医師へのむち打ち症の伝え方が重要な理由と注意点
医師へのむち打ち症の伝え方が重要な理由と注意点
むち打ち症は、追突事故等の外力により、重たい頭部を支える首が鞭のようにしなることで生じる諸症状の通称です。診断書では「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」等の傷病名が付されます。
交通事故に起因する症状としては頻繁にみられる傷病ですが、この症状を負った多くの被害者は適正な賠償金を得られていないのが実情です。
そこで、本記事ではむち打ち症の伝え方を中心に注意点を解説します。
医師へのむち打ち症の伝え方がなぜ重要なのか
むち打ち症は、骨折等と異なりX-PやMRI等の画像検査ではその原因を特定することが困難であり、また、実際に患部を確認しても目視では判断できない傷病です。
そのため、辛い痛みを抱えていても、その症状を言葉で伝えないことには、医師も気付くことができません。そして、気付かれない症状には治療が行われないため、結果として後遺障害等級の認定においても非常に不利となってしまいます。
したがって、交通事故で頚部を痛めてしまった場合、まずは医師にむち打ち症の諸症状が生じていることをしっかりと伝えることが何よりも重要となります。
治療の継続や症状固定との関係では医師の判断が重要
むち打ち症は目に見えないため、医師が診断する際には、相当程度、患者の申告を頼りにすることになります。
そのため、患者としては、症状が強く残存しており当面の治療を受けたい場合には、患者の方からしっかりと意思表示することが必要です。
治療費を支払う保険会社は、治療期間が延びると担当医に対して患者の状態や治療の必要期間について照会を行います。その際、患者からの申告が弱く、医師が症状を軽度と感じてしまっていると、早期の治療費支払打切りのきっかけを与えてしまいかねません。
症状固定の判断も同様で、治療効果が見えづらい傷病故に、患者からの治療を求める声がなければ医師としても早期に症状固定を判断してしまうことがあり得ます。
このようなことがないように医師と日々コミュニケーションをとっておくことが重要です。
整骨院・鍼灸院への通院の際は医師の許可を得ておくと良い
むち打ち症の改善には、ときに整骨院や鍼灸院での施術が効果的な場合があります。しかしながら、保険会社は医師ではない柔道整復師や鍼灸師による施術に懐疑的であることが多く、無断で通院を開始した結果、施術費が認められなかったというケースも多くあります。
そのため、これらの施術が必要な際には医師からその必要性を示してもらっておくと良いでしょう。その際も医師に整骨院・鍼灸院の各施術が必要と判断してもらうためには、やはりむち打ち症の症状や程度をしっかりと伝えておかなければなりません。
医師が作成する診断書により後遺障害等級が決まる
後遺障害の等級判断においては医師が毎月作成する診断書が重要な審査材料となることは言うまでもありませんが、ことむち打ち症の審査における重要度は非常に高いものです。
目に見えない症状に対して後遺障害が確かに残存しているとの判断を下すためには、医師が経時的に作成する診断書から症状推移、性質、程度等を読み取るしかないためです。
勿論、画像から読み取れる経年性変化や各神経学的所見も重要な要素ですが、それでも診断書に記された内容が肝であることは間違いありません。
むち打ちの主な症状
むち打ちには主に以下のような症状があります。ご自身の症状を医師に適切に伝える必要があります。
①頚部痛
むち打ち症の代表的な症状であり、後遺障害の審査においても中心となります。一言で痛みといっても、例えば雨の日等に生じる痛みなのか、首を動かしたときに生じる痛みなのか、常にあり続ける痛みなのか等、様々な性質が想定されます。後遺障害の審査においては、この性質の伝え方がとても重要な意味を持ちます。
②肩こり
医学的にいう肩は肩関節のことであり、いわゆる「肩こり」は頚部を中心とした症状です。後遺障害の審査において肩こりについては、伝え方を間違ってしまうとマイナスに作用してしまうことがあります。
