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交通事故の脳挫傷の症状と慰謝料・後遺障害等級認定の知識

交通事故の脳挫傷の症状と慰謝料・後遺障害等級認定の知識

交通事故で脳挫傷と診断されたら、被害者のご家族は、一刻も早く被害者に適切な治療を受けさせるとともに、社会復帰に向けた準備を図ることがとても重要です。しかし、そのためには多くのお金と時間が必要になります。

注意すべき点としては、正しい慰謝料請求の知識や方法を身につけておかないと、保険会社に言われるがまま、低い慰謝料額で示談してしまう可能性が高くなります。

この記事では、交通事故の脳挫傷の症状と慰謝料・後遺障害等級の知識について詳しく解説していきます。

脳挫傷とは

脳挫傷とは、外からの力により脳が圧迫され、脳内の組織が挫滅することで、脳組織に異常な水分(出血等)が溜まった状態(浮腫・脳浮腫)を言います。脳挫傷の原因は多岐にわたりますが、その中でも交通事故が多くを占めています。

交通事故により脳挫傷を発症するケースでは、非常に強い外力により頭蓋骨骨折を伴うことや出血が塊になり血腫となる(頭部外傷性血腫)こともあり、その場合、脳挫傷に合わせて別の病名もつくことになります。

また、脳挫傷は、外傷部位とは反対側に生じることもあります。その場合、外傷部位の直下に脳損傷をきたすものを「直撃損傷」、反対側に脳損傷をきたすものを「対側損傷」と言います。

なお、頭部に外力が加わることで頭蓋骨や脳、頭の皮膚に損傷をきたすことを「頭部外傷(頭部損傷)」と言い、脳挫傷はそのひとつです。

脳挫傷の症状と時間

脳挫傷の症状としては、事故の衝撃で頭蓋骨の内圧(頭蓋内圧)が高まることによる、事故直後からの激しい頭痛や嘔吐、意識障害等が挙げられます。その他の症状として、半身麻痺(片麻痺)、感覚障害、言語障害、痙攣、発作が現れ、血腫がひどい場合は脳ヘルニアに至ることもあります。

ただし、事故から1か月くらいたってから症状が現れることもあります。そのため、脳挫傷の後遺障害の残存事態を見過ごしてしまうケースも多いのですが、頭部外傷は時間との勝負です。

事故で頭を打った場合は、症状の有無にかかわらず、直ちに専門の医療機関で診察を受ける必要があります。

交通事故による脳内出血は時間の経過とともに症状が進行することがある

交通事故による「脳出血」は、強い衝撃により血管が破裂して起こる外傷性脳出血で、その出血が生じた部位により、脳出血、くも膜下出血、硬膜外血腫、硬膜外血種に分けられます。
なお、脳出血やくも膜下出血は画像ではっきりとわかりますので、交通事故の損害賠償請求では画像所見が重要な役割を果たします。

血腫がない場合や出血が少量の場合は、事故直後に軽い痺れ感だけが出るような場合もありますが、脳挫傷にまで至る場合の脳内出血は、時間の経過とともに出血が広がることになり、脳室内に髄液や血腫が急性期に増大します。

脳の圧迫に伴い、脊髄にも圧がかかり、神経回路・中枢神経が破壊されることもあります。血腫の大きさと症状に応じ「開頭血腫除去術」を受ける必要があります。

交通事故の脳挫傷は前頭葉を損傷する可能性が高い

交通事故の頭部外傷で脳挫傷を発症した場合、激しく脳が揺さぶられるため、前頭葉を損傷する可能性が非常に高いです。実際に、交通事故の頭部外傷では、前頭葉機能障害が最も多く見られます。前頭葉は、脳の前方にある脳葉のひとつで、認知機能から運動機能まで幅広い役割を果たしています。

前頭葉機能障害を発症すると、新しい情報を処理したり保持することが困難になったり、ミスを繰り返したりと、脳機能の中でも、記憶、言語、注意、判断などの認知機能に障害がおこる「高次脳機能障害」を発症します。また、重度の脳損傷を伴う脳挫傷が前頭葉に生じると即死に至ることもあります。

脳挫傷で意識障害を生じたときの生存率と重症度

交通事故による脳挫傷で意識障害を生じた場合の生存率は、事故直後の対応(心肺蘇生等)、挫傷の範囲や血腫の有無、大きさなどにより変わります。

回復にも個人差がありますが、交通事故による脳挫傷の重症度は「頭部外傷データバンク検討委員会」のプロジェクトで分析した結果に見ることができます。

神経外傷Neurotraumatology Vol.36 No.1

  • ・軽度の後遺症を残すこともあるが元通りの生活がおくれている(good recovery) 16%
  • ・後遺症は残したが自立した日常生活がおくれている(moderately disabled) 14%
  • ・重い後遺症が残り日常的に介護が必要(severely disabled) 19%
  • ・植物状態(vegetative state) 10%

脳挫傷は完治しないが回復することは多い

怪我や骨折であれば、損傷部位ごとに細胞分裂することで組織を再生してくれるため、治療をすれば治ります。ただし、脳は再生能力が極めて乏しく、一度損傷を受けてしまうと脳内の神経細胞が再生することはありません。

脳挫傷で発生した麻痺等の後遺症はリハビリテーションで回復することが多くあります。これは、脳自体が再生したのではなく、障害を受けずに残った脳機能が強化されるため、症状が軽くなるものと考えられています。

