高次脳機能障害SOS

高次脳機能障害で寝たきりになった場合の注意点

交通事故で頭部に強い衝撃を受けると、重度の高次脳機能障害で寝たきりになってしまうケースがあります。

現代の医学では、高次脳機能障害で寝たきりになってしまうと社会復帰は難しくなるケースが多いです。そうなると、被害者本人はもちろんのこと、介護に当たるご家族の生活も事故前とは一変してしまうでしょう。

この記事では、交通事故による高次脳機能障害で寝たきりになった被害者のご家族が、適正な賠償金を受け取り、安心して介護を続けられるように、さまざまな注意点について解説します。

高次脳機能障害による寝たきりに関する基礎知識

まずは、高次脳機能障害とは何か、寝たきりになる理由は何か、などを押さえておきましょう。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳の損傷により記憶力、注意力、言語能力、感情をコントロールする能力、計画を遂行する能力など、脳機能の中でも高度な次元に属する機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす障害のことです。

交通事故でも、頭部に衝撃を受けることで脳が損傷すると、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。

軽度のケースでは元どおりに社会復帰できることもありますが、重度のケースでは身のまわりの処理に必要な動作も自力ではできなくなり、寝たきりになってしまうことがあります。

交通事故による高次脳機能障害で寝たきりになる主なケース

交通事故で寝たきりになるほどの高次脳機能障害が生じるのは、車同士の事故よりも、歩行者、自転車やバイクを運転中の人が、車と衝突して頭を打ったケースが多いです。

しかし、バイクの自損事故や、車同士の事故でもフロントガラスやシートで頭を打ったケース、乗員が車外に投げ出されて路面で頭を打ったケースなどで高次脳機能障害となり、寝たきりになることもあります。

「寝たきり」とはどのような状態か

ひと口に「寝たきり」といっても、具体的な容態によって、認定される後遺障害等級が異なります。後遺障害等級が異なれば、受け取れる賠償金の額が大きく変わってしまうことに注意が必要です。

厚生労働省では、介護保険制度の要介護認定に際する判断基準として、「寝たきり度」について以下のようにランク分けしています。

  • ランクA…屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出できない
  • ランクB…屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
  • ランクC…1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する

どのような状態が何級の後遺障害に認定されるのかについては、後述します。

寝たきりになった被害者の家族に与える影響

寝たきりになった被害者の家族には、次のような影響が及んでしまいます。

被害者の生涯にわたって介護が必要となる

事故直後に寝たきり状態になっても、十分な治療とリハビリによって、身体的な機能はある程度回復することもあります。

しかし、6ヶ月~1年程度のリハビリを経てもあまり回復しない場合には、一生涯、寝たきりになって介護が必要となる可能性が高いのが実情です。

被害者がまだ若い場合には、ご家族が何十年にもわたって介護を続ける覚悟をしなければなりません。

介護に当たるご家族には肉体的にも精神的にも非常に重い負担がかかりますので、家庭内だけで抱え込まず、介護施設や介護サービスも適切に利用した方がよいでしょう。

介護離職を余儀なくされることも

施設ではなく自宅で介護したい場合や、すぐに入居できる介護施設が見当たらない場合などは、介護に当たるご家族が仕事を辞めなければならないこともあるでしょう。

このような場合には、「近親者の慰謝料」や「将来の介護費用」を通常のケースよりも増額して請求できる可能性がありますので、弁護士に相談の上、適正に請求することをおすすめします。

成年後見制度の利用が必要となる

高次脳機能障害で寝たきりになると、成年後見制度の利用が必要となることが多いです。

成年後見制度とは、認知機能の障害や精神障害などによって判断能力が低下した人に代わって、家庭裁判所が選任した後見人等が、財産管理や身上保護(生活や医療、介護に関する契約など)を行う制度のことです。

保険会社との示談交渉や裁判所での損害賠償請求などの法的手続きも、判断能力が不十分となった人が自分で行うことはできません。そのため、場合によっては成年後見制度を利用しなければ示談交渉や損害賠償請求ができず、賠償金を受け取れないことがあります。

