基礎知識

後遺障害3級とは?主な症状や認定基準、慰謝料の増額方法も解説

住友麻優子

【監修】 弁護士 青木芳之
/弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所

交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。

交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。

後遺障害3級は、交通事故の後遺障害等級の中で3番目に重い等級です。後遺障害3級に認定された場合の慰謝料は、後遺障害1級、2級に認定された場合に次いで高額となります。

ただし、後遺障害等級の認定を適切に受けることができなければ、本来もらえるはずの慰謝料を受け取れないおそれがあります。そのため、後遺障害3級に該当する主な症状や認定基準を知っておくことは重要です。

この記事では、後遺障害3級に該当する主な症状や認定基準、慰謝料相場について解説します。

後遺障害3級とは

後遺障害3級とは、1級から14級までの14段階に分類された交通事故の後遺障害等級の1つであり、重い方から3番目の等級として位置づけられている後遺障害等級のことです。

具体的には、自動車損害賠償保障法施行令別表第1で5つの症状が掲げられています。

後遺障害慰謝料の金額や、逸失利益を計算するための労働能力喪失率は後遺障害等級ごとに定められていて、後遺障害慰謝料は1級、2級に次いで高額とされており、労働能力喪失率は1級、2級と同じ100%とされています。

そのため、後遺障害3級に認定されると、1級や2級に認定された場合に次いで非常に高額の賠償金を受け取ることが可能です。

後遺障害3級に認定される症状と認定基準

後遺障害3級に該当する症状と、その認定基準は以下のとおりです。

3級1号 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの

片目が失明し、かつ、もう片方の目の視力が0.06以下になった場合は、後遺障害3級1号に該当します。

「失明」とは、目が見えなくなることですが、実務上は以下のいずれかに該当する場合に失明と判断されます。

  • 眼球を失った(摘出した)
  • 光の明暗がまったくわからない
  • 光の明暗が辛うじてわかる

「視力」は「万国式視力表」による測定値で判断され、裸眼での視力だけでなく、眼鏡やコンタクトレンズを使用した矯正視力も含まれます。

3級2号 咀嚼または言語の機能を廃したもの

咀嚼機能または言語機能のうち、どちらか一方を失った場合は、後遺障害3級2号に該当します。

「咀嚼機能を廃した」とは、スープやおかゆなどの流動食以外は食べられなくなった状態のことを指します。

「言語機能を廃した」とは、以下の4種類の子音のうち、3種類以上を発音できなくなった状態のことです。

  • 口唇音(ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ)
  • 歯舌音(な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ)
  • 口蓋音(か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
  • 喉頭音(は行)

なお、咀嚼機能と言語機能の両方を失った場合は、後遺障害1級2号に該当します。

3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができない状態になった場合は、後遺障害3級3号に該当します。

具体的には、高次脳機能障害や、脳の損傷による身体性機能障害、脊髄損傷などにより、食事、入浴、排便、着替えなど生命維持に必要な身のまわり処理の動作はできるものの、一生働けない状態となった場合に、後遺障害3級3号に認定されます。

なお、身のまわり処理の動作も1人でできなくなった場合など、介護を要する状態になった場合は、後遺障害1級1号(要介護)または後遺障害2級1号(要介護)に認定される可能性があります。

3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができない状態になった場合は、後遺障害3級4号に該当します。

主に呼吸機能に障害が残り、食事、入浴、排便、着替えなど生命維持に必要な身のまわり処理の動作はできるものの、一生働けない状態となった場合に、後遺障害3級4号に認定されます。

具体的な認定基準は、以下のとおりです。

  • 動脈血酸素分圧が50Torr以下
  • 動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下で、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr以上43Torr以下)にない
  • スパイロメトリーの結果が%1秒量が35以下または%肺活量が40以下で、呼吸困難のため連続して100メートル以上歩けない

なお、呼吸機能の障害の程度がより重く、身のまわり処理の動作も1人でできなくなった場合など、介護を要する状態になった場合は、後遺障害1級2号(要介護)または後遺障害2級2号(要介護)に認定される可能性があります。

