交通事故で車椅子生活になった場合の後遺障害等級と慰謝料について
交通事故で怪我をした後、リハビリを続けても重い障害が残り、車椅子生活を余儀なくされてしまうこともあります。
車椅子が必要な状態になると、仕事や日常生活に支障をきたすだけでなく、将来的にもさまざまな費用がかかるため、今後の生活への不安や心配が大きくなってしまうことでしょう。
このような不安や心配を少しでも軽減するためには、後遺障害の認定を受け、慰謝料などの賠償金を適正に受け取ることが大切です。
この記事では、交通事故で車椅子生活になった場合の損害賠償請求に関する基本的な知識や、認定される可能性がある後遺障害等級、慰謝料の相場などについて解説します。
交通事故で車椅子生活になってしまうケース
交通事故による怪我の中には、足の怪我以外にも、歩行機能に障害をきたす原因となるものがいくつかあります。
車椅子生活に至る可能性がある主なケースは、以下のとおりです。
脳の損傷
頭部に強い衝撃を受けると、脳挫傷やびまん性軸索損傷などで脳の一部を損傷し、下肢に麻痺が残ることがあります。
胸腹部臓器の損傷
胸部や腹部に強い衝撃を受けて臓器を損傷した場合、心肺機能の低下などにより、自力歩行が困難となることがあります。
脊髄の損傷
首や背中、腰に強い衝撃を受けた場合、脊髄を損傷して下肢に麻痺が残ることがあります。
足の切断
足の切断を余儀なくされた場合、欠損が生じた範囲によっては歩行不能となることがあります。
折れた骨がうまくつながらず、常に硬性保護具が必要な状態になると、自力歩行が困難となることがあります。
足の関節の用を廃した
股、膝、または足首の関節が強直するなどして十分に動かなくなった場合、自力歩行が困難となることがあります。
車椅子生活になった場合に認定される可能性がある後遺障害等級
交通事故による怪我が原因で車椅子生活になった場合、障害の部位や程度に応じて、以下の後遺障害等級に認定される可能性があります。
| 後遺障害等級 | 障害の内容 |
|---|---|
| 1級1号(要介護) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
| 1級2号(要介護) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
| 2級1号(要介護) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
| 2級2号(要介護) | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
| 1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失つたもの |
| 1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
| 2級4号 | 両下肢を足関節以上で失つたもの |
| 3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
| 4級5号 | 一下肢をひざ関節以上で失つたもの |
| 4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
後遺障害等級には1級~14級の14段階があり、5級以下の後遺障害でも車椅子生活になることはあり得ます。もっとも、実務上は4級以上の後遺障害に該当するケースで車椅子生活となる可能性が高い傾向にあります。
車椅子生活になった場合に請求できる慰謝料の相場
後遺障害に認定されると、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料も請求できます。
どちらの慰謝料にも自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3種類の算定基準があり、どの基準を用いるかによって金額が異なることに注意が必要です。
ここでは、交通事故で車椅子生活になった場合の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料について、それぞれ慰謝料の相場をご紹介します。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故による怪我で、入通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する損害賠償金です。その金額は、治療期間に応じて算出されます。
車椅子生活に至るケースでは、怪我の程度が比較的重いため、治療期間はリハビリ期間も含めて6ヶ月~1年以上かかることが多いです。
以下では、3つのケースを例として、入通院慰謝料の目安を掲げておきます。なお、通院期間中は3日に1回のペースで通院したものとします。
| 入通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 2週間入院後、6ヶ月通院 | 63万6,400円 | 131万4,000円 |
| 1ヶ月入院後、9ヶ月通院 | 103万2,000円 | 170万円 |
| 1年入院 | 120万円(上限) | 321万円 |
自賠責保険では、傷害に関する賠償金は総額で120万円が上限とされています。そのため、重傷のケースでは慰謝料を満額受け取れないこともあります。
なお、任意保険基準による慰謝料の計算方法は非公開のため不明ですが、入通院慰謝料については、自賠責基準よりも少し高い程度で、弁護士基準よりは大幅に低い金額となることが多いです。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級ごとに目安が定められています。車椅子生活になった場合に該当する可能性が高い後遺障害等級ごとに、後遺障害慰謝料の目安を掲げると、次のようになります。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級1号(要介護) 1級2号(要介護) |
1,650万円 | 2,800万円 |
| 2級1号(要介護) 2級2号(要介護) |
1,203万円 | 2,370万円 |
| 1級5号 1級6号 |
1,150万円 | 2,800万円 |
| 2級4号 | 998万円 | 2,370万円 |
