後遺障害1級とは?主な症状や認定基準、慰謝料相場について
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【監修】 弁護士 青木芳之
/弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。
交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。
後遺障害1級は、交通事故の後遺障害等級の中で最も重い等級です。後遺障害1級に認定された場合の慰謝料は非常に高額となります。
ただし、後遺障害等級の認定を適切に受けることができなければ、賠償金で損をしてしまう可能性が高いです。そこで、後遺障害1級に該当する主な症状や認定基準を正しく知っておくことが重要となります。
この記事では、後遺障害1級に該当する主な症状や認定基準、慰謝料相場について解説します。
後遺障害1級とは
後遺障害1級とは、1級から14級までの14段階に分類された交通事故の後遺障害等級の1つであり、最も重い等級として位置づけられている後遺障害等級のことです。
具体的には、自動車損害賠償保障法施行令別表第1(要介護)で2つの症状が、同別表第2(要介護でない)で6つの症状が掲げられています。
後遺障害慰謝料の金額や、逸失利益を計算するための労働能力喪失率は後遺障害等級ごとに定められていて、どちらも1級が最も高額されています。
そのため、後遺障害1級に認定されると非常に高額の賠償金を受け取ることが可能です。
後遺障害1級に認定される症状と認定基準(要介護のケース)
後遺障害1級のうち、別表第1(要介護)に掲げられている症状と、その認定基準は以下のとおりです。
1級1号:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
交通事故で脳や脊髄を損傷して神経系統の機能または精神に著しい障害が残り、常に介護を要する状態になった場合は、後遺障害1級1号(要介護)に認定される可能性があります。
具体的な認定基準については、以下の表をご覧ください。
障害の種類 | 認定基準 |
---|---|
高次脳機能障害による精神障害 |
|
脳損傷による身体性機能障害 |
|
脊髄損傷による神経の機能障害 |
|
「麻痺」の範囲は、以下のように定義されています。
麻痺の範囲 | 定義 |
---|---|
四肢麻痺 | 4本の手足すべてが麻痺した状態 |
片麻痺 | 左右どちらかの手足が麻痺した状態 |
対麻痺 | 両腕または両足が麻痺した状態 |
「麻痺」の程度の定義は、以下のとおりです。
麻痺の範囲 | 定義 |
---|---|
高度 | 障害のある腕や足の運動性・支持性がほとんど失われ、基本動作(歩いたり、立ち上がったり、物を持ち上げて移動させたりなど)ができない状態 |
中等度 | 障害のある腕や足の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作(歩いたり、立ち上がったり、物を持ち上げて移動させたりなど)にかなりの制限がある状態 |
1級2号:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
後遺障害1級2号(要介護)の対象となる「胸腹部臓器」とは、主に呼吸器のことです。呼吸機能が著しく低下して常時介護が必要な状態になれば、後遺障害1級2号(要介護)に認定されます。
具体的な認定基準は、以下のとおりです。
- ・動脈血酸素分圧が50Torr以下であるもの
- ・動脈血酸素分圧が50Torr超~60Torr以下で、動脈血炭酸ガス分圧が37Torr未満または43Torr超であるもの
- ・スパイロメトリーの結果が「%1秒量≦35」または「%肺活量≦40」で、呼吸困難の程度が高度であること
「呼吸困難の程度が高度」とは、呼吸困難のため連続しておおむね100m以上歩けない状態のことを指します。
後遺障害1級に認定される症状と認定基準(要介護でないケース)
次に、別表2(要介護でないケース)に掲げられている症状と認定基準をご紹介します。
1級1号:両眼が失明したもの
両眼を失明した場合は、1級1号に認定されます。
「失明した」と判断されるのは、次のいずれかの状態に該当する場合です。
- ・眼球を摘出した
- ・明暗を判別できない
- ・ようやく明暗を判別できる
1級2号:咀嚼及び言語の機能を廃したもの
咀嚼機能と言語機能の両方を廃した場合は、1級2号に認定されます。
「咀嚼機能を廃した」とは、流動食以外は摂取できない状態のことです。
「言語機能を排した」とは、以下に掲げる4種類の子音のうち3種類以上を発音できない状態のことです。
口唇音 | ま行、ば行、ぱ行、わ行、ふ |
---|---|
歯舌音 | な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ |
