみましょう。

一般的に、交通事故では以下のようなケースの際に弁護士の変更を検討した方がよいと言えます。

弁護士の対応が遅い

弁護士に交通事故の解決を依頼した後は、加害者や保険会社とのやりとりは全て弁護士が行います。そのため、弁護士の対応が遅い場合、解決までに時間がかかってしまいます。

どんな弁護士でも数多くの案件を抱えていることもあり、依頼しても迅速に対応してもらえるとは限りません。

しばらく経っても進展がなかったり、弁護士に何度連絡しても不在で数日待っても折り返しの連絡がないようであれば、依頼者が不安に思うのも無理はないでしょう。

そのようなケースでは、弁護士が多忙のために依頼した事件の処理を後回しにされている可能性があります。

ただし、交通事故の事案では弁護士が適切に対応していても時間がかかるケースもあることは理解しておく必要があります。

例えば、加害者側の対応が遅いために示談交渉が進まないこともありますし、後遺障害等級認定の申請をした場合には、結果が出るまでに3か月前後かかるのが通常です。

不安なときは、事務所のスタッフにでもよいので進捗状況を尋ねてみましょう。状況の説明に納得できない場合は、弁護士の変更を検討した方がよいでしょう。

弁護士との相性が合わない

弁護士と依頼者との間にも、人としての相性が合う・合わないといった問題があります。

相性が合わない場合には、弁護士に対して言いたいことが言えず、言ったとしても趣旨を理解してもらえないといったことになりがちです。依頼者の希望とは異なる方針で弁護士が事件を処理してしまうことにもなりかねません。

コミュニケーションが不十分になると、弁護士が依頼者の事情や考えを把握しきれず、示談交渉や裁判で十分な主張ができないといった影響もでてきます。

何よりも、相性が合わない弁護士と連絡を取り合うたびにストレスがたまっていくことでしょう。交通事故の解決は、事案によってはその後の人生を左右しかねないほどに重要なことです。

委任契約は「相手が気に入らない」というだけで解除することも可能ですので、不満がある場合には、一度他の弁護士に相談してみた方がよいでしょう。

裁判基準がいくらか教えてくれない

交通事故の慰謝料には、裁判基準(弁護士基準)、任意保険基準、自賠責基準、という3つの算定基準があります。左から金額が高い順になり、裁判基準は自賠責基準の2倍以上の慰謝料額になることもあります。

しかし、弁護士の中には保険会社からの提案に安易に同意して和解するケースがあります。依頼者に対して強く説得しようとしたり、裁判基準の説明もなく、例えば「相手が200万円も支払うと言っているから示談しませんか。」と言ってくる弁護士もいます。

示談の前には、必ず、裁判基準ではいくらなのかを尋ねるべきです。また、裁判基準についての説明、裁判基準の金額がいくらになるか教えてくれない弁護士ならば、変更を検討すべきでしょう。

交通事故の実績が乏しい弁護士に依頼してしまった

弁護士の取り扱い業務は多岐にわたりますので、全ての弁護士が交通事故の損害賠償の実務に精通しているわけではありません。

交通事故によるトラブルの解決実績が乏しい弁護士に依頼した場合、知識や経験が浅いために手続きがスムーズに進まなかったり、結果として相場よりも低い金額の賠償金しか得られないという可能性もあります。

