交通事故によりてんかんを発症した場合の後遺障害と慰謝料を解説
交通事故によりてんかんを発症した場合の後遺障害と慰謝料を解説
交通事故が原因となり「てんかん」の症状が出た場合、てんかんの基礎知識や後遺障害の認定基準、慰謝料の相場を理解しておくことが重要になります。
この記事では、交通事故が原因でてんかんを発症した場合の後遺障害と慰謝料を解説していきます。
てんかんとは?
てんかんとは慢性的な脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰興奮することで繰り返しの発作を起こし、様々な症状を呈します。てんかん症候群と呼ばれることもあります。
てんかんは、その原因が特定されるかどうかで「特発性てんかん」と「症候性てんかん」に分けられます。特発性てんかんは原因不明のてんかんで、潜在的な理由があるものと考えられていますが、不明点が多いのが実情です。一方、症候性てんかんは脳に何らかの病変が存在し、それに起因するてんかんです。
交通事故によるてんかんの多くは、頭部外傷により脳を損傷することでそこから異常な信号を発し、その結果、ニューロンと呼ばれる脳の神経細胞のバランスが崩れ、過剰な興奮状態に陥ることが原因で発症する症候性てんかんです。このような外傷に起因するてんかんを「外傷性てんかん」といいます。
外傷性てんかんの症状
外傷性てんかんの症状は、意識障害や痙攣などの発作を繰り返すことが特徴です。てんかん発作を大きく分けると、脳の一部が興奮する「部分発作」と、脳の大部分又は全体が興奮する「全般発作」があります。
さらに、部分発作の種類は、意識障害のない「単純部分発作」と突然意識を失う「複雑部分発作」に分類されます。
つまり、脳の一部に過剰興奮が起こる場合は、発症後すぐには意識障害が出ないこともありますが、その後、過剰興奮が脳全体に広がることで全般発作に進展し、結果として意識障害が生じることがあります。これを「二次性全般化発作」といいます。
また、発作の種類には突然意識が喪失し全身が硬直する「強直発作」と、手足に痙攣が生じる「間代発作」があり、両方の症状が同時に発生する「強直間代発作」が発症することもあります。二次性全般発作のほとんどは強直間代発作を引き起こすとされています。
交通事故の際にてんかんの診断に必要な検査
てんかんの検査の一般的な流れとしては、まず患者や家族に対して、意識消失の有無や発作の持続時間、発作の様子などの問診が行われ、また、脳の検査に欠かせない神経学的検査が行われます。
次に、てんかんの識別診断に必要な検査として、患者の「身体的検査」を経て「脳波検査」、「MRI検査・CT検査」、「血液検査・尿検査」が行われます。 ここまでの検査で不足部分がある場合はSPECTやPET、ビデオ脳波モニター検査など必要に応じた検査が実施されます。
これらの検査によって、てんかんが認められる場合は、てんかんの診断が確定されます。
なお、てんかんについて等級認定を求める場合、症状固定の時期については慎重な判断が必要となります。てんかんの治療は長期に亘る場合も少なくありませんが、治療の甲斐あって状態が落ち着いた場合には、後遺障害等級としては低くなります。
ある程度の時期で一区切りつけ、適切な等級認定を得たうえで、その後は治療に専念するという選択も一考に値します。
また、発作の回数が多い場合は高次脳機能障害を伴っている可能性があります。ご家族が患者の知能低下や人格変化に気付いてあげられるかどうかが重要となります。
交通事故でてんかんと診断された場合の対処法
てんかんには治りやすいものと治りにくいものがありますが、交通事故が原因の症候性てんかん(外傷性てんかん)は治りにくい病気です。
てんかんの治療は薬物療法が中心です。抗けいれん薬の服用期間は、てんかんの種類によって異なりますが、一般的には脳波が落ち着いてから2年が目安とされており、そこから減量や服薬中止を検討していくのが望ましいとされています。
てんかんと診断された場合、このように長期間の治療を要し、また、ときには食事療法が必要となることもあります。そのため、ご家族の協力もとても重要です。
てんかんの治療には多くのお金と時間が必要となりますので、加害者への損害賠償を適正な金額にすることが重要です。そのために、まずは交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
てんかんの後遺障害等級と認定基準
てんかんの後遺障害は、神経系統の障害に分類されており、症状や発作の程度によって認定される等級が分けられています。てんかんの後遺障害等級の認定基準は次のようになります。
後遺障害等級 | 認定基準 |
---|---|
5級2号 | 1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が意識障害の有無を問わず転倒する発作又は意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作であるもの |
7級4号 | 転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの |
9級10号 | 数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの |
12級13号 | 発作はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの |
交通事故でてんかんを患った場合に弁護士に依頼するメリット
交通事故でてんかんを患ってしまうと、この先しばらく入通院が必要になることや仕事への影響、経済的な問題など様々な苦痛や不安に襲われることになります。
てんかんを患った場合、弁護士に依頼することで「賠償金を増額できる」、さらには、てんかんの損害賠償で重要な「後遺障害等級を獲得できる」という可能性が高まります。
また、弁護士から今後の生活や治療などのアドバイスを受けることができます。そのため、事故後はできるだけ早期に弁護士からサポートを受けることが大切です。
慰謝料を増額できる
交通事故の慰謝料の算定基準には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判所基準)の3つがあります。
自賠責基準は被害者救済を目的とした最低限の基準であり、任意保険基準は各保険会社が独自に定めている基準です。弁護士基準は交通事故事件の判例を基に導き出された基準で、裁判所基準とも呼ばれています。
弁護士基準は、自賠責基準や任意保険基準よりも高額な基準が設定されていますので、弁護士に依頼することで慰謝料を確実に増額できるというメリットがあります。
後遺障害等級を獲得できる可能性が高い
後遺障害等級の認定手続きは、画像所見や医師の意見書など書類審査が基本です。保険会社の担当者と医師に後遺障害等級申請のすべてを任せてしまうと、実際よりも低い等級を認定されたり、後遺障害等級が非該当になってしまうなどの大きなデメリットが生じることがあります。
てんかん発作の頻度や症状に応じて、どのような書類が必要になるのか、いつ後遺障害等級申請するタイミングなのかを見極めることは非常に重要です。
多くの交通事故事件を手掛けてきた弁護士であれば、後遺障害の等級認定の要所をおさえていますので、弁護士に依頼すると後遺障害等級を獲得できる可能性が高まります。
まとめ
今回は、交通事故によりてんかんになった場合の後遺障害と慰謝料を解説しました。てんかんは慢性的な脳の病気で、脳の機能が障害されることで日常生活に様々な支障をきたします。
今後、安心して治療やリハビリを継続していくためにも、加害者に対して精神的苦痛や肉体的苦痛から生じた適正な金額を賠償請求することが重要です。交通事故でてんかんを患ってしまった場合、まずは弁護士に相談して今後あるべき方向性を確認しましょう。
弁護士法人オールイズワンは、交通事故のてんかんの被害者を数多くサポートしてまいりました。後遺障害に強い当事務所までお気軽にご相談ください。