3級5号 両手の手指の全部を失ったもの

両手のすべての指を失った場合は、後遺障害3級5号に該当します。

「手指を失った」とは、指の付け根の関節から先を切断したことを意味します。

後遺障害3級に認定された場合の慰謝料相場

次に、後遺障害3級に認定された場合に受け取れる慰謝料の相場について解説します。

慰謝料の算定基準は3種類

交通事故の慰謝料は客観的な基準で計算されますが、3種類の算定基準があり、どの基準を用いるかによって金額が異なります。

算定基準 基準の内容
自賠責保険基準 強制加入である自賠責保険による慰謝料を算出するための基準。最低限の補償を目的としているため、慰謝料額は3つの基準の中で最も低くなることが多い。
任意保険基準 任意加入である任意保険による慰謝料を算出するための基準。慰謝料額は自賠責基準とほぼ同じか、少し高い程度となることが多い。
弁護士基準
(裁判基準)
被害者側の弁護士が損害賠償請求をする際や、民事訴訟において裁判所が用いる基準。慰謝料額は3つの基準の中で最も高くなることが多い。

加害者側の保険会社は、通常、任意保険基準で慰謝料を算出しますが、弁護士基準よりも大幅に低額であることがほとんどです。

3つの算定基準の中で正当な法的根拠を有するものは弁護士基準だけなので、弁護士基準による慰謝料額を「相場」として参照しましょう。

以下では、後遺障害3級に認定された場合に請求できる「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の相場をご紹介します。

入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料とは、交通事故で怪我をしたことによる精神的苦痛に対する賠償金のことです。

後遺障害3級に該当する怪我は重大なものばかりですので、治療期間は長引くケースが多いです。しかし、指の切断などのケースでは、比較的短期間で治療が終了するケースもあります。

そこで、入通院期間をいくつかのパターンに分けて、入通院慰謝料を計算してみましょう。

入通院期間 相場(弁護士基準) 自賠責保険基準
入院2週間+通院3ヶ月 92万6,000円 44万7,200円
(実入通院日数104日の場合)
入院6ヶ月+通院6ヶ月 282万円 103万2,000円
(実入通院日数240日の場合)
入院12ヶ月+通院6ヶ月 337万円 120万円
(実入通院日数425日の場合)

自賠責保険基準による入通院慰謝料の計算方法は、「1日あたり4,300円×対象日数(入通院期間の全日数または実入通院日数×2のどちらか少ない方)」で計算されます(2020年3月31日以前の事故については、1日あたり4,200円となります)。

ただし、傷害に対する自賠責保険金は治療費や休業損害なども含めて120万円が上限とされています。そのため、後遺障害3級のケースでは満額の慰謝料を受け取れない可能性があることに注意が必要です。

任意保険基準の計算方法は、各保険会社は非公開にしているので不明ですが、基本的に自賠責保険基準より少し高い程度の金額となることが多いです。保険金額の上限はないので、入通院期間が長引いた場合には自賠責保険基準より相当程度に高くなることもありますが、それでも弁護士基準よりは大幅に低くなります。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の金額は、弁護士基準でも自賠責保険基準でも後遺障害等級に応じて定められています。ただし、両者の金額には以下のように大きな差があります。

後遺障害等級 相場(弁護士基準) 自賠責保険基準
3級
※被扶養者あり
1,990万円 1,005万円(973万円)
3級
※被扶養者なし
1,990万円 861万円(829万円)

自賠責保険基準の()内の金額は、2020年3月31日以前の事故についてのものです。

任意保険基準では、自賠責保険基準とおおむね同程度の金額になると考えられます。

後遺障害3級で慰謝料以外に請求できる賠償金

後遺障害3級に認定されると、慰謝料以外にも以下の賠償金を請求できます。

逸失利益

逸失利益とは、後遺障害の影響で労働能力を失ったことにより、将来の収入が低下することに対する賠償金のことです。逸失利益の金額は、次の計算式によって算出します。

逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

後遺障害3級の場合、労働能力喪失率は後遺障害1級および2級の場合と同じ100%とされています。

例えば、事故前年の年収が400万円の会社員が後遺障害3級に認定され、症状固定時に30歳だった場合の逸失利益は、次の計算式により8,866万8,000円となります。

