高校生の自転車事故による足の指の欠損と機能障害で9級を取得し、3,616万円で示談解決した事案
高校生の自転車事故による足の指の欠損と機能障害で9級を取得し、3,616万円で示談解決した事案
後遺障害内容・部位 | 左足部デグロービング損傷に伴う第1、4、5趾の機能障害(11級)と左足第2~3趾の欠損障害(12級) |
診断名・症状名 | |
後遺障害等級 | 9級相当 |
主な自覚症状 |
オールイズワンに後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い
賠償項目 | 獲得金額 |
後遺障害慰謝料 | 690万円(裁判基準) |
後遺障害逸失利益 | 3,163万円(裁判基準超)※1 |
傷害慰謝料 | 269万円(裁判基準) |
義足趾 | 157万円(裁判基準) |
靴代 | 99万円(裁判基準) |
合計 | 4,378万円(裁判基準超) |
以上について17%過失相殺により3,616万円の認定※2
※1裁判所では、女子高校生が被害者である場合の基礎収入は、大卒者の平均賃金が採用された場合でも、大卒女性の平均賃金を用いて計算されることが多いため、逸失利益は2,597万円までしか認定されない事例が多数と言えます。
高校在学中であるから女性高卒者の平均賃金が採用される場合があり、これによると、2,013万円しか認定されないことになります。
しかし、この件の交渉では、大卒男性と大卒女性の各平均賃金の中間値を採用すべきと主張し、結局これが認められて3,163万円の逸失利益が認定されました。
※2賠償金を可能な限り引き上げようという交渉の結果、裁判基準よりも3%有利な過失相殺率での示談となりました。もっとも、裁判基準では※1の後遺障害逸失利益は2,597万円となりますので、それを前提とすると、総額3,616万円での解決は過失相殺率6.2%での解決ということになります。
ご依頼の経緯
被害者のお父様が後遺障害にも示談交渉にも強い専門事務所をウェブ検索し、オールイズワンを探し当てて下さり事務所にお越しくださいました。事故から間もなく3か月が経とうとしていた頃のことでした。
〈どのような事故だったか〉
事故当時、高校生だった被害者の方が、雨天の中、傘をさして自転車で走行中、左方の路外に駐車していたトラックが突如、道路内に進入し正面から迫ってきたため、これを交わそうと必死でハンドルを右に切りましたが避けきれず衝突し、転倒した事案です。
〈どうして重症を負ったのか〉
前方500mまで容易に視認できるほど車高の高いトラックを運転しながら、被害者が自転車で近付いていることに気付かず発進したことが全てと言いたいところですが、事故の日は不運にも雨天で、傘をさしての片手運転であったため、両手運転と比べ十分なハンドル操作ができなかったことも、若い被害者が重傷を負わなければならなかった原因となったかもしれません。
〈この事案の特徴〉
症状に相応しい等級認定を受けることに成功したことから、後遺障害逸失利益の金額と過失相殺率の2点について、それぞれの裁判基準を意識しながら最も多額の賠償金を取得する方法を模索した事案でした。
結果(後遺障害部分)
(1)後遺障害診断にあたってのアドバイス
顧問医と協議の上、主治医の先生に対し、足の指の切断部位の明示に加え、腱停止部の消失や、伸筋腱癒着といった手術中の所見を足の指の可動域制限の医学的根拠として後遺障害診断書に記載して下さるようお願いしました。
また、被害者の足指は、医師に押してもらえば曲がる(他動運動)けれども自分では曲げられない(自動運動)という状態でしたので、本件では自動運動で可動域制限の等級を認定すべきであるというご意見の記載もお願いしました。
主治医の先生はいずれについても応じて下さり、理想的な後遺障害診断書が完成しました。
(2)後遺障害等級の認定
この後遺障害診断書をもとに等級申請を行ったところ、第1、第4、第5の足趾について機能障害で11級、左足第2~3足趾の欠損障害について12級が認定されました。そうすると、両者を併合して10級の認定ということになりそうですが、本件では、9級相当という認定がなされました。
本件では、足の親指と薬指と小指の3本に可動域制限が生じ、かつ、人差し指と中指の2本がなくなっており、これは、9級の後遺障害として定められている「1足の足指の全部の用(機能)を廃したもの」よりも重い障害であるということなどがその理由でした。
示談交渉の経緯
保険会社の当初の提示は、斜め横断をした被害者の過失は30%を下らないとするなど、自賠責保険から支払われた616万円の他には159万円しか支払わないというものでした。
しかしまず、被害者が道路に対して斜めに自転車を走らせたのは、突然目の前に現れたトラックを避けるためであり、「斜め横断」をしようとしたところにトラックが走ってきたわけではないことは明らかでした。
被害者の方に事故当時の記憶はありませんでしたが、この点については、警察官の作成した実況見分調書などの記録によって、丹念に立証してゆきました。
また、被害者は事故前後の記憶を失っており、日常から考えると事故の日も傘をさしていたように思うとのことでしたが、捜査資料からは、傘をさしていたのか否かが明らかとなっていませんでした。
そこで、裁判で争った場合、傘をさしていなかったと認定されることもあり得ると
いう主張も加えました。
この辺りの主張立証がうまくいったことが、実質的に過失相殺率約6%での解決を勝ち取ることができた理由だと思います。
本件は、後遺障害逸失利益の基礎収入をいかに捉えるかが最終解決金額を大きく左右するケースでした。
被害者は、事故に遭った当時まだ高校生でしたから、裁判所での戦いとなった場合でも、女性高卒者の平均賃金を基礎収入として後遺障害逸失利益が算定される場合もありました。
しかし、被害者は大学進学を希望していましたから、大卒者の平均賃金を基礎収入として後遺障害逸失利益を獲得することが一つの目標でした。
また、被害者は女性でしたが、男性との間に大きな収入格差が生じるような職業に就くとは限らず、そもそも、被害者は若く、その後50年間にもわたり性別による賃金格差が維持されるという予測が合理的でないことは明らかであると主張しました。
そのような趣旨の裁判例の存在も根拠として、本件では大卒男性と大卒女性の賃金の平均値を基礎収入として採用すべきであると展開しました。
この主張が実り、結局、当方の主張どおり、3,163万円の後遺障害逸失利益が認定されました。
慰謝料についても裁判基準満額の認定を受けることに成功し、十分な損害額が認められました。
他方で、過失割合については、相手方の斜め横断の主張排斥に成功し、傘さし運転の真偽は定かでないとの主張についても一部認められ、結局、過失相殺率17%での解決ということになりました。
その結果、過失相殺後の認定額は3,616万円となり、裁判基準を大きく上回る解決とすることができました。
所感、争点
本件解決内容の特徴は、上述したとおり、裁判基準よりも大幅に上乗せした後遺障害逸失利益が認められた点にあります。
しかし他方で、裁判所で戦った場合を考えると、ここまでの逸失利益が認定される可能性はあまり高いとは言えず、大卒者の平均賃金が基礎収入に採用されたとしても、それが大卒女性の平均賃金であれば、逸失利益として認定される金額は2,597万円どまりでした。
これを前提とすると、当然、認められる損害総額は少なくなりますから、今回の示談交渉で勝ち取った3,616万円は、被害者の過失割合を6.2%としなければたどり着けなかった数額ということになります。
このように、示談交渉の表舞台に登場してはいませんが、実は、我が子に過失があったなどということは承服しがたいというご両親のお気持ちに応えるべく、こちらにほぼ過失がなかった場合でないと辿り着けないはずの解決標準を目指すという取り組みも、オールイズワンの得意とするところです。
以上