高次脳機能障害SOS

高次脳機能障害の日常生活状況報告書の書き方と注意点

高次脳機能障害の日常生活状況報告書の書き方と注意点

自賠責における後遺障害の等級審査は、書面主義を原則として執り行われます。そのため、障害を立証するための根拠は、漏れなく診断書等の書面や検査結果に落とし込む必要があります。

高次脳機能障害についても、書面主義の原則に則り審査されることになります。しかしながら、高次脳機能障害は目に見えない障害です。それ故に障害の実態を立証することは容易ではなく、その結果、しかるべき等級が認定されないというケースが多々見受けられます。

そこで、本記事では、高次脳機能障害の等級審査において勘所となる「日常生活状況報告書」について説明します。

日常生活状況報告書とは

日常生活状況報告書は、その名称のとおり被害者の生活ぶりを報告するための書面であり、これにより交通事故受傷に起因してどれだけの支障が生じているか伝えていきます。

高次脳機能障害の被害者は、病識の欠如により自身の状態を自ら説明できないことが多いため、被害者のご家族や近親者等が作成することになります。

日常生活状況報告書は、例えば頚部痛や腰痛等による支障の報告に用いることがありますが、審査における重要度は医師が作成する書面に劣ります。

しかし、こと高次脳機能障害の審査にあたっては、医師が作成する「頭部外傷後の意識障害についての所見」及び「神経系統の障害に関する医学的意見」と並び、非常に重視されます。

なぜならば、医師は診察にあたる短い時間における被害者の状態しか確認することができず、それ以外の多くの時間での生活状況が、等級審査上、極めて重要な情報だからです。

日常生活状況報告書の書き方のポイント

日常生活状況報告書1

日常生活状況報告書2

高次脳機能障害を立証するための日常生活状況報告書は、上掲の「日常生活状況報告」という書式を用いて、被害者本人と生活を共にする配偶者や親、子等が作成します。
家族が交通事故で意識不明になった場合の対処法

形式は、0~4の5段階若しくは該当なしで程度を評価し〇を付ける選択欄と自由記載欄の複合式となっています。

日常生活上の様々な行為について問われていますので、被害者の実情をしっかりと把握し、基本的にはあるがままに記載すれば良いのですが、抑えなければならないポイントが2点あります。

1点目は「検査結果との整合性」です。例えば、知能検査において言語理解指標が高めなのに、言葉による指示を理解できない旨を強調してしまうと矛盾が生じてしまいます。

もちろん、神経心理学検査の結果は絶対ではなく、かかる矛盾が必ずしも不自然なわけではありません。しかしながら、こと等級審査においては不利な評価を受けてしまう可能性があるため注意が必要です。

2点目は「事故前後の変化」です。元来の能力が高かった場合や神経心理学検査における能力低下が鈍い場合等では特に、この点をしっかりと伝えなければなりません。

高次脳機能障害の審査は書面主義にて執り行われますので、書面上に記載のない障害については無いものとして取り扱われてしまいます。このことを念頭に置いて日常生活状況報告を作成してください。

自賠責に伝えたいことは別紙で意見書を提出することが効果的

「日常生活状況報告」はA3用紙2枚にわたる書式であり、一見、支障の報告には十分であるように見えます。しかしながら、高次脳機能障害の多岐にわたる障害内容を余すことなく伝えるには、実際には不十分である場合が多いです。

そこで、規定書式では伝え切れない内容は「別紙」の形で報告する方法があります。別紙を添付する場合、自由な書式で作成することができますが、五月雨式に伝えたいことを書き連ねてしまうと、審査の担当者に真意が伝わりません。

そのため、審査の要点を理解した上、それに沿ったものを作成する必要があります。例えば、労災保険のおける高次脳機能障害の審査では4つの能力(意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、及び社会行動能力)に主眼を置きますが、これらを骨子としてまとめていくのは効果的です。

この中で、日常生活上の支障のほか、就労上の支障、学生生活上の支障等を報告していきます。なお、日常生活状況報告はご家族等が作成するケースが多いですが、ご家族の視点からは仕事上や学生生活上の実情までは窺い知れないことがあります。

そのような場合は、職場の同僚や教師等の力を借り、更に別途報告書を作成する方法も考えられます。

日常生活状況報告書の書き方を弁護士がサポート

以上のとおり、高次脳機能障害による支障を過不足なく報告することは、等級審査において非常に重要な意味を持ちます。

特に、知能検査等では可視化し難い持続力・持久力や社会行動能力については、具体的なエピソードを踏まえた報告をする意味合いは大きいです。

弁護士法人オールイズワンでは、高次脳機能障害を負った被害者の方を数多くサポートしてまいりました。その経験から、検査結果だけでは埋没してしまいがちな被害者の方の実情を、余すことなく伝えられるようお手伝いいたします。

また、その他医師への医証依頼のフォローや後遺障害の等級申請、示談交渉等、解決までしっかりとサポートすることができます。高次脳機能障害に係る諸問題でお困りのことがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。