基礎収入額(400万円)×労働能力喪失率(100%)×労働能力喪失期間(37年)に対応するライプニッツ係数(22.167)=8,866万8,000円

その他の賠償金

その他にも、以下のような賠償金を請求できる可能性がありますので、該当するものは漏れなく請求しましょう。

  • 治療関係費
  • 付添看護費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 休業損害
  • 義歯、義眼、義指などの購入費(交換費用も含む)
  • 家屋、自動車等の改造費、調度品の購入費(必要性が認められる場合)
  • 物損(事故車両の修理費や評価損、レッカー代など)

その他に、将来の介護費の請求が認められることもあります。後遺障害3級の場合、要介護であることは認定の要件とされていませんが、日常生活を安全に送るためには、家族や周囲の人からの声かけや見守り、外出時の付き添いなどを要することもあるからです。

ただし、介護費として受け取れる金額は、後遺障害1級や2級の場合よりも低くなる傾向にあります。

後遺障害3級に認定されると障害年金ももらえる?

後遺障害3級に認定されると、障害年金ももらえる可能性があります。

障害年金を受給するためには、国民年金法施行令および厚生年金法施行令で定められた障害等級の1~3級に該当する必要がありますが、後遺障害3級に認定された場合は、この要件を満たします。

したがって、年金の加入・納付に関する要件を満たせば、障害年金を受給することが可能です。

ただし、障害年金は損益相殺の対象となるため、支給が確定した分は、交通事故の加害者側から支払われる逸失利益から差し引かれます。

それでも、年金として将来にわたり受給できることは、大きなメリットとなるでしょう。詳細については、年金事務所や年金相談センターでご確認ください。

後遺障害3級の認定を受けるためのポイント

後遺障害3級の認定を受けるためには、その際に、先ほどご紹介した認定基準を満たしていることを証明しなければなりません。

後遺障害等級認定の審査は原則として書類のみで行われるため、申請前に十分な資料を準備することが重要です。

そのためには、まず、専門医による診察と治療、検査を十分に受け、症状固定となったら後遺障害診断書を発行してもらいましょう。

その後の申請手続きは、事前認定で保険会社に任せることもできますが、その場合は審査資料が不足し、認定結果が不利になるおそれがあります。

後遺障害の内容にもよりますが、被害者自身が審査資料を収集して審査機関へ提出する被害者請求による方が、適切な認定結果が期待できることも多いです。

ただし、被害者請求の手続きは複雑であり、専門的な知識も要します。後遺障害等級認定の申請をする際は、事前認定と被害者請求のどちらがよいのかという問題も含めて、弁護士に相談してみることをおすすめします。

後遺障害3級の賠償金を増額する方法

後遺障害3級の賠償金を増額するためには、弁護士に示談交渉を依頼することが最も有効です。

保険会社は通常、任意保険基準で計算した示談金を提示してきます。被害者や家族が弁護士基準での示談を求めても、応じてもらえることはまずありません。

しかし、弁護士が介入すると保険会社も裁判を恐れて譲歩することが多いので、弁護士基準による賠償金に近い金額で示談できる可能性が高まるのです。

また、以下のような事情がある場合には、弁護士基準による慰謝料をさらに増額できる可能性もあります。

  • 加害者に故意または重過失(ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらの赤信号無視など)がある
  • 事故後の加害者の態度が著しく不誠実(謝罪を一切しない、虚偽の弁解で責任逃れを図るなど)

ただし、慰謝料を増額するためには、これらの事情を証明して保険会社と交渉しなければなりません。弁護士に依頼すれば、証拠の収集から保険会社との交渉までを全面的に任せることができます。

弁護士のサポートを受けることによって、受け取れる賠償金を最大化することが可能となるでしょう。

まとめ

後遺障害3級は、交通事故の後遺障害等級の中でも重度に分類されていますので、賠償金も高額となります。

しかし、保険会社の言うことを鵜呑みにすると、不当に低い金額で示談してしまう可能性が高いので注意が必要です。

賠償金で損をしないためにも、弁護士のサポートを受けて後遺障害等級の認定を適切に受け、弁護士基準で慰謝料を請求することをおすすめします。

弁護士法人オールイズワン法律事務所は、交通事故を専門的に取り扱う弁護士事務所です。

後遺障害3級の事案をはじめとする重い後遺障害の事案で、後遺障害等級認定の申請や示談交渉で適切な解決に導いてきた実績が豊富にございます。

交通事故による後遺障害のご相談は、当事務所へお気軽にお問い合わせください。