腕の骨折後、骨折した部分に痛みが残ったの事案について、保険会社の294万円の提示から780万円にアップさせた事例

右前腕骨両骨骨折等の後、骨折患部の痛みが残った(12級)の事案について、保険会社の294万円の提示から780万円にアップさせた事例

腕の骨折後、骨折した部分に痛みが残ったの事案について、保険会社の294万円の提示から780万円にアップさせた事例

右前腕骨両骨骨折等の後、骨折患部の痛みが残った(12級)の事案について、保険会社の294万円の提示から780万円にアップさせた事例
後遺障害内容・部位 右前腕骨両骨骨折、右尺骨骨幹部抜釘後骨折による右手関節痛
診断名・症状名
後遺障害等級 右手関節痛について、12級13号を取得
主な自覚症状
提示金額
294万円
486万円
弁護士交渉後
780万円
提示金額
294万円
486万円増
弁護士交渉後
780万円

当弁護士法人後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い

賠償項目 獲得金額
後遺障害慰謝料 290万円(裁判基準)
後遺障害逸失利益 102万7,827円(裁判基準超)※1 ※2
傷害慰謝料 134万円(裁判基準)
後遺障害逸失利益 445万円(裁判基準超) ※1
合計額 869万円(裁判基準超)
(8%過失認定事案のため、取得額は780万円)※2
※1後遺障害逸失利益¥
平均余命の1/2にあたる13.78年分の逸失利益が認められました。骨折後の痛みについて12級の認定がなされた場合、裁判所では、10年分の逸失利益しか認定されないことが圧倒的多数です。
※2過失割合
裁判所では、被害者の方の過失が10~15%とされる可能性が高い事案でしたが、8%での解決となりました。 仮に、過失15%で解決した場合でも、裁判基準での解決と言いうるところですが、そうすると、取得額は約100万円ダウンの689万円となるところでした。

ご依頼の経緯

後遺障害等級を獲得し、保険会社から示談金額の提示があったけれども、いくら何でも提示額が低すぎるのではないかとご相談に見えました。

示談交渉の経緯

1. 被害者の方は、事故に遭われてから長期間にわたり通院治療を続けられましたが、事故で骨折した右手関節の痛みが癒えず、後遺障害12級を取得されました。

 

事故前には全くなかった強い痛みが、利き手である右の手首に残されたにもかかわらず、保険会社からの提示額があまりに低く、不安と落胆の入り混じった表情で、相談においでになり、その日にこの件を当弁護士法人に依頼されました。

私は、ご依頼者に何とか安心していただき、事故がなければ歩いていたはずの道の続きを歩いていただきたいという思いに駆られました。

そのためには、できるだけ早期に裁判基準の解決を勝ち取り、事故の件から解放して差し上げなければならないと思いました。

そこで、交渉の焦点となることが予測されていた後遺障害逸失利益に関する労働能力喪失期間の問題に加え、事故態様の問題などについて、こちらの持ち札を整理した上、交渉の道筋を明確に持って示談交渉をスタートさせました。

当弁護士法人がご依頼を受ける前の相手保険会社の提示が294万円と低かったことから、かなりの抵抗があることはもとより予測の範囲内でした。  

しかし、こちらの最初の請求に対する相手の提案は、10年分の後遺障害逸失利益を認めるが、その代わり、慰謝料は裁判基準の70%しか出さないというものでした。相手保険会社にその意図を問うたところ、低額の提案の背景には、裁判になっても10年分の逸失利益は当たり前には認められないという考えがあるようでした。

 

2. そこで、こちらの再反論の中では、被害者の方の右手関節の痛みは、骨折後の不正癒合に原因があり、今後、症状が良くなる見通しは全くないことを強調し、10年分以上の後遺障害逸失利益が認定されることがむしろ必然であること、むしろ、10年という年月で区切ること自体、医学的に説明不可能であることを丹念に主張しました。

 

これに加え、疼痛の強度、難治度からすると、裁判所では増額慰謝料の認定の可能性もあることも示唆しています。

他方で、過失割合については、裁判所では被害者の過失が10~15%と認定される可能性が高い事案でしたが、示談交渉では、ただでさえ、事案の個性に応じた増額慰謝料の認定を得にくいことに加え、相手保険会社の慰謝料提示はこの時点で裁判基準の70%でしたので、被害者の方に早期に、かつ、ご満足いただける解決へと導くには、この点についても強い主張が必要でした。

そこで、本来、被害者の過失は5%までと見るべきであるが、慰謝料を裁判基準の100%認めることに加え、その100%を超える部分に位置づけられる増額慰謝料をも認めることを条件として、10%までは譲歩するというスタンスで交渉しました。

 

3. その後、何度かやり取りを繰り返し、最終的に相手保険会社は、慰謝料を裁判基準の70%から100%に引き上げてきました。

 

しかし、増額慰謝料の認定については決裁をとることができないということでしたので、相手保険会社が過失割合を8%まで譲歩することを条件として、増額慰謝料0の解決に応じるという交渉をしました。
相手保険会社がこれに応じたため、結局、過失割合のところで、15%過失で解決した場合と比べて約100万円アップの水準での解決となりました。

所感、争点

本件の最大の争点は、後遺障害逸失利益に関する、労働能力喪失期間の問題でした。
本件の被害者の方ように、骨折後、関節の可動域には支障がなくなったけれども痛みが残されたケースについて、弁護士達は頭を悩ませることが多くあります。

 

この問題については、裁判所がかなりの確率で、労働能力喪失期間を10年以内とする判断をしているからです。

 

相手保険会社もこれを知っていることから、10年分以上は認めないという対応をしてくることがよくあります。

 

しかし、「痛みについて後遺障害12級の認定を受けている事案について、裁判所が認める後遺障害逸失利益は、通常10年分である」という保険会社の意見は、分析として不十分です。

 

裁判所が多くの事案について10年分の認定しかしないのは、多くの事案で、10年以上痛みが続くことについて医学的な証明がなされていないからです。

 

そうすると、10年以上痛みが続くことが医学的に証明できる場合には、むしろ10年分以上の後遺障害逸失利益が認められることになります。

 

この、実にシンプルな問題について、当弁護士法人では、本件の被害者の方の右手に残された、骨折患部の不正癒合の事実を回答の基軸に据え、相手保険会社の納得を得ることに成功しました。

 

弁護士による医学的アプローチの重要性が、はっきりとわかる事案でした。

 

本件は、被害者の方が、後遺障害等級の認定を受けた後に依頼された件でしたので、文字どおり、交渉力が問われる事案でした。

 

交渉は弁護士の仕事ではないという考えの弁護士の方もおられ、それは、それこそ自由だと思いますが、私は、交渉は弁護士の仕事だと考えています。

 

示談交渉上、増額慰謝料を請求する弁護士も多くはないようですが、本件では、早期解決の要請もあり、私は、実質的に増額慰謝料を確保する形の示談案を、被害者の方にお届けしようと決意していました。

 

勿論、うまくいくことばかりではありませんが、本件では、この交渉姿勢が、過失割合について相手保険会社の譲歩を引き出すことで、実質的に増額慰謝料を確保するという解決に繋がりました。

 

交渉姿勢の如何によって結果が変わり、1年余計に掛けて訴訟をするのかしないのかさえ左右することがあることを、改めて体験した事案でした。