ただし、成年後見制度の利用が必要かどうかは、被害者本人の障害の程度によって異なります。また、成年後見制度には「後見」「保佐」「補助」の3種類があり、どの制度を利用すべきか状況次第で変わってきます。

さらに、家庭裁判所への申し立て手続きや、家族が後見人等に選任された後の財産管理や家庭裁判所への報告などの業務には、大きな労力を要しますし、専門的な知識を要することもあります。

スムーズに賠償金を受け取り、今後の介護を円滑に続けていくためにも、成年後見制度の利用については弁護士へのご相談をおすすめします。

【参考】交通事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害)で成年後見が必要になるケースと成年後見人の役割について

高次脳機能障害で寝たきりになった場合の後遺障害等級

高次脳機能障害で寝たきりになると、重度の後遺障害等級に認定される可能性が高いです。具体的には、以下の等級に認定される可能性があります。

1級1号(要介護)

後遺障害1級1号(要介護)は、14段階ある後遺障害等級の中で最も重いものであり、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当した場合に認定されます。

より具体的にいうと、重篤な高次脳機能障害のため、食事、入浴、用便、着替えなど生命維持に必要な身のまわりの処理動作について、「常時介護」を要する状態が、後遺障害1級1号(要介護)に該当します。

厚生労働省の「寝たきり度」でいうと「ランクC」(1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する)がこれに該当する可能性が高いですが、交通事故の後遺症外等級認定においては、独自の基準で審査されることに注意が必要です。

完全に寝たきりとなり、意思表示も難しい状態であれば、後遺障害1級1号(要介護)に認定される可能性が高いといえます。

2級1号(要介護)

後遺障害2級1号(要介護)は、14段階ある後遺障害等級の中で2番目に重いものであり、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」に該当した場合に認定されます。

より具体的にいうと重篤な高次脳機能障害のため、食事、入浴、用便、着替えなど生命維持に必要な身のまわりの処理動作について、「随時介護」を要する状態が、後遺障害1級1号(要介護)に該当します。

「常時介護」と「随時介護」の違いを分かりやすくいうと、以下のとおりです。

  • 常時介護…生命維持に必要な身のまわりの処理動作を自力で行えず、全面的介護を要する状態
  • 随時介護…身体動作的には生命維持に必要な身のまわりの処理動作を自力で行えるが、周囲の人からの声かけや看視が欠かせない状態

厚生労働省の「寝たきり度」でいう「ランクB」(屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ)のように、起き上がることが可能な状態では、後遺障害2級1号(要介護)に認定される可能性が高くなります。

3級3号

厚生労働省の「寝たきり度」でいう「ランクA」(屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出できない)のように、生命維持に必要な身のまわりの処理動作を自力で行える状態であれば、後遺障害3級3号に認定される可能性が高いです。

寝たきりになった場合に受け取れる賠償金

高次脳機能障害で寝たきりになった場合には、以下の賠償金を受け取れる可能性があります。該当するものは漏れなく適正に請求することが大切です。

賠償項目 内容
治療関係費 症状固定までの治療やリハビリに要する費用。付添看護費や入院雑費、通院交通費なども請求できます。
休業損害 事故後に働けなくなり、収入が減少したことに対する補償。
慰謝料 事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償金。入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・近親者慰謝料の3種類を請求できる可能性があります。
逸失利益 後遺障害のために将来得られるはずの利益が得られなくなったことに対する補償。
将来の治療費・介護費 生涯にわたって医療や介護を要することに対する補償。
装具・器具等購入費 介護用ベッドや人工呼吸器、車椅子など、医療・介護に必要な装具・器具の購入・買替え・修理に要する費用。
家屋・自動車等改造費 医療・介護のために自宅や自動車をバリアフリー仕様に改造するために必要な費用。
成年後見人等の選任申立費用・報酬 成年後見制度を利用する場合の申立費用や後見人等へ支払う報酬。
物損 事故で壊れた物の修理や買替えに要する費用。