満足できる結果を得るためには、やはり交通事故の解決実績が豊富な弁護士に依頼することがベストです。

依頼した弁護士の知識や経験に不安を感じたときは、一度セカンドオピニオンを求めてみて、弁護士の変更を検討するとよいでしょう。

弁護士が業務停止になった

依頼していた弁護士が所属する弁護士会に業務停止を言い渡された場合、その法律事務所は一定期間業務をおこなえなくなります。

依頼していた法律事務所の業務停止期間が終わったら再契約は可能ですが、その間、相手方に対し自分で対応しなければならないため、新たに弁護士を探す必要があります。

交通事故で依頼した弁護士を変更する方法

弁護士を変更することに決めたら、正しい手順を踏んで手続きをすることが大切です。

以下の手順に従って変更手続きを進めていきましょう。

新たに依頼する弁護士を決める

まず、現在依頼している弁護士との委任契約を解除する前に、新たに依頼する弁護士を決めておくことが大切です。

先に契約を解除してしまうと、新たに依頼する弁護士がすぐに見つかるとは限らず、見つかるまでは自分で加害者や保険会社に対応しなければなりません。

場合によっては、その間に損害賠償請求権が時効にかかってしまうなどのデメリットが生じますので、「弁護士がいない状態」はできる限り避けるべきです。

必ず契約を解除する前に新たな弁護士を決めた上で、次のステップに進みましょう。

依頼していた弁護士に弁護士変更を伝える

新たに依頼する弁護士が決まったら、依頼していた弁護士に変更・解任する旨を連絡してください。

連絡しなければ従前の弁護士との委任契約も継続しますので、その状態で別の弁護士に依頼するとトラブルが生じるおそれがあります。

連絡さえすれば、ほとんどの場合は問題なく解約に応じてもらえます。引き留められる可能性はありますが、委任契約は自由に解除できるのですから、弁護士を変更することを決めたのであればきっぱりと解約を申し出て構いません。

加入している保険会社に弁護士変更を伝える

次に、ご自身が加入している保険会社の担当者にも弁護士を変更する旨を連絡しておきましょう。弁護士費用特約を利用する場合には、必ず事前に保険会社に連絡し、所定の手続きを行ってください。

連絡しないまま弁護士を変更すると、弁護士費用が適切に支払われないなどのトラブルが生じるおそれがあります。

保険会社に連絡しておけば、人身傷害保険や車両保険を使う必要が生じた場合にスムーズに対応してもらえるようになります。なお、加害者側の保険会社には通常、従前の弁護士および新たな弁護士が連絡しますので、ご自身で連絡する必要はありません。

新たな弁護士と委任契約を結ぶ

以上のステップを踏んだ上で、新たな弁護士と委任契約を結ぶことになります。

その後は、従前の弁護士と新たな弁護士との間で事件の引継ぎが行われるのが一般的ですが、稀に従前の弁護士が引継ぎを十分に行ってくれないこともあります。

その場合には、依頼者自身が従前の弁護士から関連書類を受け取るようにしましょう。そして、新たな弁護士に渡した上で、しっかりと打ち合わせを行うことが大切です。

交通事故の弁護士を変更する場合の注意点

交通事故の弁護士を変更することは自由ですが、以下の点に注意が必要です。

着手金は原則として戻ってこない

委任契約を中途解約した場合の弁護士費用については、通常、弁護士と依頼者との協議により精算するものとされています。

ただし、依頼者の一方的な希望で解約した場合には、原則として既に支払った着手金は戻ってきません。

交渉次第ではありますが、弁護士が任務を怠り事件処理を放置したことが明らかな場合でない限り、着手金は戻ってこないと考えておいた方がよいでしょう。

新たな弁護士に依頼する際には、当然ながら着手金が改めて必要となります。そのため、弁護士を変更する場合には費用の負担が大きくなりやすいということは覚えておいた方がよいでしょう。

弁護士費用特約を利用する場合は限度額に注意

新たな弁護士に依頼する際に弁護士費用特約を利用すれば、着手金は保険会社が支払ってくれます。ただし、弁護士を変更する前に弁護士費用特約を利用していた場合には、限度額に注意が必要です。

弁護士費用特約には限度額があり、相談料、着手金、報酬金、その他の費用を含めて300万までしか支払われません。

例えば、変更前の弁護士に相談料や着手金、実費などで35万円を支払っていた場合、新たな弁護士への依頼で使える弁護士費用は残りの265万円に限られます。

大半のケースでは限度額の範囲内におさまりますが、重大な後遺障害が生じた場合や、死亡事故の場合などでは弁護士費用のトータルが300万円を超えることもあります。

その場合には、超えた部分については獲得した賠償金の中から支払う必要があることにご注意ください。

弁護士を変更しても結果が良くなるとは限らない

交通事故の示談交渉や損害賠償請求では、弁護士の腕によって結果が良くなるケースがありますが、腕の良い弁護士に変更しても結果が変わらないこともあります。

例えば、既に示談が成立している場合、内容に納得できないからといって弁護士を変更しても、原則として示談を覆すことはできません。

その他にも、過失割合について実況見分調書の記載とは異なる事実を主張したい場合や、通院回数が少ないために慰謝料を減額されることに納得できない場合など、弁護士を変更したところで主張を通すことは難しいケースが種々あります。

