交通事故による膝蓋骨骨折の後遺障害と慰謝料について


交通事故で膝を強打すると、膝蓋骨を骨折してしまうことがあります。
膝蓋骨骨折が生じると、治療を続けても後遺症が残り、痛みや歩きにくさなどの症状が続くことも少なくありません。まずは十分な治療とリハビリを受けることが大切ですが、完治しなかった場合には後遺障害の認定を受け、損害の程度に見合った賠償金を請求すべきです。
この記事では、膝蓋骨骨折の基礎知識から、適正な後遺障害等級の認定を受けるためのポイント、慰謝料の相場などについてわかりやすく解説します。
交通事故による膝蓋骨骨折とは
膝蓋骨とは、膝のお皿の骨のことです。交通事故による衝撃で膝をダッシュボードに強くぶつけたり、歩行中や自転車・バイクで走行中の事故で転倒し、膝を強打したりした場合に、膝蓋骨を骨折してしまうことがあります。
まずは、膝蓋骨骨折の症状や治療方法、完治しなかった場合の後遺症についてご説明します。
膝蓋骨骨折の主な症状
膝蓋骨を骨折すると、膝に激しい痛みが生じるとともに、膝関節が腫れて膝の曲げ伸ばしができなくなります。
ひびが入った程度であれば歩けることもありますが、完全に骨が折れた場合には、痛みと腫れのために歩行も困難となります。
膝蓋骨骨折の治療方法
膝蓋骨が折れても、骨の転位(ズレ)が少ない場合は、患部をギプスなどで固定する保存療法が基本となります。4~6週間程度様子を見て、痛みが治まってきたらリハビリを開始し、膝関節の可動域や筋力の回復を図ります。
折れた骨が完全に離れた場合や、粉砕した場合などでは、手術が行われます。ワイヤーやスクリュー(ねじ)で骨を固定するため、手術後は早期にリハビリを開始することが可能です。
治療期間は、一般的にリハビリ期間を含めて3~6ヶ月程度が目安です。ただし、後遺障害が残るケースでは、6ヶ月を超えることも多いです。
膝蓋骨骨折の後遺症
膝蓋骨骨折の後遺症としては、主に以下のものが挙げられます。
- 折れた骨がうまくつながらない
- 膝関節がぐらぐらと揺れ動くようになった
- 膝の曲げ伸ばしが思うようにできなくなった
- 膝に痛みやしびれが残った
このような後遺症が残ると、仕事や日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。後遺症による損害に対する賠償金を受け取るためには、後遺障害等級の認定を受けることが重要となります。
交通事故による膝蓋骨骨折で認定される可能性がある後遺障害等級
ここでは、膝蓋骨骨折による後遺症の種類ごとに、認定される可能性がある後遺障害等級をご紹介します。
偽関節
偽関節とは、折れた骨が癒合せず、関節ではない部分が関節のように動いてしまう状態のことですが、骨折後6ヶ月以上、癒合しなければ偽関節と診断されます。
偽関節が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
| 等級 | 症状 |
|---|---|
| 7級10号 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
| 8級9号 | 1下肢に偽関節を残すもの |
大腿骨や脛骨、腓骨の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とする運動障害が残った場合は7級10号、硬性補装具が常に必要というわけではない場合は8級9号となります。
動揺関節
動揺関節とは、関節が通常より大きく動いたり、通常では曲がらない方向に曲がってぐらぐらしたりする状態のことです。膝蓋骨骨折に伴い周囲の靱帯が損傷した場合に、関節の安定性が失われ、動揺関節となることがあります。
動揺関節が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
| 等級 | 症状 |
|---|---|
| 8級7号相当 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
| 10級11号相当 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号相当 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
常に硬性補装具を必要とする場合は8級7号に、ときどき硬性補装具を必要とする場合は10級1号に、重い負荷がかかる労働等の際にのみ硬性補装具を必要とする場合は12級7号に、それぞれ相当します。
機能障害
機能障害とは、関節の可動域(動かせる範囲)が制限され、曲げ伸ばしが難しくなった状態のことです。膝蓋骨が変形してしまった場合の他、骨は元どおりになっても筋肉や周辺の軟部組織に拘縮が生じることにより、機能障害が残ることがあります。
機能障害が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
| 等級 | 症状 |
|---|---|
| 8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
| 10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
骨折した側の膝関節がほとんど動かなくなった場合は8級7号、可動域が通常の1/2以下になった場合は10級11号、可動域が通常の3/4以下になった場合は12級7号になります。
神経症状
神経症状とは、患部に痛みやしびれが残った状態のことです。折れた骨が元どおりに戻ったとしても、周辺の神経が損傷したために神経症状が残ることがあります。
神経症状が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
| 等級 | 症状 |
|---|---|
| 12級13号 | 局部にがん固な神経症状を残すもの |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
画像や検査結果などから症状を医学的に証明できる場合は、12級13号に認定される可能性が高いです。証明できなくても、症状について医学的見地から合理的な説明が可能な場合は、14級9号に認定されるか可能性があります。
交通事故による膝蓋骨骨折で請求できる慰謝料の相場
膝蓋骨骨折で後遺障害等級の認定を受けた場合には、治療期間に応じて算出される入通院慰謝料に加えて、後遺障害等級に応じて算出される後遺障害慰謝料も請求できます。
