家族が交通事故で意識不明になった場合の対処法

家族が交通事故で意識不明になった場合の対処法

交通事故により脳に損傷を受け意識不明の重体になってしまったら、長期間の入院治療を余儀なくされ、回復したとしても後遺障害が残るケースがほとんどです。
不幸にも大切なご家族が交通事故により意識不明の重体になってしまった場合、被害者の社会復帰を目指すためにも、まずは適切な賠償金を獲得し治療を受け続けることが大切です。

この記事では、被害者のご家族の負担を少しでも軽減できるよう、交通事故で意識不明になった場合の対処法について詳しく解説していきます。

意識不明はどのような状態

交通事故などで外部からの強い衝撃により脳がダメージを受けることにより「意識障害」が生じます。医学的に、意識障害には様々なレベルがありますが、ここでは、外部から痛みを伴う刺激を加えないと覚醒しない状態を意識不明としてお話しします。なお、交通事故などで頭に強い外力が加わり、頭の皮膚や頭蓋骨、脳の損傷を受けたことを「頭部外傷」、外力により脳の組織が破壊された状態を「外傷性脳損傷」と言います。

意識不明を引き起こす頭部外傷には、脳挫傷や脳内出血が原因の「局所性」のものと脳震盪や軸索損傷が原因の「びまん性」のものがあります。局所性のものは脳の一部が損傷された状態を指し、びまん性のものは脳全体に損傷が及んでいる状態を指しますが、損傷部位や継続期間によって失語、失行、記憶障害など様々な障害が現れます。

意識不明の状態が続けば、症状の軽いものから、何度も居眠りをしてしまう「過眠」、病的に意欲が低下、ないし喪失した状態の「無為」、自発的な行動や言葉が無い「無動無言」、認識能力がひどく障害される「最小意識」、生命維持に必要な脳幹は機能しているが「植物状態」、全ての脳機能が回復不能と認められた「脳死状態」となってしまいます。

意識が戻っても後遺障害が残るケースがある

交通事故で一時的に意識不明に陥ったとしても、幸い意識が戻ることもあります。しかし、脳損傷は回復が難しく、意識不明の状態が6時間以上続くと、たとえ意識が回復したとしても後遺障害が残る可能性があります。また、目立つ外傷がない場合は外見上では回復したように見えるため、被害者家族は交通事故による意識不明が原因で後遺障害が発症していると気づかないケースも多くあります。

意識不明が長期化し、3か月以上続く場合は重度の昏睡状態を指す「遷延性意識障害(植物状態)」と診断されることになります。また、衝撃が特に強いとされる交通事故が原因で意識不明に陥った場合、たとえ意識を回復したとしても「高次脳機能障害」が残るケースが非常に多いです。
交通事故で意識障害が生じた場合は危険な状態であることが多いので、速やかにその原因を明らかにし、適切な治療を開始する必要があります。

被害者が意識不明の場合は保険会社とだれが交渉するの?

交通事故の被害者が意識不明の重体となってしまった場合、自ら加害者や保険会社に対して損害賠償請求することができないため、一般的には被害者の代わりにご家族が保険会社と交渉することになります。
被害者が未成年の場合を除き、家族が代理で保険会社と交渉するためには「代理権」を授与する「成年後見人」を家族の誰かに選任する必要があります。

交通事故と成年後見人制度

成年後見人制度は、認知症や知的障害等により判断能力が著しく低下した人の財産を保護するための制度です。
成年後見人は家庭裁判所に申し立てることで選任できます。成年後見人には被害者の親族がなることもありますが、多額の賠償金を受け取ることとの関係上、家庭裁判所が弁護士などの法律の専門家を後見人にすべきと判断することもあります。
交通事故で意識不明になると、後遺障害が残る可能性が非常に高く、事故後、契約など日常生活のあらゆる場面で法律行為が必要となります。そのため、早めに成年後見人の選任申立を行う必要があります。

なお、被害者が未成年の場合は、法律により親権者(父・母)に代理権が定められていますので成年後見人を選任しなくても法律行為を行うことができます。親権者の方がいない場合は、他のご親族や弁護士等専門家が未成年後見人となります。

被害者の意識が戻らない場合の認定要件と後遺障害等級

交通事故で意識不明になった場合に後遺障害が認められるためには、頭部外傷後の「意識障害の継続」が必要です。交通事故で意識不明の重体になった場合の後遺障害等級認定は、画像所見より意識障害の継続が重要とも言われています。
具体的には、事故後に開眼・応答なし(半昏睡又は昏睡)の状態が6時間以上継続すること、もしくは健忘症又は軽度意識障害が一週間以上継続することが認定条件です。

