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交通事故で示談をする際の手続きや流れ等の注意点について

交通事故で示談をする際の手続きや流れ等の注意点について
交通事故で示談をする際の手続きや流れ等の注意点について

「示談」は紛争を解決する手段の一つですが、こと交通事故における示談が具体的にどのようなものかご存じでしょうか。

本記事では、交通事故における示談に関して解説いたします。

交通事故の示談とは

示談とは、当事者間の紛争を裁判外で解決することをいいます。基本的には当事者双方の譲歩によることから、民法に定められる和解の性質を有します。交通事故事件においては、まずは示談により解決が図られ、それにより話がまとまらなかった場合に裁判となる流れが一般的です。

なお、損害保険料率算出機構による2019年3月末の統計では、任意保険の加入率は74.9%となっています。そのため、被害者が実際に示談交渉を行う相手方は、多くの場合、加害者が加入する任意保険会社の担当者となります。

示談金の損害項目

交通事故における損害賠償金の算定方法は、公正で迅速な交通事故被害者救済のため、損害賠償額算定基準という形で体系化されています。これにより、主に以下の項目が定められています。

【積極損害】

  • 治療関係費:病院の治療費や柔道整復師の施術費のほか、温泉療養費や将来手術費が認められる場合があります。
  • 将来介護費:後遺障害を負った被害者について、職業付添人や近親者付添人が必要な場合、本人の損害として認められることがあります。
  • 通院交通費:通院等のため公共交通機関やバスを利用した場合の費用が該当します。

【消極損害】

  • 休業損害:交通事故により休業を余儀なくされた場合に、その減収分を損害として計上することができます。
  • 逸失利益:交通事故に遭う前の収入を100%として、後遺障害を負ったことによる労働能力の喪失率をそれに乗じた上、その状態が以後何年間続くか、という算定方法により算出されます。

【慰謝料】

慰謝料は、精神的被害に対する損害賠償を指しますが、交通事故においては「死亡慰謝料」、「入通院慰謝料」、「後遺障害慰謝料」という形で、それぞれ算定基準が定められています。

【物損】

「修理費」や「買替差額」等、自動車に関する費用のほか、交通事故により破損した衣類その他物品に関する費用が該当します。

示談の3つのタイミングと流れ

交通事故における示談のタイミングは、主に次の3つの時点です。以下、それぞれについて解説いたします。

1.交通事故後~治療中

1つ目のタイミングは、事故発生から数か月が経った、未だ治療継続中の時点です。特にむち打ち等他覚的所見の乏しい症状で通院している場合、被害者としてはまだまだ治療が必要だと考える段階でも、保険会社は治療費支払の打切りと併せて示談を提案してくることがあります。

示談が完了した場合、その後に交通事故に起因する症状について治療を受けたとしても、それに係る治療費を請求することはできません。そのため、保険会社による治療費支払の打切りが強行された場合でも、その時点で示談に応じることは避けるべきです。

健康保険を使用して治療を継続の上、自身が納得できるタイミングで示談交渉を開始するようにしましょう。なお、通院回数は入通院慰謝料の算定に影響するため、保険会社に先導されることなく、自身が納得できる適切な回数の通院を行う必要があります。

また、事故発生当初は物損事故として処理した上で通院を開始した場合は、可能な限り人身事故に切り替えるようにしましょう。交通事故証明書における照合記録簿の種別は、後遺障害の等級申請を行う際にある程度重要な意味を持つためです。

2.症状固定後

症状固定とは、治療効果が望めなくなり、残存症状が一進一退の状態となることです。この状態を医学的に判断することは、特にむち打ち等の目に見えない症状については実は簡単ではありません。

しかしながら、現実には、治癒に至らない症状はどこかの時点で症状固定と診断されます。これは、いつまでも治療費を支払い続けることはできないという保険会社の事情によるところが大きく、区切りとなる日が便宜的に定められるものといえます。

保険会社は、この診断をもって晴れて交通事故事件の解決を図ることができることになっています。そのため、症状固定後に後遺障害の等級申請を行う場合を除き、症状固定は示談交渉を開始するタイミングとなります。

なお、症状固定後は、保険会社からの治療費支払は受けられませんが、症状が残っている場合には、症状緩解・後遺障害等級審査の両面から、治療は継続することをお勧めします。

