高次脳機能障害の方が取得できる障害者手帳について

障害者手帳
障害者手帳

高次脳機能障害の障害者手帳とは

高次脳機能障害を負ってしまった場合、健康であった頃には必要なかった金銭負担を強いられるケースが少なくありません。

例えば、一人での外出が困難な本人が公共交通機関を利用する場合、介助者の付添いが必要となるため、本人と介助者の二人分の料金が掛かります。また、継続的な医療費負担を要する場合、税金や公共料金の支払いがより大きな負担となることがあります。

このような負担を軽減する施策として「障害者手帳」の制度が制定されています。障害者手帳は、「精神障害者保健福祉手帳」、「身体障害者手帳」、及び「療育手帳」を総称した呼称です。

各種障害者手帳は、それを提示することで、各種税金の減免、公共交通機関の利用料の割引、公共施設の利用料の割引、医療費助成等、様々な援助を受けることができます。

以下、3種の障害者手帳について、それぞれの概要と申請方法について説明します。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、「一定の精神障害の状態にあること」を条件に、都道府県知事により認定がなされた方に対して交付されます。

対象者は「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」に定められる精神疾患を有する方で、次のとおり程度によって等級が付されます。

等級 要件 具体例
1級 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  • ・医療機関等への外出を自発的にできず、付き添いが必要である
  • ・家庭生括においても、適切な食事を用意したり、後片付け等の家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時援助を必要とする等
2級 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  • ・食事をバランス良く用意する等の家事をこなすために、助言や援助を必要とする
  • ・清潔保持が自発的かつ適切にはできない・社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある等
3級 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
  • ・一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である。
  • ・日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じてくることもある等

高次脳機能障害は上記基準にて「器質性精神障害」として認定の対象とされています。

手帳の所持者は、次のように各種料金・税金の減免等を受けることができます。

  • ・NHK受信料の減免
  • ・各種税金の減免
  • ・公共交通機関の利用料の割引
  • ・携帯電話の利用料の割引
  • ・水道料金の割引
  • ・公共施設、商業施設の割引
  • ・駐車禁止規制の除外

なお、具体的なサービス内容は自治体ごとに異なりますので、居住地を管轄する自治体のホームページ等をご確認ください。

申請手続きと必要な書類

精神障害者保健福祉手帳の交付申請窓口は、居住地の市区町村を管轄する福祉や障害者支援の担当課です。

必要書類は、①申請書、②本人の写真、及び③所定の診断書又は精神障害に係る障害年金・特別障害給付金の受給証明書類です。

診断書は、初診日から6か月以上が経過した後、精神保健指定医その他精神障害の診断又は治療に従事する医師に作成を依頼します。

診断書の傷病名はICDコード(WHOが国際的な統計基準として公表している分類です。)に基づいて記載されますが、高次脳機能障害は次のものに該当します。

  • ・F04:器質性健忘症候群(記憶障害が主体となる病態を呈する症例)
  • ・F06:他の器質性精神障害(記憶障害が主体でない症例、遂行機能障害、注意機能障害が主体となる病態を呈する症例)
  • ・F07:器質性パーソナリティおよび行動の障害(人格や行動の障害が主体となる病態を呈する症例)

また、その他の内容としては、治療経過、現在の病態、生活能力の状態、及び障害福祉サービスの利用状況等が記載されます。
なお、本申請は診断書作成日から3か月以内になされなければなりません。

申請後、審査には2か月ほど要するのが通常です。そのため、時間的余裕を持って申請を行う必要があります。

また、実際に精神障害者保健福祉手帳が交付された場合、有効期間は2年間です。その後は2年ごとに更新の手続きを要しますので注意が必要です。

身体障害者手帳

身体障害者手帳は、「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」に規定される身体上の障害を有する方に対して、都道府県知事、指定都市市長、又は中核市市長によって交付されます。