ただし、慰謝料の計算方法には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3種類の基準があり、どの基準を採用するかによっても金額が異なってくることに注意が必要です。
それを踏まえて、ここでは交通事故による膝蓋骨骨折で請求できる慰謝料の相場をご紹介します。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、受傷から治癒または症状固定までの治療期間に応じて算出されます。症状固定とは、「これ以上は治療を続けても症状の改善が見込めない」状態のことです。
膝蓋骨骨折は、3~6ヶ月程度で治癒することもありますが、後遺障害が残るケースでは6ヶ月~1年程度の治療を要することも少なくありません。
治療期間別に入通院慰謝料の金額を算出すると、以下のようになります。なお、通院期間中は3日に1度のペースで通院したものとします。
| 入通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 6ヶ月通院 | 51万6,000円 | 116万円 |
| 9ヶ月通院 | 77万4,000円 | 139万円 |
| 2週間入院後、11ヶ月通院 | 106万6,400円 | 163万5,333円 |
任意保険基準による慰謝料の計算方法は非公開のため不明ですが、入通院慰謝料については、自賠責基準よりも少し高い程度で、弁護士基準よりは大幅に低い金額となることが多いです。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の金額は、以下のように後遺障害等級に応じて目安が定められています。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 7級 | 419万円 | 1,000万円 |
| 8級 | 331万円 | 830万円 |
| 10級 | 190万円 | 550万円 |
| 12級 | 94万円 | 290万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
任意保険基準では、基本的に後遺障害慰謝料は自賠責基準とほぼ同額になります。
膝蓋骨骨折で適正な後遺障害等級認定を受けるためのポイント
後遺障害に認定されるかされないか、また何級の後遺障害に認定されるかによって、慰謝料の総額は大きく変わります。そのため、適正な後遺障害等級の認定を受けることは非常に重要です。
膝蓋骨骨折で後遺障害の認定申請をする際には、以下のポイントに注意しましょう。
定期的に通院しリハビリも十分に受ける
まずは、十分な治療とリハビリを受ける必要があります。
特に、リハビリをおろそかにすると、後遺障害の認定申請をしても、「まだ改善の見込み」があるとの理由で、後遺障害等級に非該当と判断されるおそれがあることに注意が必要です。
治療期間が短い場合や、通院頻度が低い場合も、実際の怪我の程度のよりも軽傷とみなされ、後遺障害等級認定の審査で不利になるおそれがあります。
必ず、医師の指示に従って通院を継続しましょう。
CTや可動域測定などの検査を適切に受ける
後遺障害の認定を受けるためには、障害の内容や程度を、画像や検査結果などの資料で証明しなければなりません。そのため、必要十分な検査を受けておくことが重要です。
例えば、神経症状では、レントゲン検査だけではなくCTやMRIの検査も受けることによって、症状の原因が判明し、14級ではなく12級を獲得できる可能性があります。
機能障害では可動域測定が重要な検査となりますが、測定のやり方によって誤差が生じるおそれがあります。できる限り、交通事故による患者の取り扱いが多い整形外科で検査を受けることが望ましいです。
また、動揺関節では、その原因となる靱帯の損傷を画像で証明することが重要です。そのためには、単純レントゲン撮影だけでなく、ストレスレントゲン撮影の検査を受ける必要があります。ストレスレントゲン撮影とは、膝関節に外力(ストレス)を加えた状態で撮影し、関節のズレ(動揺)を明らかにする検査方法のことです。
後遺障害診断書の内容を確認する
後遺障害等級認定の審査資料の中でも、最も重要視されるのは後遺障害診断書です。後遺障害診断書に記載された内容のみが、審査の対象となるからです。
症状固定の診断を受けたら医師が後遺障害診断書を発行しますが、これを保険会社へ渡すまでに、必ず記載内容を確認しましょう。
記載内容が不足していたり、誤っていたりする場合には、医師に修正や再発行を依頼すべきです。
被害者請求を検討する
後遺障害の認定申請の手続きは、保険会社に任せる事前認定という方法によることもできますが、この場合は審査資料が不足することで結果が不利になるおそれがあります。
動揺関節や神経症状のケースをはじめとして、詳細な資料が重要となる事案では、被害者自身が申請手続きを行う被害者請求の方法によることも検討した方がよいでしょう。
この方法によれば、自由に資料を収集して審査機関へ提出できるため、有利な結果を得られる可能性が高まります。
膝蓋骨骨折の後遺障害認定で弁護士に相談するメリット
膝蓋骨骨折で後遺症が残ったら、後遺障害認定について弁護士に相談してみることをおすすめします。弁護士のサポートを受けることによって、以下のメリットが得られます。
- どのような検査を受ければよいのかについてアドバイスが受けられる
- 後遺障害診断書の記載内容を確認してもらえる
- 必要に応じて、後遺障害診断書の修正や再発行を医師に依頼してもらえる
- 事前認定と被害者請求のどちらがよいのかについてアドバイスが受けられる
- 被害者請求や異議申し立ての複雑な手続きをすべて任せることができる
- 保険会社との示談交渉を代行してもらえる
- 慰謝料を弁護士基準で請求してもらえる
このように、専門的かつ全面的なサポートを受けることで、適正な後遺障害等級を獲得し、高額の賠償金を受け取ることが期待できるのです。
まとめ
膝蓋骨骨折は、激しい痛みや腫れが生じる上に、長期間のリハビリを要することも多いため、仕事や日常生活で大きな苦痛を味わう方も多いでしょう。
このように重大な被害を受けても、保険会社の言うことを鵜呑みにすると、賠償金で損をするおそれがあります。十分な賠償金を受け取るためには、交通事故に強い弁護士に相談した方がよいでしょう。
弁護士法人オールイズワンは、交通事故に専門特化した法律事務所です。重大事故を数多く取り扱ってきた経験豊富な弁護士が、医師との対応、後遺障害等級認定から保険会社との示談交渉までサポートいたします。
膝蓋骨骨折の後遺症でお悩みの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。






