後遺障害内容・部位 | TFCC損傷 |
診断名・症状名 | 右TFCC損傷(右手三角繊維軟骨複合体損傷)、右手関節打撲等 |
後遺障害等級 | 12級13号 |
主な自覚症状 |
オールイズワンに後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い
賠償項目 | 獲得金額 |
後遺障害逸失利益 | 463万円(裁判基準) |
休業損害 | 118万円(裁判基準超) |
後遺障害慰謝料 | 290万円(裁判基準) |
傷害慰謝料 | 137万円(裁判基準) |
合計 | 1,008万円(裁判基準超) |
ご依頼の経緯
1.事故態様について
本件は、自転車に乗っていた被害者と自動車である加害車両の交通事故でした。被害者が優先道路脇の歩道上を直進し、脇道との交差点を横断していたところ、対向方向から進行して来た加害車両が当該脇道に左折進入を試みたことで、二台が衝突したというものです。
本件のような事故態様の場合、基本過失割合は自転車15%、自動車85%とされています。しかしながら、本件においては加害者目線では前方より進行して来る被害者が当然目視できていたはずであり、停止する等の事故を回避するための注意義務を尽くすことが求められると考えられました。そこで、当職は加害者に著しい過失が存することを主張し、最終的に被害者の過失を10%とすることに成功しました。
結果(後遺障害部分)
2.後遺障害について
被害者は本件交通事故によりTFCC(三角繊維軟骨複合体)という部位を負傷しました。
TFCCは前腕部の骨の一つである尺骨の手首側の端に存在する靭帯等の軟部組織の複合体です。主に手首を小指側に動かす際の安定性を生み、また、ショックを吸収する役割を果たしています。
交通事故においては、手で受け身を取った場合等、手首に強い負荷がかかった際に損傷してしまうケースが多く見られます。
TFCC損傷は後遺障害等級の別表第二第12級13号における「他覚的所見」になり得るため、等級申請においては画像所見としてこれを提出する必要があります。TFCCは軟部組織のため、基本的にはMRI画像にてその存在を確認します。しかしながら、実際、多くのケースでは、MRIでもなかなか明確な所見を得られないことがあります。この場合には、患部に造影剤を注入し、その漏れを撮影するという画像診断の方法を選択することもあります。
造影剤検査は軽度であるものの侵襲性のある方法であるため、医師によっては実施に難色を示される方もいらっしゃいます。そのため、術中所見の提出等、他の方法による証明の可否や異常が確認できる可能性等について、医師としっかり相談の上、実施を検討する必要があります。
本件では、幸いにしてMRI画像において異常所見が確認できたため、当該画像をもって等級申請を行い、結果として無事に12級の認定を得ることができました。
示談交渉の経緯
3.示談交渉について
本件では前述の過失割合のほか、主に①後遺障害逸失利益②休業損害、③慰謝料が争点となりました。
①後遺障害逸失利益
右手の自由が利かないことによる家事労働の制限を徹底的に訴え、裁判基準満額の取得に成功しました。
②休業損害
本件被害者は家事従事者でしたので、右手を満足に使えないことによる支障は非常に大きなものでした。 そのため、当然に休業損害が認められるべきと考えられますが、本件ではその「期間」が争点となりました。
被害者における症状固定までの治療期間は約9か月でしたが、相手方保険会社は、被害者に休業損害が生じた期間を「60日間」と主張してきました。しかしながら、被害者の障害は最終的に後遺障害12級が認められるほど重篤なものであり、日常生活上の支障は症状固定を経て、その後においても継続していました。したがって、事故から60日が経った時点で支障がなくなったと考えることは到底できず、当職としては症状固定までの全期間について休業損害の発生を主張しました。
全期間において休業損害を認めることについて相手方保険会社は強く難色を示したため、当職はより論理的な主張となるよう労働能力喪失率逓減の考え方を用いて主張を行い、最終的に全期間について、金額にして50万以上の増額を認めさせることに成功しました。
③慰謝料について
保険会社は多くの場合、「裁判外の解決では裁判基準の満額は認められない」との主張をします。本件においても裁判基準の90%が提示されました。しかしながら、この主張は根拠があるものとは到底言えないため、最後まで満額が支払われるべき旨を主張し、結果的に傷害慰謝料、後遺障害慰謝料ともに、裁判基準の100%の認定を受けるが出来ました。
所感、争点
4.結び
本件のTFCC損傷のほか、例えば肩関節の関節唇損傷や脳脊髄液減少症等のように、障害が発生するケースは少なくないものの明確な画像診断を得ることが難しい障害は他にも多く存在します。しかしながら、交通事故における後遺障害等級認定においては「他覚的所見」が12級の絶対条件となっているため、実際には重篤な障害を負っていても認定がなされないというケースは、残念ながら多くあります。
このようなケースでいかに適正な等級認定を得られるか、又は示談交渉において相当額を認めさせることができるか、今後も模索を続けていきたいと思っています。