対象とされる障害は次のとおり9種に分類され、それぞれ程度によって1級から7級の等級が付されます。

  1. ①視覚障害
  2. ②聴覚又は平衡機能の障害
  3. ③音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
  4. ④肢体不自由
  5. ⑤心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
  6. ⑥ぼうこう又は直腸の機能の障害
  7. ⑦小腸の機能の障害
  8. ⑧ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
  9. ⑨肝臓の機能の障害

同一等級について2つの重複する障害がある場合は、1級上の等級とされます。また、異なる等級について2つ以上の重複する障害がある場合は、障害の程度を勘案のうえ、より上位の等級とされることがあります。

なお、7級単独では手帳が交付されることはありません。しかし、7級が重複し6級となる場合、又は6級以上の等級が併存する場合は、7級の障害の存在が影響を与えます。

高次脳機能障害を負うような交通事故の場合、上記障害が複数残存する可能性が十分あり得るため、残存症状をしっかりと把握しておく必要があります。

手帳の所持者は、次のように各種料金・税金の減免等を受けることができます。

  • ・医療費の助成
  • ・補装具購入や修理費用の助成
  • ・住宅改装費の給付
  • ・NHK受信料の減免
  • ・各種税金の減免
  • ・公共交通機関の利用料の割引
  • ・携帯電話の利用料の割引
  • ・公共施設、商業施設の割引

なお、具体的なサービス内容は自治体ごとに異なりますので、居住地を管轄する自治体のホームページ等をご確認ください。

申請手続きと必要な書類

身体障害者手帳の交付申請窓口も、居住地の市区町村を管轄する福祉や障害者支援の担当課です。

必要書類は、①申請書、②本人の写真、③個人番号(マイナンバー)が確認できる書類、及び④身体障害者診断書・意見書です。

診断書は、「都道府県知事の定める医師」(身体障害者福祉法第15条)に作成を依頼します。
また、診断書・意見書は、障害名や経過、該当すると思われる等級などを記載する「総括表」、及び障害ごとに異なる書式の「状況及び所見」の2種で構成されます。

申請後、審査には1~2か月ほど要するのが通常です。
なお、身体障害者手帳には有効期限はありません。そのため、障害が改善する等により手帳を返還するまでは効力を有します。

療育手帳

療育手帳は、前2つの手帳と異なり法律の裏付けを有さず、「療育手帳制度について」(昭和48年9月27日付、厚生省発児第156号)という厚生事務次官通知を根拠にしています。そのため、名称については、多くの自治体は療育手帳と称していますが、例えば東京都は「愛の手帳」として運用している等、全国統一のものではありません。

対象者は、概ね18歳に達するまでに「知的障害」を発症した方です。判定基準は、各自治体によって細部が異なりますが、厚生労働省は知能指数(IQ)や日常生活状況等を基にする次のガイドラインを定めています。

障害の程度 判定基準
重度(A) ①知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者

  • ・食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。
  • ・異食、興奮などの問題行動を有する。
②知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者
それ以外(B) 重度(A)のもの以外

例えば、さいたま市は上記ガイドラインに準拠し、「マルA(最重度)」、「A(重度)」、「B(中度)」、「C(軽度)」の4段階で判定しています。

手帳の保持者が受けられる援助内容も各自治体によって異なりますが、例えば以下のものが挙げられます。

  • ・各種税金の減免
  • ・公共交通機関の利用料の割引
  • ・公共施設、商業施設の割引
  • ・手当の給付
  • ・保育園入園の優先順位の上昇
  • ・就職支援

申請手続きと必要な書類

審査機関は、18歳未満の方の場合は児童相談所、18歳以上の方の場合は知的障害者更生相談所です。ただし、申請方法は各自治体によって異なりますので、事前に確認が必要です。

必要書類は、①申請書、及び②本人の写真のみで済む場合と、③母子手帳等の生育歴に関する資料を要する場合があります。また、本人や保護者に対する面接が実施される場合がありますが、詳細についてはやはり各自治体によって異なります。

審査期間は1か月半~2か月ほどの自治体が多いですが、より長い期間を要するところもあるため、個別に確認する必要があります。