交通事故で頭を打ったときの症状と対処すべきこと

交通事故で頭を打ったときの症状と対処すべきこと

交通事故で頭を打つと、その時は特に異常がない場合でも、後になって頭痛やめまい、首が痛いなどの症状が現れることがあります。

さらに、交通事故による頭部外傷は、頭蓋骨内の脳脊髄液に浮かんでいる脳が強い外力により頭蓋骨にぶつかり、脳の一部または全部が破壊されることで重篤な後遺障害が残るケースもあります。損害賠償請求では事故後に適切な対処をしていたか否かが重要となる場合があります。

この記事では、交通事故で頭を打つとどのような症状が現れるのかを基本的な事故後の対処法とともに解説していきます。

交通事故で頭を打った時に現れる主な症状

交通事故などで頭部に強い外力が加わり傷を負うことを「頭部外傷」と言い、脳の組織が破壊された状態を「外傷性脳損傷」と言います。

頭蓋骨は多少の外力には耐え得るようにできていますが、外力が非常に強くなる交通事故が原因の頭部外傷は、脳に様々な変化が生じます。また、脳に傷がついていなくても調子が悪くなることがあります。

そのため、頭部外傷の診察を受ける際は専門の医療機関を選択する必要があります。整形外科では骨格や筋肉、神経からなる運動器のケガや病気の治療をしているため、脳の異常を検査するには「脳神経外科」を受診する必要があります。

交通事故で頭を打った後に少しでも異常を感じた場合は、必ず脳神経外科で頭部CTや脳内MRIの検査を受けるようにしてください。

交通事故で頭を打った時に現れる主な症状には下記のようなものがあり、それぞれ特徴があります。また、後遺障害等級は症状の程度により異なり、症状が重い順に数字の低い等級が認定され保険金額も大きくなります。

頚椎捻挫・外傷性頚部症候群

頸椎捻挫は、交通事故の衝撃によって首を捻挫した状態のことです。脳から連続する中枢神経が走行する脊椎の上部にある頸椎には多くの神経が集まっており、交通事故の衝撃で神経根が圧迫されることで肩こりや目まい、手のしびれなどの症状が出ます。

頸椎は頭を支える首の骨のことで7つの骨で構成されています。頸椎をレントゲン画像で見ると正常な状態であれば緩やかなカーブがありますが、一定の衝撃が加わると骨と骨の間が狭くなり頸椎が真っすぐになるストレートネックという症状もあります。ストレートネックも首の痛みや肩こり、手のしびれを引き起こす原因とされています。

長期にわたって首の痛みや頭痛、目まい、手のしびれなどの症状がでることを「外傷性頚部症候群」と言います。また、頸椎捻挫は衝撃を受けたときに鞭がしなるように首が動くことから「むち打ち症(むち打ち症関連症候群)」とも言われています。

後遺障害等級は、首や肩など「局部に神経症状を残すもの」が認定基準となり、局部に頑固な神経症状を残すものは12級13号、局部に神経症状を残すものは14級9号が認定対象となります。

脳震盪

交通事故で頭を打って外傷性脳損傷が発生した場合の多くは、脳が揺れ動くことで脳震盪が生じると言われています。脳震盪の症状は、意識障害や記憶障害、その他の脳機能障害などがあります。

脳震盪は一時的な症状とされていますが、交通事故で頭を打った場合は頭痛や目まい、疲労感が続く「脳震盪後症候群」を発症することが多くあります。脳震盪後症候群が続くと、集中力も低下し、不安感やイライラが募り抑うつの状態になると言われています。

脳震盪が発生した場合は、比較的軽微な頭部外傷であっても、高い頻度で様々な精神障害が生じるため注意が必要です。さらに、脳に損傷がある場合(脳組織に異常がある状態)は、高次脳機能障害が発症することもまれにあります。

後遺障害等級は、局部に頑固な神経症状を残すものとして12級13号、14級9号が対象となり、神経系統の機能又は精神に障害を残し、就労可能な仕事が制限されてしまう場合は9級10号が認定対象となります。

頭蓋骨骨折

頭蓋骨は、顔の構造を支持し脳を外傷から保護する役割を持っています。外部からの衝撃により頭蓋骨が骨折してしまうと脳に損傷が及ぶことがあり、高次脳機能障害や麻痺など重大な後遺障害が残ってしまうケースがあります。

頭蓋骨骨折は、骨折する部位により「頭蓋円蓋部骨折」と「頭蓋底骨折」に分けられます。頭蓋円蓋部骨折には、頭蓋骨に線状のヒビが入る「線状骨折」と折れた頭蓋骨の破片が陥没する「陥没骨折」、骨折片がいくつも分かれる「粉砕骨折」があります。

特に陥没骨折と粉砕骨折の場合は、脳を傷つけてしまう可能性が高く、何らかの後遺障害が残ってしまうリスクが高いと言われています。

頭蓋底骨折に関しては、脳を下から支えている頭蓋骨の底の部分(頭蓋底)が骨折した状態のことです。頭蓋底はデコボコした多くの孔に脳から内臓に至る脳神経が通っており、交通事故によって頭蓋底骨折を生じると後遺障害の高いリスクがある髄液漏や脳神経麻痺を発症することがあります。

