交通死亡事故の過失割合で損をしないために知るべきこと

交通死亡事故の過失割合で損をしないために知るべきこと

交通事故には単独の自損事故と、人を轢いたり車同士で衝突したりといった複数人が関与する事故があります。後者は事故の責任が加害者と被害者の双方に認められることがあり、この場合、過失相殺がなされ賠償金が一定の割合で減額されます。この割合を過失割合といいます。

交通死亡事故の場合、被害者は既に亡くなっているため、加害者の証言が過失割合に強く影響するケースが多くなります。そのため、遺族が受け取れる賠償金は過失割合に応じて減額されてしまうことがよくあります。

そこで、本記事では、交通死亡事故の過失割合の決まり方や賠償金額への影響、賠償金の減額を防ぐ方法などについて解説します。

死亡事故の賠償金は過失割合によって大きく変わる

交通死亡事故の賠償金は、一般的に多額になります。低めに見積もっても総額で数千万円になるケースが多くなります。そのため、過失割合が数パーセント増えただけで、遺族が受け取れる賠償金額は大きく変わります。例えば、賠償金が5,000万円で過失割合が10%の場合には500万円減額されてしまいますが、過失割合が20%の場合には1,000万円も減額されてしまうことになります。

また、自賠責保険には重過失減額という仕組みがあり、被害者の過失割合が70%以上であれば保険金が減額されます。具体的には、70%以上で20%、80%以上で30%、90%以上で50%の減額となります。

このように交通死亡事故の損害賠償請求では、過失割合によって賠償金は大きく変わるため、ご遺族の方は、「過失割合はどのようにして決まるのか」、「賠償金にどんな影響があるのか」ということについて知ることが大切になります。

過失割合は誰がどのように決めるのか

「過失割合は警察が決めるのでは?」とお考えになる方がいますが、警察は民事事件に介入することはありません。警察は事故直後に現場に来て、実況見分をおこない事故の状況を記録として残しますが、対応はそこまでになります。

交通事故の過失割合は、本来なら被害者と加害者との話し合いによって決まりますが、事故の当事者(被害者と加害者)双方に過失がある場合、それぞれの保険会社の担当者同士の話し合いで決まります。そして、保険会社から被害者側に過失割合が伝えられることになります

保険会社が提示する過失割合は必ずしも適正とは言えないケースが多いと言えます。弁護士に相談して適切な過失割合を認定してもらうためにサポートを受けるのが良いでしょう。

死亡事故の過失割合は加害者の主張が通りやすくなる

交通死亡事故では、被害者は亡くなっているため、事故の状況について詳しく説明できるのは加害者のみになります。事故の直後、警察は「実況見分調書」という事故の記録を作成しますが、そこには加害者の言い分が強く反映された調書が作成されるケースが多くなります。

保険会社は、その実況見分調書をもとに過去の死亡事故の判例と照らし合わせて、過失割合を決めます。そうなると、加害者に有利な過失割合が作り出されることになるため、当然ながら、ご遺族が受け取れる賠償金は低い金額になります。

このように死亡事故においては、目撃者情報や映像による証拠が存在しなければ、被害者のご遺族は不利な示談を強いられることがあります。そのため、保険会社が提示する過失割合に疑問を感じたら、実況見分調書を取り寄せて分析をおこなったり、加害者(保険会社)の言い分に無理がないかを精査するなどの対応が必要です。

交通死亡事故の過失割合を決める3つの要素とは?

交通死亡事故の過失割合を決めるポイントは、大きく分けて「事故状況」、「法律(道交法など)」、「裁判例」の3つが重要になってきます。

事故の状況

過失割合はまず事故の状況を判断基準とします。人身事故の場合、警察は事故状況の記録である「実況見分調書」という書類を作成します。これは、事故当事者立ち会いのもとに作成され、「供述調書」、「現場見取り図」、「写真」などが合わせて記録として残されます。そして、この事故の実況見分調書をもとに類似の事故判例と照らし合わせて、過失割合の判断基準とします。

法律(刑法、道路交通法)

