死亡事故の慰謝料と相続はどうなる?請求権と示談の注意点

死亡事故の慰謝料と相続はどうなる?請求権と示談の注意点

交通事故によって被害者が死亡した場合、加害者に対する慰謝料請求権や損害賠償請求権は被害者の相続人が行使することになります。相続人は複数存在するケースが多く、それぞれの相続分配にも違いがあるため、場合によっては相続争いなどのトラブルに発展することも考えられます。

この記事では、交通事故で被害者が亡くなった場合の慰謝料について、相続対象や分配、相続人間で示談方針が合わない場合の対処法を解説していきます。

死亡事故の慰謝料は誰に相続されるのか

交通事故によって被害者が亡くなった場合、死亡慰謝料などを請求する権利である「慰謝料請求権」は相続の対象になります。死亡事故では被害者本人が慰謝料請求権を行使できないため、相続人である被害者の遺族が行使します。

交通事故の慰謝料には、被害者本人に対する慰謝料と、被害者を亡くした遺族に対する慰謝料の2種類があります。後者は、相続するまでもなく元々相続人の権利です。ここでは、被害者本人の慰謝料請求権について誰が相続人になるのか説明します。

被害者への慰謝料の相続

被害者に対する慰謝料の場合、相続人になれる対象者とその順位は以下のとおりでです。すなわち、配偶者がいる場合は、配偶者は常に1番手の相続人となります。子や直系尊属は、以下の順で配偶者ととともに相続人となります。配偶者がいない場合は、子、直系尊属、兄弟姉妹が順に相続人となることになっています。

【配偶者がいる場合】

順位 相続の対象者
1位 配偶者

【血族相続人】

順位 相続の対象者
1位
2位 直系尊属(父母・祖父母)
3位 兄弟姉妹

遺族への慰謝料の請求権者

交通事故によって被害者が亡くなった場合、その遺族は大きな精神的損害を被ると考えられます。民法第711条では、以下のように定められています。

「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」
引用:電子政府の総合窓口(e-Gov)『民法』(第711条)

遺族への慰謝料の場合、その請求権者になるのは被害者の父母、配偶者、子です。被害者本人に対する慰謝料では兄弟姉妹も対象になりますが、遺族に対する慰謝料では原則として対象外とされています。

ただし、必ずしも条文通りの限定的な範囲のみが請求権者になるとは限りません。たとえば、親代わりに被害者の面倒をみていた祖父母や兄弟姉妹がいた場合、父母と同等の関係性があるとみなされ、相続人として慰謝料請求権を有する可能性があります。

なお、慰謝料請求の可否や金額に関しては、請求権者各々の事情に応じて決められます。

交通事故の慰謝料の相続分配

交通事故の慰謝料は、相続人同士の争いが起きないよう民法によって相続分配が定められています。これを「法定相続分」といいます。

慰謝料の法定相続分は、以下のように定められています。

【配偶者がいる場合】

配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
1
1/2 1/2
2/3 1/3
3/4 1/4

【配偶者がいない場合】

直系尊属 兄弟姉妹
1
1
1

被害者に対する慰謝料は、対象となる相続人へ上記のように分配されるのが基本です。ただし、必ずしも法定相続分に従って相続を分配する必要はなく、被害者の遺言があればそれに従い、相続人間の話し合いによって自由に分配を決めることも可能です。

なお、各相続対象が複数人いる場合(子が3人など)は、人数に応じて均等に分配されます。たとえば、被害者の子が1/2を相続するケースで対象者が3人いる場合、1/2を3等分した1/6の金額が1人ずつに相続されることになります。

相続人の間で慰謝料の示談方針が合わない場合

損害賠償請求権を有する相続人が複数人いる場合、相続の方針に関して食い違いが出る可能性があります。相続人の間で示談方針が合わない場合は、以下のような方法で解決していくことになるでしょう。

保険会社へ個別で示談交渉する

交通事故の慰謝料は、原則として法定相続分に従って分配・相続されます。相続人同士の話し合いで分配する「遺産分割」を経ずに相続されるため、相続人全員の同意を得る必要はなく、一部の相続人が保険会社と個別に示談することが可能です。

ただし、親族の相続争いに巻き込まれたくない保険会社は、一部の相続人だけとの示談交渉は嫌がる傾向があります。よって、相続人全員の同意がなければ示談できないケースも多いのが現状です。

交通事故の加害者に対して個別で訴訟を起こす

相続人同士で折り合いがつかず、保険会社への個別示談も難しい場合、加害者に対して個別で訴訟を起こすことになるでしょう。相続対象者が複数人いるとこのような相続争いになる可能性があるため、泥沼化しないうちに早めに弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

交通事故で被害者が亡くなった場合、加害者に請求する慰謝料は相続の対象となります。死亡事故では被害者の配偶者や子、直系尊属などが相続人となり、法定相続分に従って相続を分配していくのが一般的です。ただし、被害者が遺言で相続分配に関して明記していた場合は、その意向に沿って分配することもあります。

相続人間で示談方針の折り合いがつかない場合は、個別の示談交渉や訴訟に発展するケースもあります。当人同士の話し合いでうまくまとまらない場合は弁護士に相談し、早めの解決を目指しましょう。

弁護士法人オールイズワンの取組

本来、死亡慰謝料についてより高額の認定を受けるべきことについて、相続人間の利害は一致しているはずです。したがって、示談交渉は、相続人全員で死亡事故に強い弁護士に頼んで、獲得した金額の分配はその後に話し合うのが合理的です。

また、ご事情によっては、法定分相続分どおりに相続することがかえって不公平に感じられることも少なくありません。そのような場合には、相続分譲渡等法定の均分相続によらない解決方法もあります。

死亡事故を多数扱ってきた弁護士法人オールイズワンは、示談交渉による死亡慰謝料の獲得に加え、獲得した賠償金を相続人間でどのように分けるかといった問題にも通じています。どうか悩まれず、まずはご相談下さい。