交通事故による脛骨高原骨折の後遺障害と慰謝料について

交通事故の脛骨高原骨折はバイク運転時や高齢者の方が歩行中の衝突によるケースが多いと言えます。治療中の方の中には歩行が困難になって不安を感じている方も多いでしょう。

脛骨高原骨折の場合に十分な賠償金を受け取るには、しっかりと治療を受けることはもちろん、その先を見据えた後遺障害等級認定の取得と賠償金請求の準備が不可欠です。

この記事では脛骨高原骨折の知識、後遺障害認定基準や慰謝料請求について詳しく解説します。また、弁護士に依頼するメリットについてもご説明しますので、参考になさってください。  

交通事故による脛骨高原骨折とは

交通事故で足に強い衝撃を受けると、脛骨の高原骨折を負ってしまうことがあります。

交通事故で脛骨高原骨折を生じるケースとしては、バイク事故や自転車事故、歩行中の事故で転倒した人が地面に膝を強く打ち付けるケースが多く見受けられます。

脛骨高原骨折は膝関節を構成している部分の骨折なので、治療期間が長引きやすく、後遺症も残りやすい半面、等級の取得は容易でない場合もあるので注意が必要です。

まずは、脛骨高原骨折とはどのような骨折であるのかについて詳しくご説明します。   

脛骨とは

脛骨とは、膝の下から足首までの下腿、つまり脛(すね)の部分の骨のことです。脛の部分は2本の骨で構成されており、内側にある太い方の骨が脛骨です。外側にある細い骨は腓骨(ひこつ)といいます。   

高原骨折とは

高原骨折とは、簡単にいうと脛骨の中でも上の部分を骨折することをいいます。脛骨の上の方は膝関節につながっていて高原のように平らになっていることから、この部分の骨折のことを「高原骨折」というのです。高原骨折といえば、「脛骨高原骨折」のことを意味します。

なお、医学界では「脛骨プラトー骨折」と呼ばれることが多いですが、プラトーとは英語で高原のことですので、「脛骨高原骨折」と同じ意味です。

脛骨の高原は膝関節の内部にあるので、ここを骨折すると膝に体重をかけることが難しくなります。そのため、歩行や起立動作に困難を伴います。   

脛骨高原骨折の治療方法

骨折しても骨の陥没や転位(ずれ)が生じていない場合は、膝関節を固定し、なるべく体重がかからないように注意して自然治癒を待ちます。

陥没や転位が生じている場合には、手術によって骨の位置を修復し、スクリュー(ねじ)やプレート(金属板)で固定します。

手術の数日後から膝の曲げ伸ばしなどの可動域訓練(リハビリ)が行われることが一般的です。ただし、体重をかけると骨がずれてしまう可能性があるので、手術後約1ヶ月の間は歩行時には松葉杖を使い、膝に体重をかけないようにする必要があります。   

脛骨高原骨折の後遺症

高原骨折は膝関節内の骨折ですので、脛骨の中央部を骨折した場合よりも治療期間が長引きやすく、後遺症が残りやすい外傷です。

脛骨高原骨折で後遺症が残ると、膝関節が動きにくくなったり、痛みが続いたりするため、日常生活の中で肉体的にも精神的にも大きな苦痛を伴います。

交通事故による脛骨高原骨折で後遺症が残った場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益を加害者側に請求できます。ただしそのためには、「後遺障害等級」の認定を受けることが必要です。  

脛骨高原骨折の後遺障害の種類と後遺障害等級

脛骨高原骨折の後遺障害には、機能障害と神経症状の2種類があります。ここでは、脛骨高原骨折で認定される後遺障害等級を症状別にご紹介します。   

機能障害

脛骨高原骨折の機能障害とは、治療を続けたものの膝関節が動きにくい状態が改善せず、そのままの状態が続いてしまうという障害です。

機能障害として認められるのは、動かせなくなった範囲が一定の基準以上となった場合です。動かせなくなった範囲の大きさに応じて、以下の3つの後遺障害等級に分けられます。    

機能障害の後遺障害等級と認定基準

脛骨高原骨折の機能障害は、8級7号、10級11号、12級7号のどれかに該当する可能性があります。それぞれの後遺障害の程度は以下の表を参考になさってください。

後遺障害等級 後遺障害の程度
8級7号 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
10級11号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

【参考】:国土交通省『後遺障害等級表』

8級7号の「用を廃したもの」というのは、膝関節をまったく動かせないか、ほとんど動かせない状態になった状態のことをいいます。可動域(動かせる範囲)が骨折していない側の膝関節と比べて10%以下になった場合に、「用を廃したもの」と認められます。

10級11号と12級7号の違いは、膝関節の機能に残った障害が「著しい」かどうかです。具体的な基準としては、可動域が骨折していない側の膝関節と比べて2分の1以下になっていれば10級11号、4分の3以下になっていれば12級7号と判断されます。   

神経症状

脛骨高原骨折の神経症状とは、治療を続け機能障害までは残さずに済んだものの、痛みやしびれが残る障害です。痛みやしびれの程度に応じて、以下の2つの後遺障害等級に分けられます。    

神経症状の後遺障害等級と認定基準

脛骨高原骨折の神経症状は、12級13号、14級9号のどちらかに該当する可能性があります。それぞれの後遺障害の程度は以下の表を参考になさってください。

後遺障害等級 後遺障害の程度
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

【参考】:国土交通省『後遺障害等級表』

12級13号と14級9号の違いは、痛みやしびれが「頑固」かどうかです。具体的な基準としては、痛みやしびれの原因が画像所見などで医学的に証明できる場合には12級13号、証明できないけれど医学的に説明可能な場合は14級9号と判断されます。  