交通事故で脳挫傷と診断されたらまずやるべきこと

交通事故で頭を打ち、脳挫傷と診断されると意識障害や言語障害などの後遺症が残るケースが少なくありません。すぐに治るだろうと考えて、適切な治療やリハビリを受けずにいると、深刻な後遺障害が残って被害者の生活は一変してしまう可能性があります。

脳挫傷には緊急の対応が求められるため、事故直後に現れる症状を見極め速やかに適切な治療を受けることが重要です。

脳挫傷の疑いがあれば早急にMRI・MRA・CT等の精密検査を受けること

脳挫傷の診断は、通常、事故直後になされたCT検査に基づきなされます。しかしさらに、MRI検査をしておけば、受傷から3か月程度経過した後に再びMRI検査を行い、脳の萎縮や脳室の拡大といった比較画像所見をうることができます。

その他にも、MRAや脳波検査等で脳外傷後危険因子について適切な医学所見を得ておくことは、その後の治療のためにも、損害賠償上の立証のためにも有用です。

交通事故で脳挫傷を負ったときの慰謝料

交通事故で脳挫傷になったときに請求できる慰謝料には、主に、入通院慰謝料、治療費、休業損害、入通院交通費、家屋・車両改造費、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益があります。

入通院治療費や入通院交通費は医療機関への実通院日数によって異なりますが、治療を継続しても症状の改善が見込めない状態(症状固定)になると、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益等を請求できます。

脳挫傷の後遺障害と後遺障害慰謝料

交通事故で脳挫傷を負った場合に請求できる慰謝料の中でも、金額的に多くの部分を占めるのは後遺障害慰謝料です。

脳挫傷で認定される後遺障害等級は、「高次脳機能障害(別表第1の1級1号・同2級1号・別表第2の3級3号・5級2号・7級4号・9級10号・12級13号)」、「遷延性意識障害(別表第1の1級1号)」、「外傷性てんかん(5級・7級・9級・12級)」となります。各等級の慰謝料は下記のようになります。

後遺障害等級 慰謝料(自賠責基準・任意保険基準) 慰謝料(弁護士基準・裁判所基準)
1級1号 1,600万円 2,800万円
2級1号 1,163万円 2,370万円
3級 829万円 1,990万円
5級 599万円 1,400万円
7級 409万円 1,000万円
9級 245万円 690万円
12級 93万円 290万円

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脳挫傷の後遺障害等級認定は専門知識がないと難しい

脳挫傷の後遺障害は軽度なものから重度なものまで様々な種類がありますので、後遺障害等級も広く設定されています。後遺障害等級の認定は自賠責保険が行います。

上記の図でもわかるとおり、等級が違うことで慰謝料の金額が大きく異なりますので、症状に応じた正しい等級を認定してもらうことが重要です。

もし、低い等級が認定されてしまった場合や非該当になってしまった場合は異議申立手続きにより、自賠責保険の判断を覆し、適正な等級を獲得しなければいけません。注意が必要なのは自賠責保険が一度下した判断を覆すことはかなり難しいということです。

脳挫傷の後遺障害等級認定のためには、画像所見により脳に挫傷痕があることや後遺症が存在することを証明する必要があります。重度後遺障害に関する専門知識やノウハウ、また、高度な医学的知識が求められるため交通事故案件の中でも特に難しい事案です。そのため、交通事故に強い弁護士からサポートを受けることが適切な判断といえます。

弁護士を選ぶならば、脳挫傷や外傷性くも膜下出血の後遺障害である高次脳機能障害等重度後遺障害の事件を数多く取り扱っていて、医師の診断漏れや記載漏れ、診断と症状とのズレなどを見逃さない専門知識を持つ弁護士を選ぶことが重要です。

脳挫傷の適正な慰謝料を獲得するためには弁護士への依頼が必須

脳挫傷のような重大被害を生じた事故においては、弁護士への依頼は必須と言えます。

交通事故の慰謝料計算の基準には自賠責保険基準・任意保険基準(両者はほぼ同等の基準)・弁護士基準(裁判所基準)の3つがありますが、自賠責保険の基準は必要最低限の金額になるのに対して、弁護士基準は裁判で勝ち取れる正当な金額になります。

どの基準を用いて脳挫傷の慰謝料を計算するのかで慰謝料の金額が大きく変わってきますので、交通事故で脳挫傷と診断されてしまった場合には、裁判で提示される適正な慰謝料を獲得するため、必ず弁護士基準を用いて慰謝料計算する必要があります。

弁護士に依頼するメリットは、脳挫傷の適正な慰謝料を獲得できることだけではありません。弁護士に依頼することで、保険会社との交渉をはじめ後遺障害等級認定手続きなど、煩わしい交渉や手続きは全て弁護士に任せて、ご本人は治療に専念することができます。

まとめ

今回は、交通事故による脳挫傷の症状と慰謝料・後遺障害等級の知識について解説しました。交通事故で脳挫傷になってしまうと重度の障害を残すケースが多くなります。

被害者ご本人の精神的苦痛はもちろん、被害者を支えるご家族の方も様々な負担を強いられることになります。とは言え、金銭的な負担を減らすことで解決できる部分も多いですので、まずは弁護士への相談をお勧めします。

弁護士法人オールイズワンは、脳挫傷の被害者サポートに多くの実績があります。交通事故の脳挫傷でお悩みなら、当法人までお気軽にご相談ください。