基礎知識

弁護士に依頼して費用倒れになるケースとは?リスク回避の方法まで解説

弁護士に依頼して費用倒れになるケースとは?リスク回避の方法まで解説
弁護士に依頼して費用倒れになるケースとは?リスク回避の方法まで解説

交通事故事件の解決を弁護士に依頼するときは、当然ながら損害賠償金の増額を期待しているものと思います。もちろん、弁護士は保険会社の提示額よりも高額な解決を叶えられるよう尽力します。

しかしながら、全てのケースで増額をなし得るわけではありません。その際に考えなければならないのは、弁護士報酬の費用倒れです。

そこで、本記事では弁護士報酬の費用倒れについて、詳しく解説します。

弁護士報酬の費用倒れとは

費用倒れとは、利益を得るために掛けた費用が利益の額を超えてしまい、結果マイナスの状態となってしまうことを指します。弁護士に事件解決を依頼した場合にも、ときには費用倒れとなってしまうケースがあります。

交通事故事件においては、例えば慰謝料の相場については弁護士が介入するだけでその算定基準を引き上げることができるため、人身事故の場合には増額をなし得る可能性が高いと言えます。

しかし一方で、殆ど増額が見込めないケースでは、それでも最低限の弁護士報酬が発生するため、結果として費用倒れとなってしまうこともあり得ます。

弁護士報酬は多くの場合、決して安い額ではありません。そのため、弁護士に依頼する際は費用倒れになることがないよう、事前にしっかりと検討しておく必要があります。

交通事故の弁護士費用と項目

現在、弁護士報酬は弁護士ごとに自由に定められることとなっています。そのため、委任先の弁護士によって報酬はまちまちです。しかしながら、自由とはいっても相場観というものは存在しており、多くの弁護士は日弁連の旧報酬規程を参考にしているものと思われます。

交通事故事件の解決を弁護士に依頼する場合、「着手金」と「成功報酬」の二段階請求が行われることが多い印象です。着手金は、弁護士が最低報酬を確保するための費目であり、どのような解決を迎えようと発生する費用です。

一方、成功報酬は、弁護士が介入したことで増額した額(経済的利益)に対して、その何%という算定方法により金額が決まります。これらに加え、例えば遠方の病院や裁判所に出向いた場合には、それについての「日当」が発生し、また、関係書類の送料や訴訟提起の際の印紙代等「実費」を考慮しなければなりません。

さらに、弁護士によっては依頼前の段階で「相談料」を設定していることもあります。

なぜ費用倒れになるのか

弁護士に依頼した際は、弁護士報酬の総額が経済的利益を上回ってしまった場合に費用倒れが生じます。したがって、経済的利益に付随する費目(成功報酬等)以外の費目が大きなウェイトを占めている場合、費用倒れが生じるリスクが大きくなることになります。

例えば、示談交渉が難航し裁判となってしまった場合、裁判外の交渉とは別の着手金を請求する弁護士は少なくありません。また、ADRを利用する場合には、日当がかさむおそれがあります。

そのほか、着手金・成功報酬の体系ではなく「タイムチャージ」を採用している弁護士の場合には、弁護士報酬が経済的利益を大きく上回る可能性があります。

費用倒れになるリスクがある交通事故とは

交通事故事件の解決を弁護士に依頼する場合、特に次のケースでは、費用倒れにならないか事前にしっかりと検討しておく必要があります。

物損事故

人身事故の場合、各慰謝料や逸失利益、介護費用等について、交渉による増額の余地が多分にあります。一方で物損事故の場合、賠償金の性質は実損害の填補であるため、因果関係が争われているような場合を除き、弁護士が介入しても大きな増額は望めないケースが多いと言えます。

ケガが軽傷だった

人身事故であっても、負った怪我が軽傷である場合は、通院期間や通院回数に基づく入通院慰謝料が低額となり、また、後遺障害部分の慰謝料等が発生しないため、経済的利益は少額となります。