脛骨高原骨折の後遺障害による慰謝料相場

脛骨高原骨折で後遺障害等級の認定を受けると、それまでの損害賠償金に後遺障害慰謝料と逸失利益を加算して加害者側へ請求できます。

逸失利益は被害者の年収や労働能力喪失率、年齢に応じたライプニッツ係数を用いて所定の計算式で算出するものです。

それに対して、後遺障害慰謝料は等級ごとに金額が定められています。ただし、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3種類の基準があり、どの基準を採用するかによっても金額が異なってきます。

ここでは、自賠責基準および弁護士基準による後遺障害慰謝料の金額と、労働能力喪失率を症状別にご紹介します。   

機能障害の慰謝料

機能障害で認められる後遺障害等級は、8級7号、10級11号、12級7号のどれかです。それぞれの慰謝料額と労働能力喪失率は、以下の表のとおりです。

後遺障害等級 慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 労働能力喪失率
8級 331万円 830万円 45%
10級 190万円 550万円 27%
12級 94万円 290万円 14%

神経症状の慰謝料

神経症状で認められる後遺障害等級は、12級13号、14級9号のどちらかです。それぞれの慰謝料額と労働能力喪失率は、以下の表のとおりです。

後遺障害等級 慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 労働能力喪失率
12級 94万円 290万円 14%
14級 32万円 110万円 5%

脛骨高原骨折で後遺障害認定を受けるためのポイント

脛骨高原骨折で後遺症が残った場合、後遺障害等級を認定されるかどうかで受け取れる損害賠償金の額に大きな違いが生じます。後遺障害等級の認定を適正に受けるためには、以下のポイントに注意しましょう。  

後遺障害診断書が重要

後遺障害等級の認定は専門の機関で行われますが、そこで検査や診断を受けるわけではありません。審査は原則として書類のみで行われます。審査書類の中で最も重要な意味を持つのは「後遺障害診断書」です。

後遺障害診断書には、後遺障害を証明するための症状や検査結果などが記載されます。ただ、医師は必ずしも後遺障害等級の認定申請に詳しいわけではないので、記載内容が不十分なケースも少なくありません。

後遺障害を証明できなければ、適正な後遺障害等級の認定を受けられません。後遺障害診断書を保険会社に提出する前に弁護士に相談して、記載内容を確認してもらうことをおすすめします。

なお、一度作成した後遺障害診断書の修正となると、医師が応じてくれない可能性が高まりますので、後遺障害診断書の作成前に、医師に記載してもらう後遺障害診断書の内容について、専門の弁護士に相談できるとベターです。   

レントゲンだけでは症状を説明できないことがある

脛骨高原骨折で神経症状が残った場合、その原因を医学的に証明できるかどうかで慰謝料額が大きく異なります。

原因を医学的に証明するためには、骨が正しく癒合していないことなどを画像所見で示すことが必要ですが、レントゲン検査だけでは証明可能なほどの画像所見が得られないこともあります。

その場合には、CTやMRIによる精密検査が必要です。精密検査を受けるためには、患者側から申し出なければならないこともあります。

弁護士に後遺障害等級認定の申請を依頼すれば、弁護士から等級認定を得るために必要な検査の指摘を受けたり、検査が受けられるように弁護士から医師に打診するなどのサポートが受けられます。   

納得できない場合は異議申し立てをする

後遺障害等級認定の結果に納得できない場合は、異議申立をして再審査をしてもらうことも可能です。

ただし、いったん認定された結果を覆すことは容易ではありません。一度目の審査の際に提出できなかった新たな医学的資料を補充する必要があります。

弁護士のサポートを受ければ、新たな資料を的確に収集・作成し、提出してくれますので、異議申立によって適正な後遺障害等級を獲得することを期待できます。  

脛骨高原骨折の後遺障害等級認定は弁護士に相談を

交通事故による負傷で後遺症が残ったら、後遺障害等級認定の申請を保険会社に任せる前に弁護士に相談することをおすすめします。弁護士のサポートを受けることで、以下のメリットが得られます。

  • ・医師への事前要請により、正確で的を射た後遺障害診断書を作成してもらえる
  • ・後遺障害等級認定申請や異議申立の複雑な手続きをすべて任せることができる
  • ・等級申請自体、任意保険会社の窓口に任せる事前認定ではなく、自賠責保険に直接等級審査を求める被害者請求の方法によることができる
  • ・弁護士基準で慰謝料を請求するため高額の賠償金が期待できる

ご自身で後遺障害等級申請を行うとすれば、大変な労力がかかる上に、資料の不足や不備により認定結果が不利となるおそれがあります。また、弁護士基準で慰謝料を請求できないため、受け取れる賠償金が大幅に少なくなってしまいます。

適正な賠償金を受け取るためには、後遺障害等級申請や加害者側との交渉などの手続きを弁護士に一任するのが賢明だといえます。  

まとめ

脛骨高原骨折は、事故後の治療やリハビリが大変で歩行が難しいために大きな苦痛を伴われている方は多いでしょう。このような重大な傷害を負いながらも、対応次第では十分な賠償金を獲得できないケースがあります。

脛骨高原骨折のような被害を受けたら、交通事故に強い弁護士に相談しませんか。弁護士法人オールイズワンは交通事故に専門特化した法律事務所です。

重大事故を数多く取り扱ってきた経験豊富な弁護士が、医師との対応、診断書作成から加害者との交渉までサポートいたします。後遺障害等級認定から賠償金請求の手続きなど、当事務所にお任せください。