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非器質性精神障害とは?等級認定の注意点について

非器質性精神障害とは?等級認定の注意点について
非器質性精神障害とは?等級認定の注意点について

非器質性精神障害とは

非器質性精神障害は、脳損傷等の器質的病変に起因せずに精神症状を呈する障害です。一般的に精神障害として認知されるうつ病やPTSD等がこれに該当します。これらは、交通事故による恐怖やストレスによって発症する場合があります。

非器質性精神障害の諸症状は、高次脳機能障害の症状と類似するものが多くあります。しかしながら、自賠責における等級認定では、「受傷直後の意識障害」と「画像所見」の有無によって、明確に区分されてしまいます。

非器質性精神障害の場合、事故受傷から少し遅れて症状を発症する、又は自覚する場合が多い印象です。そのため、「受傷直後の意識障害」との要件を満たすケースは多くありません。

また、「画像所見」については、SPECT等の検査における所見からうつ病を画像上において可視化する研究がなされていますが、こと自賠責保険における等級認定においては、現状は採用されていません。

本記事では、交通事故により精神障害を負ってしまった方が適切な等級認定を得られるよう、非器質性精神障害の認定要件や高次脳機能障害との関係等について説明します。

非器質性精神障害の症状と等級認定について

非器質性精神障害には様々なものが含まれますが、自賠責における後遺障害としては、平成15年8月8日付厚生労働省労働基準局通達「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」の別添1「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」に準じて審査が行われています。

この基準では、後述します「精神障害」のうち1つ以上のものを残し、かつ、「能力に関する判断項目」のうち1つ以上の能力について障害が認められることを要件としています。

その上で、交通事故被害者が「就労している者又は就労の意欲のある者」か「就労意欲の低下又は欠落により就労していない者」かを踏まえ、次のとおり等級が決定されます。

別表第二第9級10号 通常の労務に服することができるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの
(例:非器質性精神障害のため、「対人業務につけない」ことによる職種制限が認められる場合)
別表第二第12級13号 通常の労務に服することができるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの
(例:非器質性精神障害のため、「職種制限は認められないが、就労に当たりかなりの配慮が必要である」場合)
別表第二第14級9号 通常の労務を服することができるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの
(例:非器質性精神障害のため、「職種制限は認められないが、就労に当たり多少の配慮が必要である」場合)

精神症状

⑴ 抑うつ状態
持続するうつ気分(悲しい、寂しい、憂うつである、希望がない、絶望的である等)、何をするのもおっくうになる(おっくう感)、それまで楽しかったことに対して楽しいという感情がなくなる、気が進まないなどの状態である。

⑵ 不安の状態
全般的不安や恐怖、心気症、強迫など強い不安が続き、強い苦悩を示す状態である。

⑶ 意欲低下の状態
すべてのことに対して関心が湧かず、自発性が乏しくなる、自ら積極的に行動せず、行動を起こしても長続きしない。口数も少なくなり、日常生活上の身の回りのことにも無精となる状態である。

⑷ 慢性化した幻覚・妄想性の状態
自分に対する噂や悪口あるいは命令が聞こえる等実際には存在しないものを知覚体験すること(幻覚)、自分が他者から害を加えられている、食べ物や薬に毒が入っている、自分は特別な能力を持っている等内容が間違っており、確信が異常に強く、訂正不可能でありその人個人だけ限定された意味付け(妄想)などの幻覚、妄想を持続的に示す状態である

⑸ 記憶又は知的能力の障害
非器質性の記憶障害としては、解離性(心因性)健忘がある。自分が誰であり、どんな生活史を持っているかをすっかり忘れてしまう全生活史健忘や生活史の中の一定の時期や出来事のことを思い出せない状態である。
非器質性の知的能力の障害としては、解離性(心因性)障害の場合がある。日常身辺生活は普通にしているのに改めて質問すると、自分の名前を答えられない、年齢は3つ、1+1は3のように的外れの回答をするような状態(ガンザー症候群、仮性痴呆)である。