信頼できる弁護士であれば、法律相談の段階で難しいことは難しいと説明してくれます。

従前の弁護士の事件処理に納得できない場合は、セカンドオピニオンをよく聞いて検討し、納得できる場合にのみ弁護士を変更するようにするとよいでしょう。

交通事故で後悔しない弁護士の選び方

弁護士を変更する際には、あらためて弁護士選びを間違えないことが極めて重要です。変更後の弁護士のことも信頼できないようならば、変更を繰り返すことになってしまいます。

そこで、弁護士を変更する際には以下の点に注意し、慎重に選ぶようにしましょう。

交通事故トラブルの解決実績が豊富にあること

交通事故の解決を依頼する弁護士を選ぶ際の第一条件は、交通事故トラブルの解決実績が豊富にあることです。

交通事故の示談交渉や損害賠償請求を有利に進めるためには、事故特有の知識や交渉ノウハウが要求されます。交通事故に強い豊富な実績を持つ弁護士に依頼した方が断然、良い結果が期待できます。

説明がわかりやすいか

次に、弁護士の説明がわかりやすいかどうかという点にも着目しましょう。

相談者・依頼者のことを親身に考えている弁護士は、交通事故や法律に関する難解な内容でも平易な言葉でわかりやすく説明してくれるものです。

専門用語を多用して説明がわかりにくいような弁護士は、依頼者のことを理解しようとせず、往々にして独断で手続きを進める傾向があるため、依頼者目線での解決を期待できない可能性があります。

じっくり話を聞いてくれるか

一方で、弁護士が相談者・依頼者の話をじっくり聞いてくれるかという点も重要なポイントです。

相談者・依頼者の要望や気持ちが弁護士に伝わって初めて、弁護士が最善の形で事件を処理することが可能となるものです。

あまり話を聞いてくれない、そもそも話しづらい、ということであれば、その弁護士とは相性が合っていない可能性が高いともいえます。

医学的な知識を持っているか

交通事故の被害者救済には事故や保険などの専門知識が必要ですが、さらには医学的な知識が求められます。

特に高次脳機能障害、遷延性意識障害のような脳外傷や重大事故の場合、医学的な知識を持ち、それを診断書作成や医師への助言、保険会社との交渉の場で活かすことにより等級や賠償金が大きく変わるためです。

一般的な弁護士は後遺障害についての知識を持ち合わせていませんので、医学的問題に精通した弁護士に依頼することが重要です。

無料相談を活用して弁護士を比較する

結局のところ、良い弁護士かどうかは相談してみなければわからないこともあります。

交通事故は無料相談できる弁護士も多いので、事故案件を専門的に取り扱う事務所を比較検討して、まずは電話されることをおすすめします。

交通事故に強い弁護士事務所ならば、スタッフも豊富な専門知識を持っており、スムーズな質疑応答ができることでしょう。また、弁護士と話してみれば、経験や実力もある程度わかるものです。

無料相談の際に、弁護士の知識や実績だけでなく人となりやご自身との相性なども確認し、最も自分に合うと感じる弁護士を選ぶようにしましょう。

まとめ

交通事故の損害賠償請求は弁護士の力量によって結果が大きく変わることがあります。そのため、現在の弁護士に何らかの不満があるならば、変更を視野にいれることは一つの有効な手段と言えるでしょう。

特に重傷事故や等級申請がまだの場合、弁護士変更により当事務所が介入したことで賠償金を大幅に増額した実績は多数あります。また、交通事故に強い弁護士にセカンドオピニオンとして話をきいてみるだけでもやってみる価値はあります。

弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所は、交通事故を専門的に取り扱う弁護士事務所です。重い後遺障害、死亡事故など重大事故に豊富な経験を持っています。

弁護士変更についてもご相談可能ですので、お気軽にお問い合わせください。