③痺れ
頚椎から上肢へ走る神経根が圧迫されると上肢に痺れが生じます。頚椎には椎間板の扁平化や椎間孔の狭窄等経年性変化が生じている場合が多いですが、交通事故の衝撃がそれに影響を与えることで具体的に椎間板による神経根圧迫などの症状を生じさせる引き金になることがあります。後遺障害の審査においては、この圧迫の程度のほか、経時的な神経学的所見が重要となります。
④吐き気・めまい・耳鳴り
むち打ち症はときに自律神経失調症を引き起こすなどして、吐き気、めまい、耳鳴り等、様々な症状の原因となります。これらの症状については、程度が強い場合には、整形外科の治療とは別に、耳鼻科等での治療が有効な場合があります。
⑤うつ症状
むち打ち症の諸症状により、日常生活の何気ない動作に支障をきたし被害者を苦しめます。また、目に見えない症状であるため周囲の理解を得難く、精神的にも負担となってしまうことがあります。これらのストレスが原因となりうつ症状を生じてしまうことがあります。
むち打ち症状を医師に伝える際の注意点
医師は一日の中で多くの患者の治療にあたります。そのような多忙な医師に、患者(被害者)は検査結果から読み取ることも困難な自身のむち打ち症状を伝えなければなりません。
そのため、むち打ち症の伝え方については以下の点を注意したいところです。
具体的に症状を伝えること
むち打ち症の症状は「自分はいくら辛くても、その症状は医師の目や検査結果では確認できない」ものです。そのため、漠然と「痛い、痛い」と繰り返すのではなく、例えば痛みであれば位置、強さ、日常生活への影響を整理して伝えましょう。
ただし、痛む時間帯や動作を強調し過ぎると「その条件下以外では痛みは生じない」と受け取られてしまう可能性がありますので、「明確に、かつ、シンプルに」伝えることがポイントです。
正確に症状を伝え、誇張しない
痛みや症状を誇張してしまうと、医師に対して「いくら治療しても効果が得られない」、「面倒な患者」等の悪印象を与えてしまう可能性があります。
医師には残存症状を「あるがまま」に伝えるようにしましょう。
医師に正確に伝わっていない可能性がある
実際に医師と話す際には緊張で上手く伝えられないといったことも考えられます。そのため、例えばあらかじめメモをしたためてそれを医師に渡すといった方法も有効です。
医師の性格や診察時間によって、適切な症状の伝え方を選択するようにしましょう。
医師への対応に不安を感じたら弁護士に相談すること
医師とのコミュニケーションに不安を感じた際には、弁護士に依頼するのも選択肢の一つです。
むち打ち症に関しては、治療費支払の打切り時期の判断、後遺障害の審査等、損害賠償請求において重要な場面がありますが、そこでは治療初期から医師が毎月作成する診断書にどのような記載がなされるかが重要となります。そのため、対応が遅れてしまうと取り返しがつかない場合があります。
交通事故に強い弁護士は医師とのコミュニケーションについても経験値を有していますので、被害者の方と医師、そして弁護士が三位一体となって適切な手続きを取っていくことが可能です。
まとめ
以上、むち打ち症の伝え方を中心に解説いたしました。目に見えない症状を他者に理解してもらうことはなかなか難しいものです。ご自身がそのような必要に迫られた際には、是非むち打ち症のポイントを押さえて診察に臨んでいただければと存じます。
なお、弁護士法人オールイズワンでは、むち打ち症を負った被害者の方を数多くサポートしてまいりました。その経験から、医師への症状の伝え方や検査の依頼の仕方等、良好なコミュニケーションを図るためのアドバイスを差し上げることが可能です。
また、むち打ち症の辛い症状に隠れて、実は事故受傷による脳損傷の影響により、高次脳機能障害等の重度障害を併発していることもあり得ます。この様なケースも含め、総合的にサポートいたします。むち打ち症に係る諸問題でお困りでしたら、当事務所までお気軽にご相談ください。