口蓋音 | か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん |
喉頭音 | は行 |
1級3号:両上肢をひじ関節以上で失つたもの
両腕をひじ関節、またはひじ関節よりも根元に近い部分で切り離された場合は、1級3号に認定されます。
1級4号:両上肢の用を全廃したもの
両腕の用を全廃した場合は、1級4号に認定されます。
「両腕の用を全廃した」とは、次のいずれかの状態に該当することを指します。
- ・両上肢の3大関節(肩関節、ひじ関節、手関節)のすべてがほとんど動かず、かつ、すべての手指がまったく動かない状態にあるもの
- ・両方の上腕神経叢が完全麻痺(両腕がまったく動かない状態)したもの
1級5号:両下肢をひざ関節以上で失ったもの
両足をひざ関節、またはひざ関節よりも根元に近い部分で切り離された場合は、1級5号に認定されます。
1級6号:両下肢の用を全廃したもの
両足の用を全廃した場合は、1級6号に認定されます。
「両足の用を全廃した」とは、次のいずれかの状態に該当することを指します。
- ・両下肢の3大関節(股関節、ひざ関節、足関節)のすべてがほとんど動かないもの
- ・両下肢の3大関節とすべての足指がほとんど動かないもの
後遺障害1級に認定された場合の慰謝料相場
次に、後遺障害1級に認定された場合に請求できる慰謝料の相場について解説します。
慰謝料の算定基準は3種類
交通事故の慰謝料の計算方法には、次の3種類の算定基準があります。
算定基準 | 基準の内容 |
---|---|
自賠責保険基準 | 強制加入である自賠責保険による慰謝料を算出するための基準。最低限の補償を目的としているため、慰謝料額は3つの基準の中で最も低くなることが多い。 |
任意保険基準 | 任意加入である任意保険による慰謝料を算出するための基準。慰謝料額は自賠責基準とほぼ同じか、少し高い程度となることが多い。 |
弁護士基準 (裁判所基準) |
被害者側の弁護士が損害賠償請求をする際や、民事訴訟において裁判所が用いる基準。慰謝料額は3つの基準の中で最も高くなることが多い。 |
加害者側の保険会社が提示してくる慰謝料額は任意保険基準で計算されていて、弁護士基準よりも大幅に低いことがほとんどです。
3つの算定基準の中で正当な法的根拠を有するものは弁護士基準だけなので、弁護士基準による慰謝料額を「相場」として参照しましょう。
以下では、後遺障害1級に認定された場合に請求できる「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の相場をご紹介します。
入通院慰謝料の相場
入通院慰謝料とは、交通事故で怪我をしたことによる精神的苦痛に対する賠償金のことです。
一般的に、精神的苦痛の程度は怪我の治療に要した入通院期間に比例すると考えられます。そのため、入通院慰謝料の金額は入通院期間に応じて計算されます。
入通院期間のパターン別に入通院慰謝料を計算すると、以下のようになります。
入通院期間 | 相場(弁護士基準) | 自賠責保険基準 |
---|---|---|
入院1ヶ月+通院6ヶ月 | 149万円 | 38万7,000円 (実入通院日数90日の場合) |
入院6ヶ月+通院3ヶ月 | 267万円 | 90万3,000円 (実入通院日数210日の場合) |
入院12ヶ月 | 321万円 | 120万円 (実入通院日数365日の場合) |
自賠責保険基準による入通院慰謝料の計算方法は、「1日あたり4,300円×対象日数(入通院期間の全日数または実入通院日数×2のどちらか少ない方)」で計算されます(2020年3月31日以前の事故については、1日あたり4,200円となります)。
ただし、傷害に対する自賠責保険金は治療費や休業損害なども含めて120万円が上限とされています。そのため、後遺障害1級のケースでは満額の慰謝料を受け取れないケースが多いことに注意が必要です。
任意保険基準の計算方法は、各保険会社は非公開にしているので不明ですが、自賠責保険基準より少し高い程度の金額となることが多いです。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の金額は、弁護士基準でも自賠責保険基準でも後遺障害等級に応じて定められています。ただし、両者の金額には以下のように大きな差があります。
後遺障害等級 | 相場(弁護士基準) | 自賠責保険基準 |
---|---|---|
1級(要介護) ※被扶養者あり |
2,800万円 | 1,850万円(1,800万円) |
1級(要介護) ※被扶養者なし |
2,800万円 | 1,650万円(1,600万円) |
1級(要介護でない) ※被扶養者あり |
2,800万円 | 1,350万円(1,300万円) |
1級(要介護でない) ※被扶養者なし |