⑹ その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)
その他の障害には、上記⑴から⑸に分類できない症状、多動(落ち着きの無さ)、衝動行動、徘徊、身体的な自覚症状や不定愁訴などがある。

能力に関する判断項目

⑴ 身辺日常生活
入浴をすることや更衣をすることなど清潔保持を適切にすることができるか、規則的に十分な食事をすることができるかについて判定するものである。
なお、食事・入浴・更衣以外の動作については、特筆すべき事項がある場合には加味して判定を行う。

⑵ 仕事・生活に積極性・関心を持つこと
仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽等の日常生活等に対する意欲や関心があるか否かについて判定するものである。

⑶ 通勤・勤務時間の遵守
規則的な通勤や出勤時間等約束時間の遵守が可能かどうかについて判定するものである。

⑷ 普通に作業を持続すること
就業規則に則った就労が可能かどうか、普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうかについて判定するものである。

⑸ 他人との意思伝達
職場において上司・同僚等に対して発言を自主的にできるか等他人とのコミュニケーションが適切にできるかを判定するものである。

⑹ 対人関係・協調性
職場において上司・同僚と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定するものである。

⑺ 身辺の安全保持、危機の回避
職場における危険等から適切に身を守れるかどうかを判定するものである。

⑻ 困難・失敗への対応
職場において新たな業務上のストレスを受けたとき、ひどく緊張したり、混乱することなく対処できるか等どの程度適切に対応できるかということを判断するものである。

精神障害の等級認定は難しい

非器質性精神障害の審査においては、上記の要件のほか、「改善可能性の有無」が厳格に検討されます。それは、一般的には、精神障害が原因となっている事柄を改善又は除去することで改善するものと考えられており、安易に後遺障害を認定できないという理由によるものです。そのため、症状固定日は重要な要素となります。

後遺障害の基本的な考え方では、事故受傷後6か月が経過した段階で残存する症状を後遺障害等級の対象としますが、こと非器質性精神障害については、事故受傷後1年ほどをその判断期間としており、他の障害よりも長い期間、症状固定の判断に掛けなければなりません。

また、用意されている等級は最上位のもので9級ですが、高次脳機能障害においては9級が一番軽度の等級とされております。この様に、重篤な症状を呈していたとしても、高次脳機能障害としての要件を満たしていない場合は、等級自体が用意されていないという理由により、上位等級を得られないのが実情です。

精神障害ではなく高次脳機能障害のケース

実務上では、実態を余すことなく立証することができれば高次脳機能障害として認定され得るのに、資料不足により非器質性精神障害としての判断しか受けられていないという方が多く見受けられます。

非器質性精神障害の最上位等級が第9級であるのに対して、高次脳機能障害には第9級から第1級までの等級が用意されています。そのため、どちらの障害として等級認定されるかによって、最終的な賠償金の額に大きな差が生じてしまいます。

非器質性精神障害と高次脳機能障害は、後遺障害としては「受傷直後の意識障害」と「画像所見」の有無により機械的に線引きされます。そのため、かかる二点を如何に立証できるかが非常に重要となります。

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等級認定に疑問を感じたら弁護士へ相談すること

高次脳機能障害の立証には、等級審査の要件と医学的知識の理解が必須です。特に、「受傷直後の意識障害」を立証するためには膨大なカルテ等医療記録や救急搬送記録の解読を要し、「画像所見」の有無を判断するためには、MRI等の読影スキルや脳萎縮・脳室拡大の正しい知識が必要です。

また、非器質性精神障害の立証においては、他覚的所見がないことを前提に上位等級を目指すため、やはり正確な等級審査のルールを理解していなければなりません。

弁護士法人オールイズワンでは、非器質性精神障害や高次脳機能障害を負った被害者を数多くサポートしてまいりました。その経験から、高次脳機能障害としての立証が可能か否か、しっかりと精査いたします。

また、高次脳機能障害としては等級認定を得ることが難しい場合でも、非器質性精神障害としての認定の可能性も含めて、多角的に検討の上、最適な方針を提案いたします。非器質性精神障害や高次脳機能障害に係る諸問題でお困りでしたら、当事務所までお気軽にご相談ください。