脊髄損傷SOS

脊髄損傷の症状固定のタイミングと注意点

脊髄損傷の症状固定のタイミングと注意点

脊髄損傷は、交通事故等の何らかの外力により、脳からの命令を全身に届ける中枢神経としての性質を有する「脊髄」が損傷してしまうことです。脊髄が損傷した場合、その部位(高位)以下の四肢等における麻痺を中心に症状が生じます。

 

そして、これらの症状は現代医学では回復させることが困難であるため、日常生活に復帰するためには回復期のリハビリが非常に重要な意味を持ちます。

 

交通事故で脊髄損傷を負ってしまった場合、リハビリの期間を十分に確保するため、賠償期間の終期である症状固定日を慎重に決定する必要があります。そこで、本記事では、脊髄損傷における症状固定について、注意点を踏まえ説明いたします。

症状固定とは

症状固定とは、「治療を行ってもそれ以上の症状緩解が見込めない状態」、「一進一退の状態」を指す言葉です。ただし、医師の立場では、これを断言することはできないと言われることがあります。

 

例えば、手足が欠損してしまった場合、現在の医学では元の完全な状態に再生させることはできません。一方、頚椎捻挫後の頚部痛や手のしびれについては、治療やリハビリによって、人によっては症状が気にならない程度まで回復させることができる場合があります。

 

前者については、切断部の処置等、急性期の治療が終わった後、ある程度のところで症状固定の診断を明確に行うことができます。しかし、後者については、症状固定の時期は「わからない」というのが専門家である医師としても正直なところかと思います。

 

では、何故このような用語・考え方が必要なのか、それは保険会社の支払の終了時期を決定するためです。保険会社は営利企業ですので、患者の傷病が完治するまで支払を続けるということはありません。

 

しかし、加害者の立場で交渉にあたる以上、被害者側の要望を無下にはできないため、大義名分としてこの用語が使用されます。したがって、症状固定は、賠償実務的な側面が強い考え方ということになります。

 

一般的に、症状固定は保険会社から促されその時期を決めるケースが多いですが、医師により提言されることもあります。また、その期間については、一般的には3~6か月の間が多い印象です。

 

症状固定日は、被害者にとっても保険会社にとっても非常に重要な意味を持つ節目ですので、慎重に決定する必要があります。

脊髄損傷の症状固定のタイミングとは

症状固定までの期間は、保険金支払の終了を目的として一律に決め方でなく、傷病の内容によって個別に決定されるべきです。脊髄損傷についても同様に、脊髄損傷における現代医学を踏まえ、その時期を決定しなければなりません。

 

脊髄損傷の治療は、大きく分けると急性期の治療と、その後のリハビリに分かれます。近年では再生医療の研究が進み、脊髄損傷の治療でも一部取り入れられていますが、いまだ旧来の治療が一般的です。

 

急性期においては、損傷範囲を最小限に留めるため、手術や安静処置が施されます。そして、状態が落ち着いたところで、健常な部位で患部をカバーしながら、可能な限り日常生活に復帰するためのリハビリを行っていきます。

 

このリハビリは、想像以上にハードなものとなることも珍しくないため、人によっては長期を要します。このようなリハビリを受けるための期間としては、場合によっては1年を超えることもあり得るため、個別ケースごとに判断しなければなりません。

脊髄損傷はどのようにして症状固定が決まるのか

脊髄損傷の場合、手術や安静処置等、急性期の治療は勿論のこと、その後における医療機関でのリハビリをある程度やり切ったところで症状固定の診断を受けます。

 

脊髄損傷におけるリハビリは、多くは原因療法的なものでなく、手足の麻痺や膀胱直腸障害等付随する症状が残存することを前提に、それらを健常な部位でフォローしながら社会復帰を目指すためのものです。

 

例えば、下肢の麻痺が残存していれば、歩行や車椅子操作の訓練を行いつつ、上肢の筋力増強トレーニング、上肢を使ったプッシュアップ動作等の訓練を行います。

 

また、上肢にも麻痺が残存する場合、程度によりますが、食事、着替え等の手を使う動作の訓練等が挙げられます。さらに、麻痺した手足の痙縮緩和が必要な場合には神経ブロック治療等も実施されます。

 

以上のとおり、脊髄損傷の治療は回復期のリハビリを含めると長期を要することになります。そのため、症状固定の時期は、かかるリハビリに必要な期間をしっかりと検討した上、決定しなければなりません。

脊髄損傷の症状固定の注意点

保険会社としては、症状固定日をなるべく早期に設定し、それにより保険金の支払額を低く抑えたいと考えます。この立場からすると、急性期の治療と比べて長期間を要する可能性が高い回復期の治療・リハビリは、できる限り否定したいものです。そのため、保険会社の担当者によっては、打切り交渉が過剰になることもあります。

 

被害者としては、保険会社の主張をただただ甘受することは避けなければなりません。ただし、症状固定をやみくもに先延ばしすることには注意が必要です。

 

後遺障害部分の金額の大きな保険金は、症状固定後、等級認定を経た上でないと支払を受けられませんし、複数の自賠責保険会社が関わる場合には時効の管理等を行わなければなりません。

 

症状固定のタイミングは被害者ごとに区々です。治療・リハビリ状況は勿論のこと、経済事情等も十分考慮し、納得のいく日をもって症状固定を迎えられると良いでしょう。

症状固定のタイミングで弁護士ができること

脊髄損傷の等級申請においては、後遺障害診断書のほか、「脊髄症状判定用」や「神経学的所見の推移について」等の書式の提出が必要となります。これらの書式を作成するためには、脊髄損傷に関する正確な知識を要します。

 

また、保険会社との示談交渉においては、介護費用やリフォーム費用等、麻痺を抱えながら生活する上で何が必要なのか、よく吟味した上、必要費を賠償金に計上しなければなりません。

 

弁護士法人オールイズワンでは、脊髄損傷を負った被害者を数多くサポートしてまいりました。その経験から、等級申請や賠償金額の交渉のほか、今後の生活のためのアドバイスやリハビリ、介護に係る助言等含め、総合的にサポートいたします。脊髄損傷に係る諸問題でお困りでしたら、当事務所までお気軽にご相談ください。