いずれかに該当する場合は、「高次脳機能障害」が対象となる後遺障害等級が認定される可能性が高いと言えます。また、「遷延性意識障害」が発症した場合は、労働能力が100%喪失したものとして後遺障害等級の中で最も重い1級1号(要介護)が認められます。

遷延性意識障害で認められる後遺障害等級と慰謝料

  • 1級1号(要介護):慰謝料1,600万円(自賠責基準)・2,800万円(弁護士基準)

高次脳機能障害で認められる後遺障害等級と慰謝料

  • 1級1号(要介護):慰謝料1,600万円(自賠責基準)・2,800万円(弁護士基準)
  • 2級1号 (要介護):慰謝料1,163万円(自賠責基準)・2,370万円(弁護士基準)
  • 3級3号 :慰謝料829万円(自賠責基準)・1,990万円(弁護士基準)
  • 5級2号 :慰謝料599万円(自賠責基準)・1,400万円(弁護士基準)
  • 7級4号 :慰謝料409万円(自賠責基準)・1,000万円(弁護士基準)
  • 9級10号:慰謝料245万円(自賠責基準)・690万円(弁護士基準)

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近親者(家族)にも後遺障害慰謝料が認められている

遷延性意識障害と重度の高次脳機能障害は、交通事故の後遺症の中でも重篤な後遺障害のひとつであり、症状固定後も介護を必要とするケースが多くあります。そのため、被害者を支える近親者も多大な精神的苦痛を受けることから、被害者同様に近親者にも精神的苦痛に対する損害賠償請求が認められています。

意識不明が続く場合はいつ症状固定にすれば良いのか?

症状固定とは、治療をこれ以上続けても大きな改善が見込めない状態をいいます。交通事故の傷害に対する慰謝料(治療費・入通院慰謝料・休業損害・交通費など)を請求できるのは症状固定の時までです。
最終的な症状固定の判断は医師が行いますが、一般的には症状固定の日程については医師と患者(被害者)で判断することになります。事情により早期に症状固定にすれば早く慰謝料を受け取ることができますが、その分請求できる慰謝料額が減ってしまいます。そのため、保険会社は症状固定を急ぐ傾向にありますので注意が必要です。

交通事故被害者の約9割は1年3か月(15か月)までに症状固定としています。一般的に意識障害の治療やリハビリは意識レベルの改善が見込まれるケースが多いので、症状に応じて半年~1年3か月程度を目安に、医師と相談しつつ慎重に症状固定日を決めれば良いと思います。

交通事故で家族が意識不明になったら弁護士に相談

ご家族が交通事故で意識不明になった場合に弁護士に依頼する一番のメリットは賠償金の金額が増大することです。
被害者やご家族の方だけで保険会社と交渉した場合には、自賠責基準や任意保険基準などの非常に低い慰謝料額しか提示されません。つまり、弁護士に依頼しない場合は、精神的苦痛に対する十分な慰謝料が提示されないということです。

弁護士に依頼した場合は、交通事故の過去の判例を基に計算した裁判所基準(弁護士基準)を用いて計算するため、交通事故における損害賠償額の計算方法の中で最も高い適正な賠償金額を獲得できます。
請求できる慰謝料には後遺障害慰謝料以外に、「治療費」「入通院慰謝料」「休業損害」「付添看護費」「交通費」「入院雑費」「家屋・車改造費」「引っ越し費用」「逸失利益」「慰謝料(近親者)」「成年後見人の選任申立費用」があります。
高次脳機能障害や遷延性意識障害に対する慰謝料を裁判所基準で計算すると、自賠責保険基準と比べて3倍以上の差がつくケースも多くあります。

まとめ

症状固定後も重篤な後遺障害が残る場合、被害者の社会復帰や介護のためには多額の費用が必要になりますが、意識不明などの障害を生じさせた重大事故に対する保険会社の対応は目に余るものがあります。最終的な賠償金額を正当なものにするために、弁護士が介入することでようやくまともな金額が提示されるのが現状です。

大切なご家族に適切な治療を受けさせるためにも、適正な等級を獲得して金銭的負担をなくすためにも、まずは弁護士に相談してみてください。的確なアドバイスが得られて、不安やストレスを軽減していただくことができるとともに、被害者の回復のために一歩前進できるはずです。
ご家族が交通事故による意識不明でお悩みの場合には、弁護士法人オールイズワンにご相談ください。