基礎知識

実況見分の注意点とは?実況見分調書が過失割合に及ぼす影響について

実況見分の注意点とは?実況見分調書が過失割合に及ぼす影響について
住友麻優子

【監修】 弁護士 青木芳之
/弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所

交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。

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実況見分とは

実況見分とは、捜査機関が現場を検証し、事実確認や証拠保全を行うことを指します。交通事故における実況見分では、警察が事故現場に赴き、路面状態や見晴らし、タイヤ痕その他事故態様を把握するために必要な情報を収集します。

国家公安委員会規則の一つである犯罪捜査規範では「実況見分調書には、できる限り、図面及び写真を添付しなければならない。」、「実況見分調書を作成するに当たっては、写真をはり付けた部分にその説明を付記するなど、分かりやすい実況見分調書となるよう工夫しなければならない。」との指針が示されています。

警察はこれに従い、実況見分の結果を実況見分調書として記録します。

実況見分の流れと実況見分調書に記載されること

交通事故が発生した場合、当事者にはそれを警察に通報する義務があります。

かかる通報を受け、基本的には事故発生後直ちに実況見分が行われます。そして確認された事項を基に実況見分調書が作成されますが、その内容は主に次のものです。

  1. 1.見分場所
  2. 2.路面状況
  3. 3.交通規制の有無
  4. 4.道路条件(周辺環境、勾配、照明の有無、見通し等)
  5. 5.車両の情報
  6. 6.立会人の情報等

さらに、事故態様の詳細は「交通事故現場見取図」に図示され、また、加害者や目撃者等の話は「供述調書」にまとめられます。

実況見分調書が過失割合に影響する理由

過失割合は、当事者それぞれの注意義務違反の度合いを表したものです。追突事故や信号無視、センターラインオーバー等を除き、動いているもの同士の交通事故では過失割合が問題となります。

過失割合は、最終的に当事者間又は当事者と任意保険会社間で取り決められますが、その判断には判例タイムズという書籍が用いられるのが一般的です。この書籍では、様々な事故態様ごとの基本的な過失割合が定められており、多くの場合、これをベースにします。そのため、「どのような事故だったか」という事実確認が非常に重要となります。

そこで、その判断材料として実況見分調書が用いられます。実況見分は、刑事訴訟法に根拠を有する検証手続きであり、その記録である実況見分調書は信頼性のあるものとして扱われます。

実況見分立ち会い時の注意点

犯罪捜査規範では「実況見分は、居住者、管理者その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。」と規定されており、交通事故の実況見分においても当事者はこれに立ち会うことができます。

そこで、本項では実況見分に立ち会う際の注意点について説明します。

警察官への対応

実況見分は正式な捜査の一環であり、警察は正確な記録を残さなければなりません。そのため、実況見分に立ち会う事故当事者は、あるがままに事故状況を説明する必要があります。

ときには自身が説明した状況が相手方の説明内容と矛盾してしまうこともありますが、後々の証拠能力を考えると、自身の主張は頑として曲げてはなりません。必要に応じてドライブレコーダーや防犯カメラの映像等を提出することも有用です。

立ち会いは拒否しないこと

実況見分は任意処分として行われる検証ですので、当事者は立会いを拒否することができます。しかしながら、交通事故における実況見分は可能な限り立ち会うべきです。

実況見分を行う警察官は実際に事故を目撃しているわけではないので、当事者の話は警察官の事故に対するイメージ形成に大きな影響を与えます。そのため、一方当事者の話しか聴けなければ、そちらに偏った実況見分調書が出来上がってしまいます。

前述のとおり、交通事故事件の過失割合を定めるにあたり、実況見分調書は非常に重要視されますので、自身の主張はしっかりと反映させなければなりません。

サインする前に調書をしっかり確認すること

警察官により作成された実況見分調書については、内容が正しいかどうか、当事者はしっかりと確認しなければなりません。

特に署名捺印が求められる書類については、自身の主張と異なる点があれば、しっかりと訂正を申し出る必要があります。

実況見分に立ち会えなかった場合の対応

重篤な怪我を負ってしまい救急搬送された場合等、実況見分に立ち会えないことがあります。しかし、その重要性から、相手方の主張のみに基づく実況見分調書が作成されることは極力避けるべきです。

そのため、後日になってしまっても、自身が立ち会える時に再度の実況見分を行ってもらいましょう。

実況見分や過失割合で困ったら弁護士に相談を

過失割合は交通事故事件において最も争いになりやすい項目の一つです。過失割合が1割変動すると賠償金額は大きく変わります。そのため、相手方の主張を甘んじて受け入れることがあってはなりません。困ったときはすぐにでも弁護士に相談してみましょう。

また、弁護士が介入した場合、実況見分調書を含む刑事記録を取り寄せ、事実をしっかりと把握した上で交渉に臨むことができるため、適正な過失割合での示談が期待できます。

まとめ

以上、交通事故における実況見分に関して解説しました。賠償金の額が高額になればなるほど、過失割合による増減額も大きくなります。そのため、事故態様を適正に反映させた過失割合を取り決めることは非常に重要な意味を持ちます。

弁護士法人オールイズワンは、交通事故事件の解決を主業務として長年取り組んでまいりました。その過程において様々な態様の交通事故に関わってきたため、適切なアドバイスや対応が可能です。交通事故における実況見分やその他交通事故に係る諸問題でお困りでしたら、当事務所までお気軽にご相談ください。