頭蓋骨骨折は脳が損傷するリスクが非常に高く、症状が重い順に後遺障害等級別紙第1(要介護):1級、2級、別表第2:1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級が認定対象となります。

交通事故における頭蓋骨骨折に付随する後遺障害と慰謝料・等級認定について

急性硬膜下血腫

急性硬膜下血腫とは、外力により頭蓋骨のすぐ内側にある脳を覆う膜(硬膜)が破壊されて出血が起き、急速にたまった血液で脳が短時間のうちに圧迫された状態です。
急性硬膜下血腫は強い外傷で起こることが多いため、脳の損傷も強く一般的に受傷直後から激しい頭痛や嘔吐、意識障害を伴います。

また、急性硬膜下血腫とは対照的に頭部外傷から硬膜下に受傷時点から2週間から3か月程度経って血液がたまり、症状が現れる「慢性硬膜下血腫」もあります。

慢性硬膜下血腫は、事故後数週間程度は無症状であることが多いため病院を受診しない方も少なくありませんが、発症後は頭痛や運動麻痺を伴い、脳の圧迫が臨海レベルを超えると突然意識障害や認知症症状が発症します。

急性硬膜下血腫を発症すると後遺症が残るリスクが高く、後遺障害等級は障害の種類や程度により1級~14級が認定対象となります。

びまん性脳損傷

びまん性脳損傷は、強い外力で脳に回転が生じることで脳がねじれ軸索が強く引っ張られることから、脳が広範囲に断裂し様々な機能が喪失した状態です。びまん性脳損傷は、意識障害の有無やその持続時間によって「軽度脳震盪」「古典的脳震盪」「遷延性昏睡」に分けられます。

主な症状は、意識障害や運動障害、知的障害、高次脳機能障害、麻痺を伴い、頭部外傷後の意識障害が脳震盪と比べて強く、意識障害や持続時間の違いによって症状が異なることが特徴です。

びまん性脳損傷の注意点は、頭部外傷後に意識障害の状態が出ているのにもかかわらずレントゲンや頭部CTでは血腫・脳挫傷を確認できないことです。後遺障害を認定するためにはMRIによる画像所見が必要になります。

また、びまん性脳損傷の注意点は効果的な治療法が存在せず、回復したとしても意識障害や高次脳機能障害、麻痺などの後遺症が残ってしまいます。

びまん性脳損傷の後遺障害等級は症状が重い順に別紙第1(要介護):1級、2級、別表第2:1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級が認定対象となります。

事故直後に外傷や痛みがなくても必ず病院で診察を受ける

交通事故の被害にあっても、出血がない場合や頭痛、目まいなどの自覚症状がない場合は病院で診察を受けない人もいます。しかし、交通事故で頭を打った際に現れる症状の中には気づかないうちに進行する症状が多く存在します。

そのため、交通事故で頭を打ったケースでは、数週間後に症状が出てから病院に通うケースもあり、損害賠償請求の際に事故とケガとの因果関係でトラブルになるケースが後を絶ちません。

交通事故の損害賠償請求では、被害者は交通事故が原因のケガや病気であることを立証する必要があり、そのためには「医師の診断」が必要です。さらに、自賠責保険や任意保険会社では書面審査が基本です。病院で診察を受けるのが事故日から遅れるほど交通事故で受傷したものと立証するのが難しくなっていきます。

当然、因果関係を証明できなければ損害賠償金が支払われることはありません。頭部外傷を伴うケガや病気は目に見えて明らかなものからそうでないものまで様々ですが、事故直後に症状が出なくても必ず病院で診察を受けるようにしてください。

必ず警察に人身事故として届け出をしておく

そもそも、警察に交通事故の届け出をした後に取得できる事故証明書がないと事故があった事実を証明できないのでどこにも損害賠償請求をすることができません。交通事故の損害賠償請求では自動車安全運転センター発行の「事故証明書」が必要不可欠です。

もし、近日中に事故にあわれてまだ警察に被害届を提出していないという場合は、できるだけ早く事故現場を管轄する警察署に通報するようにしてください。事故日から1週間程度であれば、警察も人身事故の受理を比較的スムーズに応じてくれます。

ただ、警察署での調書作成の際に「どうしてその日は届け出なかったのか?ケガをしているのになぜ病院に行かなかったのか?」という質問を必ずされますので、その心づもりをしておいてください。

まとめ

今回は、交通事故で頭を打つとどのような症状が現れるのかを基本的な事故後の対処法とともに解説しました。後遺障害の発症原因の多くは頭部外傷によるものです。交通事故で頭を打った場合は、その時は何ともなくとも必ず専門の病院で診察を受けるようにしてください。

診断内容によっては損害賠償請求に力を入れる必要が出てきます。さらに、適正な保険金額を獲得するためには、保険会社と弁護士の採用する保険金額には倍以上もの差が出ることもあるため交通事故問題の専門家に相談することも大切です。