高次脳機能障害で寝たきりになった場合の賠償金は、一般的に高額となります。後遺障害1級1号(要介護)に認定された場合には、数億円に上ることも多いです。

【参考】高次脳機能障害の慰謝料相場とは?算出基準から慰謝料の増額事例まで解説

寝たきりになった場合の保険会社との交渉で注意すべきポイント

適正な賠償金を受け取るためには、以下のポイントに注意する必要があります。

適正な後遺障害等級を獲得する

何級の後遺障害に認定されるかにより、賠償金の額は大きく変わることがあります。例えば、後遺障害1級1号と2級1号では、後遺障害慰謝料の金額だけでも430円ほど違います(弁護士基準による場合)。

高次脳機能障害で適正な後遺障害等級を獲得するためには、後遺障害等級認定の申請手続きを保険会社に任せず、被害者側で行う「被害者請求」によった方がよいことも多いです。

慰謝料を弁護士基準で請求する

慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。自賠責基準や任意保険基準による慰謝料額は、弁護士基準よりも大幅に低くなることがほとんどです。

弁護士基準で慰謝料を請求するためには、事実上、弁護士への依頼が必要となります。

逸失利益等の減額には安易に応じない

交通事故の被害者が寝たきりになった場合、保険会社は一般的に「感染症などにより早期に死亡する例が多いため、余命を10年程度と考えるべき」などと主張してきます。

この主張に安易に応じると、逸失利益や将来の治療費・介護費などが不当に低額となってしまいます。

裁判例では、寝たきりのケースでも、被害者が平均余命まで生きることを前提として賠償金を認めた事例が多いです。保険会社の言うことを鵜呑みにせず、適正に請求することが重要です。

将来の治療費や介護費を適正に請求する

保険会社は、「在宅介護で十分に対応可能」などと主張し、将来の治療費や介護費を封筒に減額しようとすることも多いです。

しかし、裁判例では、完全寝たきりのケースで特に、入院費(植物状態のケースなど)や介護施設の利用費全額を損害として認めたものが多いので、この点についても適正な反論が重要となります。

成年後見制度の利用に必要な費用を適正に請求する

成年後見人等の選任申立てを弁護士等の専門家に依頼した場合には、相応の費用がかかります。さらに、後見人等に弁護士などの専門家が選任された場合には、被害者本人が亡くなるまで、後見人等へ報酬を支払い続けなければなりません。

これらの費用も、交通事故と因果関係のある損害として認められる可能性があるので、適正に請求しましょう。

高次脳機能障害で寝たきりになった事故で弁護士へ依頼するメリット

高次脳機能障害で寝たきりになった事故での損害賠償請求を弁護士に依頼すると、以下のメリットが得られます。

  • 治療やリハビリの受け方、症状固定の診断時期についてアドバイスが受けられる
  • 後遺障害等級認定の手続きを任せることにより、適正な後遺障害等級の獲得が期待できる
  • 慰謝料などを弁護士基準で計算して請求してもらえる
  • 逸失利益や将来の治療費・介護費、成年後見人等にかかる費用についても適正に請求してもらえる
  • 代理人として活動してもらえるので、保険会社などと直接やりとりする必要がない
  • 保険会社の提示額よりも大幅に高額の賠償金の獲得が期待できる

なお、被害者側の任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用の負担を大幅に軽減できます。積極的に利用するとよいでしょう。

【参考】交通事故による高次脳機能障害の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由

まとめ

交通事故の被害者が高次脳機能障害で寝たきりになると、ご家族の方も介護などで負担の重い生活を強いられることになるでしょう。それだけに、適正な賠償金を受け取ることにより、せめて経済的な負担をまかなうことが非常に重要です。

そのためには専門的な知識も要求されますし、保険会社との交渉などで多大な労力も要します。介護で大変な状況の中、一人で抱え込まず、弁護士による専門的なサポートを受けることをおすすめします。

オールイズワンでは交通事故による後遺症を専門的に取り扱っており、特に高次脳機能障害など重大事故の解決実績が豊富にあり、絶対的な強みを持っています。

ご家族が高次脳機能障害で寝たきりになり、苦しまれている方は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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