3.後遺障害等級認定後

症状固定と診断された場合、その旨を記載した後遺障害診断書をもって後遺障害の等級申請を行うことができます。この手続きを踏む場合、等級審査の結果(異議申立てを行う場合にはその結果)が出た後に示談交渉に進むこととなります。

示談成立と示談金の受け取り

示談は当事者双方による協議、譲歩により、その内容を決定します。そして、示談内容が決定した際は、損害賠償金の総額とその内訳等を記載した示談書(免責証書)を作成し、当事者双方がサインします。保険会社は、かかる書面の支払条件に従い、被害者に対して損害賠償金を支払います。

交通事故の示談における注意点

実際に示談交渉を行う際にはいくつかの注意点がありますので、以下でそれぞれ解説いたします。

安易に示談を受けてはいけない

前述のとおり、示談のタイミングは主に3つ想定されますが、保険会社としてはできる限り早期に解決を図り、支払金額を低額に抑えたいと考えています。そのため、ときには積極的に示談を持ち掛けてきます。

被害者としては、保険会社のペースに飲まれることなく、必要な治療や等級申請の手続きを経たところで示談交渉を開始しなければなりません。

示談に合意すればやり直しはできない

示談書には、被害者が「今後裁判上、裁判外を問わず、一切の異議申立てや請求を行わない」旨を記載することになります。これにより、被害者は示談書記載の条件以上の請求権を放棄することとなるため、示談が完了すると、以降再度の協議や追加請求を行うことは基本的にできなくなります。

なお、昭和43年3月15日の最高裁判決では、「交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に、少額の賠償金をもって示談がされた場合、右示談によって被害者が放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであって、その当時予想できなかった後遺症等については、被害者は、後日その損害の賠償を請求することができる。」とされており、示談後においても例外的に追加請求できる場合があることを謳っています。

弁護士基準により示談金を請求すること

交通事故における損害賠償金の算定基準は、最低額を定める自賠責基準、自賠責基準に近似する任意保険基準、そして弁護士が交渉に用いる裁判基準が存在します。

保険会社が提示してくる賠償金額案は、基本的に任意保険基準によって算定されています。被害者としては、保険会社の提示をそのまま受け入れるのではなく、裁判基準により算出される金額をしっかりと主張するようにしましょう。

示談をしないとどうなる

「加害者が示談交渉に応じない」、「保険会社の対応が悪く話したくない」等の理由により、示談交渉を放置してしまう被害者の方がいらっしゃいます。お気持ちはよくわかりますが、これにより、大きな損失を被ってしまう場合があります。

交通事故における示談交渉は、損害賠償金の支払を受けるために行うものです。したがって、法的な性質としては「不法行為による損害賠償請求」となります。そして、かかる請求権には消滅時効が定められています。

不法行為による損害賠償請求権は「損害及び加害者を知った時」から進行し、「人の生命又は身体を害する不法行為」については5年間、それ以外では3年間行使しないと消滅してしまいます。そのため、具体的には次の期間が経過することで請求権は消滅します。

  • 物損事故:事故日の翌日から3年間
  • 傷害部分:治癒した日又は症状固定日の翌日から5年間。ただし、事故日を基準とする説も存在します。
  • 後遺障害:症状固定日の翌日から5年間
  • 死亡事故:死亡日の翌日から5年間

なお、後遺障害の等級申請を含む自賠責保険への請求権については、自動車損害賠償保障法にて別途消滅時効が定められているため注意が必要です。

各時効が心配な場合は、裁判上の請求や時効中断申請等の措置をとる必要があります。

交通事故の示談を弁護士に依頼するメリット

弁護士が示談交渉を受任した場合、専門家として様々なサポートを行うことができます。

弁護士法人オールイズワンに示談交渉をご依頼いただいた場合は、将来的な手術費や介護費等イレギュラーな費用も踏まえ、全ての費目を裁判基準で算定の上、一切の交渉を引き受けさせていただきます。

まとめ

以上、本記事では交通事故における示談交渉について解説いたしました。保険会社の担当者は百戦錬磨のプロです。そのため、被害者の方が直接交渉を行うのはとても骨の折れる作業です。

弁護士法人オールイズワンは、交通事故事件の解決を主業務として長年取り組んでまいりました。その経験から、示談交渉に関して適切なアドバイスやサポートを提供することが可能です。交通事故における示談に係る諸問題でお困りでしたら、当事務所までお気軽にご相談ください。