加害者が任意保険に未加入だった

加害者が任意保険に未加入であれば、加害者自身に資力がある場合を除き、請求先は事実上自賠責保険のみとなります。その場合、被害者の損害がどれだけ大きくとも法定の限度額以上は請求することができません。

例えば、治療費、交通費、休業損害、入通院慰謝料等の傷害部分については、併せて120万円が自賠責保険の上限金額です。そのため、実費のみでこの上限額に達してしまった場合は、弁護士が介入しても増額は叶いません。

事故の証拠が不足している

示談交渉は、支払額をできるだけ抑えたいと考える加害者側との交渉です。それでも支払額を増額させるためには然るべき証拠を提示する必要があります。

例えば、大きな事故が発生していても、それを警察に届け出ていなければ事故自体がなかったとされてしまう可能性がありますし、重篤な障害を負っていても治療の実績が乏しければそれを立証できません。このように証拠が不足している場合には、弁護士を介入させても費用倒れとなってしまいます。

被害者の過失割合が大きい

被害者に過失がある場合には、その割合に応じて賠償金額が減額される過失相殺という処理がなされます。そのため、被害者の過失割合が大きい場合には、機械的に見積もった賠償金額は高額であっても、実際の支払額は大きく減額された金額となってしまうことがあります。

過失割合が大きい場合は、特に経済的利益に付随しない弁護士報酬をしっかり把握した上、弁護士への依頼を検討する必要があります。なお、人身傷害保険に加入されている場合、自己の過失部分について自身の保険会社から保険金を受け取ることができます。

自賠責保険で認められた後遺障害等級や相手保険会社に認めさせた内容の如何により、自身の保険会社から受け取れる金額が増減しますので、弁護士に相談してみることをお勧めします。

費用倒れを回避する方法

交通事故における費用倒れを回避するためには、事前に費用対効果をよく検討することが重要ですが、以下の方法も選択肢として挙げられます。

弁護士費用特約を利用する

自身の加入している任意保険に弁護士費用特約を付保していれば、一事故につき300万円を上限に弁護士費用の補償を受けることができます。弁護士報酬が300万円を超えるケースは、一概には言えないものの、賠償金額2000万円弱以上が目安となります。

そのため、弁護士費用特約の補償範囲内であれば勿論のこと、それを超えるケースでも、弁護士費用特約を使用できる場合には、費用倒れは通常想定され得ません。

司法書士・行政書士に依頼する

弁護士以外の士業に依頼するという選択肢もあります。例えば司法書士や行政書士の場合、その報酬は弁護士と比べて低額であることが一般的です。ただし、司法書士については140万円以下の示談交渉にしか対応することができず、また、行政書士は交渉自体が禁止されています。

そのため、他士業への依頼を選択する場合は、物損等少額の交渉である場合、自賠責保険会社への請求手続のみを依頼したい場合等、他士業の業務範囲と自身の依頼事項が合致することを事前に確認しておく必要があります。

交通事故に強い弁護士に相談して見積りを出してもらう

弁護士としても、結果を出すことができないとわかっている事件を受任することは心苦しいものです。そのため、契約前の相談の段階で、賠償金額の増額可能性や費用倒れのリスクについて説明を受けられるはずです。

実際に依頼する前に、まずは賠償金額の見積もりを出してもらうことが有効です。

まとめ

以上、交通事故における弁護士報酬の費用倒れに関して解説しました。賠償金額自体の増額だけでなく、弁護士報酬やその他経費を踏まえ、実際に手元にいくら残るのかをしっかり考えていただければと思います。

弁護士法人オールイズワンは、交通事故事件の解決を主業務として長年取り組んでまいりました。その経験から、受任前の相談段階において、ある程度の見積もりをお出しすることが可能です。交通事故事件に係る諸問題でお困りでしたら、当事務所までお気軽にご相談ください。