| 3級3号 | 861万円 | 1,990万円 |
| 4級5号 4級7号 |
737万円 | 1,670万円 |
任意保険基準では、基本的に後遺障害慰謝料は自賠責基準とほぼ同額になります。
慰謝料以外に請求できる賠償金
交通事故の損害賠償金は、慰謝料だけではありません。車椅子生活になってしまった場合は、以下の賠償金も適正に請求しましょう。
逸失利益
逸失利益とは、交通事故で負った後遺障害のために労働能力が低下し、将来の収入や利益が減少することに対する賠償金のことです。
具体的な金額は、次の計算式によって算出されます。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
基礎収入とは、被害者の事故前年の年収のことです。労働能力喪失率は後遺障害等級に応じて、労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数は被害者の年齢に応じて定まります。
一例として、被害者が40歳で、基礎収入が500万円のケースで、3級3号の後遺障害に認定されたとすれば、逸失利益は9,163万5,000円程度です。
(計算式)500万円×100%×18.327=9,163万5,000円
車椅子生活に要する費用
交通事故が原因で車椅子生活を余儀なくされた以上、車椅子の購入費や買い換え費用は加害者へ請求できます。
買い換え費用については、車椅子を耐用年数ごとに買い換えるものとして、平均余命までに必要となる金額の請求が可能です。車椅子の耐用年数は、一般的に6年程度と考えられています。
その他にも、車椅子で生活するために必要な自宅の改修費用や、車の改造費なども加害者へ請求可能です。
将来の治療費や介護費
重度の後遺障害を負ったケースでは、将来の治療費や介護費を加害者に請求できる場合もあります。
例えば、脳の損傷で寝たきりになった場合には、症状の悪化を防ぐための治療費や、将来にわたる介護費の請求が認められます。
介護は不要なケースでも、人工関節の再置換術が定期的に必要な場合などでは、将来の治療費を請求することが可能です。
傷害に関する賠償金
後遺障害に関する賠償金の他に、治療期間中に生じた損害に対する賠償金(傷害に関する賠償金)を適正に請求することも重要です。
傷害に関する賠償金の主な項目として、以下のものが挙げられます。
- 入院費
- 入院雑費
- 入通院交通費
- 付添看護費
- 休業損害
いずれも、保険会社から提示される金額は不当に低い可能性がありますので、弁護士にご相談の上、適正な金額を確認した方がよいでしょう。
交通事故で車椅子生活になった場合の損害賠償請求における注意点
保険会社との示談交渉で損をしないためには、以下の点に注意する必要があります。
十分な治療とリハビリを受ける
まず、医師が症状固定と判断するまでは定期的に通院し、十分な治療とリハビリを受けましょう。
途中で治療をやめると、治療期間が短くなるため、入通院慰謝料が本来の金額よりも少なくなってしまいます。
また、治療期間が短い場合や通院頻度が低い場合は、障害の程度が実際よりも軽いと判断されやすくなり、後遺障害等級認定の審査で不利になるおそれがあるので、注意が必要です。
適正な後遺障害等級の認定を受ける
後遺障害に認定されるかどうか、何級の後遺障害に認定されるかによって、慰謝料や逸失利益の金額が大きく変わります。
適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、まず、後遺障害診断書が発行されたときに、その記載内容を確認しましょう。
後遺障害診断書は、審査で最も重要視される書類です。記載内容が不足していたり、不適切であったりする場合には、医師に修正や再発行を依頼すべきです。
また、障害の内容によっては、後遺障害等級認定の申請を保険会社に任せず、被害者請求の方法によった方が有利となることもあります。申請前に一度、弁護士に相談して専門的なアドバイスを受けた方がよいでしょう。
将来の損害に対する賠償金を適正に請求する
将来の治療費や介護費、車椅子の買い換え費用などは、保険会社が認めなかったり、不当に低い金額を提示したりすることが多い賠償項目です。
示談交渉では保険会社の言うことを鵜呑みにせず、弁護士に相談してみることをおすすめします。
慰謝料を弁護士基準で請求する
慰謝料を弁護士基準で算出すれば、保険会社の提示額よりも高くなることがほとんどです。治療期間が長く、後遺障害の程度が重いほど、その開きは大きくなります。
ただし、被害者自身が慰謝料を弁護士基準で請求しても、保険会社が容易に応じることはありません。弁護士基準による慰謝料を受け取るためには、示談交渉で弁護士のサポートを受けることが重要となります。
車椅子生活になった場合の損害賠償請求を弁護士に依頼するメリット
交通事故で車椅子生活になってしまった場合の損害賠償請求を弁護士に依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 治療やリハビリを適切に受けるためのアドバイスが受けられる
- 後遺障害診断書の記載内容を確認してもらえる
- 必要に応じて、後遺障害診断書の修正や再発行を医師に依頼してもらえる
- 後遺障害等級認定の申請手続きを一任できる
- 慰謝料を弁護士基準で請求してもらえる
- 将来の損害も含めて賠償金を適正に請求してもらえる
- 保険会社との示談交渉から必要に応じて裁判まで代行してもらえる
このように、弁護士の全面的なサポートを受けることにより、適正な後遺障害等級を獲得し、納得のいく賠償金を受け取ることが期待できます。
まとめ
交通事故による後遺障害で車椅子生活になってしまうと、元の生活に戻ることは難しいのが実情です。それだけに、せめて賠償金は適正な金額を受け取るべきです。
しかし、保険会社の言うことを鵜呑みにして示談に応じると、不当に低い賠償金で泣き寝入りすることにもなりかねません。後悔しないためにも、一度、交通事故に強い弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けた方がよいでしょう。
弁護士法人オールイズワンは、交通事故の被害者の味方として、特に後遺障害に強い法律事務所です。重度の後遺障害に関する事案を解決に導いてきた実績も数多くありますので、交通事故で車椅子生活を余儀なくされてお困りの方は、お気軽にご相談ください。