法律とは、刑法や道路交通法などの定めのことです。交通事故では、危険運転や信号無視などの法律違反行為を働いた場合、運転者の過失の割合はそれだけ大きいものとされます。また、このような違反行為による事故は慰謝料も増額になる傾向が強まります。

裁判例

裁判例とは、過去に起きた類似事例における裁判所の判断です。判例タイムズが発行している「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本に、過去の裁判例をもとに事故の状況ごとにパターンを分類した過失割合が紹介されています。保険会社は過失割合を決める際に、これ基準にしつつ、さらに修正要素の有無を判断します。

過失割合を適切に認定してもらうために用意すべきもの

死亡事故で保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合、適切な認定に向けた立証が必要になります。用意すべきは大きく分けて、映像・書類・証言の3つの証拠です。

映像証拠(ドライブレコーダー、防犯カメラの映像)

交通事故の示談交渉や裁判では当事者双方の主張が食い違い、水掛け論になることがあります。そうしたときに録画した映像証拠があると、事故当時の状況が明らかになります。よく用いられるのはドライブレコーダーや防犯カメラの映像です。まずは加害者の車両にドライブレコーダーが取り付けられていないか、事故現場周辺に防犯カメラが設置されていないかの確認をしましょう。

書類資料(実況見分調書、供述調書)

過失割合が適切であるかどうかを確認するために実況見分調書の確認が必要です。この実況見分調書は被害者のご遺族も入手することができます。まずは警察署に「加害者の送致日」、「送致された検察庁」、「送致番号」を確認します。そして、検察庁にそれらの情報を伝えて実況見分調書の閲覧、謄写の予約をおこない、指定日に出向けばそれを閲覧・コピーできます。

目撃者の証言(人的資料)

事故の当事者だけでなく、目撃者や関係者の証言は重要な証拠になります。例えば、目撃者による「加害者の信号無視を見た」、「加害者が事故の前に居酒屋で飲酒しているところを見た」などの事実の証言は、過失割合の認定にも大きな影響を与えます。目撃者探しで警察が動いてくれない場合には、独自に証拠を集める必要がでてきます。

過失割合で納得できなければ修正を主張して交渉をすること

前述のように、死亡事故の過失割合は加害者側が有利になるケースが多くあります。また、保険会社は、過失割合を決める際、「支払う保険金を少なくしたい」という営利企業としての判断も加えるため、被害者側の過失を大きめに見積もることがあります。

しかし、このような保険会社が提示する過失割合は最終決定ではありません。提示された過失割合に疑義が生じた場合には、遺族の方は証拠を集めるなどして、しっかりと主張して交渉を行う必要があります。

交通死亡事故を弁護士に依頼するメリットとは

保険会社との過失割合の話し合いでは、双方の主張が平行線になってなかなか決まらないケースが少なくありません。遺族の方にとって、身内を亡くして悲しみの底にいる中で、加害者や保険会社の担当者との交渉は大きな負担になります。

そこで、死亡事故の過失割合に関してお困りであれば、弁護士への相談をおすすめします。弁護士に依頼するメリットとして以下のようことがあげられます。

  • ・死亡した被害者・遺族に代わって証拠の収集
  • ・加害者の証言の矛盾点を分析
  • ・保険会社が提示した過失割合への反論
  • ・加害者(保険会社)との示談交渉
  • ・刑事責任に関するアドバイス
  • ・刑事裁判への対応

また、損害賠償請求においては、弁護士が事件に関与することで、「裁判所基準」という賠償基準を採用しますので、賠償金や慰謝料の大幅な増額が見込めます。

まとめ

加害者(保険会社)との示談交渉において、過失割合を巡るトラブルは珍しくありません。しかし、賠償金の減額を狙う保険会社との交渉は、遺族の方だけでは難しいものといえます。もしも保険会社の提示してきた過失割合に納得できないのであれば、弁護士に相談することを強くおすすめします。

弁護士法人オールイズワンは、交通死亡事故の過失割合に関する交渉について、実績・経験ともに豊富です。交通事故に強い弁護士が被害者遺族の方を万全な体制でフォロー・サポートいたします。過失割合についてお悩みがある場合には、できるだけ早めにご相談ください。