2,800万円 | 1,150万円(1,100万円) |
自賠責保険基準の()内の金額は、2020年3月31日以前の事故についてのものです。
任意保険基準では、自賠責保険基準とおおむね同程度の金額になると考えられます。
後遺障害1級で慰謝料以外に請求できる賠償金
後遺障害1級に認定されると、慰謝料以外にも以下の賠償金を請求できます。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害の影響で労働能力を失ったことにより、将来の収入が低下することに対する賠償金のことです。逸失利益の金額は、次の計算式によって算出します。
逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
後遺障害1級の場合、労働能力喪失率は100%とされています。
例えば、事故前年の年収が500万円の会社員が後遺障害1級に認定され、症状固定時に40歳だった場合の逸失利益は、次の計算式により9,163万5,000円となります。
基礎収入額(500万円)×労働能力喪失率(100%)×労働能力喪失期間(27年)に対応するライプニッツ係数(18.327)=9,163万5,000円
将来の介護費
後遺障害1級に認定されると、基本的に将来の介護費も請求できます。
後遺障害1級(要介護)に認定された場合はもちろんのこと、後遺障害1級(要介護でない)に認定された場合も、医師の指示などに基づき将来の介護費の請求が認められることが多くなっています。
将来の介護費の金額は、基本的に次の計算式によって算出します。
将来の介護費=日額×365×平均余命に対応するライプニッツ係数
日額は、近親者が介護する場合は8,000円、職業介護者に依頼する場合は実費全額とするのが一般的です。
平均余命については、厚生労働省が発表するデータを参照します。平均余命を30年として、近親者が介護するものとすれば、将来の介護費は次の計算式により5,723万2,000円となります。
日額(8,000円)×365×平均余命に対応するライプニッツ係数(19.600)=5,723万2,000円
その他の賠償金
その他にも、以下のような賠償金を請求できる可能性がありますので、該当するものは漏れなく請求しましょう。
- ・治療関係費
- ・付添看護費
- ・入院雑費
- ・通院交通費
- ・装具、器具等(義手、義足、車椅子など)の購入費
- ・家屋、自動車等の改造費、調度品の購入費(バリアフリー仕様にするため)
後遺障害1級の認定を受けるためのポイント
後遺障害1級の認定を受けるためには、先ほどご紹介した認定基準を満たしていることを証明しなければなりません。
そのためには、まず、専門医による診察と治療、検査を十分に受け、症状固定となったら後遺障害診断書を発行してもらいます。
そして、認定基準を満たしていることを証明できるだけの医学的な資料が揃ったことを確認してから、後遺障害等級認定の申請をしましょう。
もし、資料が不足する場合は追加で検査を受けたり、医師の意見書や近親者の報告書を作成してもらうなどして補充する必要があります。
有効な資料を的確に集めるためには専門的な知識を要しますので、後遺障害等級認定の申請は弁護士に依頼するのがおすすめです。
後遺障害1級の賠償金を増額する方法
後遺障害1級の賠償金を増額するための最も有効な方法は、弁護士に示談交渉を依頼することです。
被害者やその家族が直接示談交渉をすると、任意保険基準で計算した示談案を押し付けられてしまうことがほとんどです。
しかし、弁護士を通じて示談交渉をすれば、保険会社が裁判を恐れて、弁護士基準による賠償額に近い金額で示談に応じるケースが少なくありません。
また、以下のような事情がある場合には、弁護士基準を超える慰謝料額を請求できる可能性もあります。
- ・加害者に故意または重過失(ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらの赤信号無視など)がある
- ・事故後の加害者の態度が著しく不誠実(謝罪を一切しない、虚偽の弁解で責任逃れを図るなど)
これらの事情を保険会社に対して主張・立証するプロセスも、弁護士に一任できます。弁護士のサポートを受けることによって、受け取れる賠償金を最大化することが可能となるでしょう。
まとめ
後遺障害1級に認定されると、慰謝料をはじめとする賠償金が非常に高額となります。
交通事故で重篤な後遺障害が残ったら、後遺障害等級の認定を適切に受けて、弁護士基準で慰謝料を請求することが重要となるでしょう。
弁護士法人オールイズワン法律事務所は、交通事故を専門的に取り扱う弁護士事務所です。
後遺障害1級の事案や重い後遺障害の事案で、後遺障害等級認定の申請や示談交渉で適切な解決に導いてきた実績が豊富にございます。
交通事故による後遺障害のご相談は、当事務所へお気軽にお問い合わせください。