事故の被害者が高次脳機能障害で将来的に認められる介護と費用について

事故の被害者が高次脳機能障害で将来的に認められる介護と費用について

交通事故の高次脳機能障害は、目立つ外傷は少なく症状が軽いうちは気づかないことが多い障害ですが、将来的に介護が必要となるケースがあります。

高次脳機能障害で受けられる介護費用は、後遺障害等級という後遺障害の程度や内容によって決められています。認定される等級で介護費用は大きく変わるため、後遺障害認定の手続きは交通事故の後遺症に詳しい弁護士に一任するのがおすすめです。

この記事では、家族が交通事故で高次脳機能障害の被害者となり、介護を必要とする場合の情報をわかりやすく説明します。

高次脳機能障害で介護が必要なケースとは

高次脳機能障害とは、交通事故や転倒による外傷で脳が損傷を受け、認知機能に障害が発生している状態のことです。高次脳機能障害を患っていても本人はほぼ自覚症状がないため、症状が軽いうちは家族でも気づかないことがあります。

高次脳機能障害で介護が必要な症状としては、「記憶障害」、「注意機能障害」、「運動障害」、「失語症」などが挙げられます。これらの症状により本人だけでは日常生活に支障をきたすケースがあります。家族による、常時あるいは随時の見守りが求められる場合は介護が必要です。

高次脳機能障害で介護が認められるための後遺障害等級とは

高次脳機能障害を患ったからといって、将来的な介護費用が必ずしも認められるとは限りません。介護費用が認められるには、高次脳機能障害による症状が後遺障害等級1級か2級として認定される必要があります。

後遺障害等級とは、後遺障害を症状別に分類し等級を付けたもので、1級は常時介護、2級は随時介護を要する障害とされています。ここでは、後遺障害1級・2級の内容について詳しくご説明します。

後遺障害1級1号とは

後遺障害1級には、要介護の症状と要介護ではない症状の2つのパターンがあります。要介護の1級は、日常生活のあらゆる場面で常に介護を必要とする障害に認定される等級で、別表1に定められています。要介護ではない1級は別表2に定められており、これは、骨折で腕が曲がらなくなったとか、むち打ち症で首の痛みが残ったといった後遺障害等級が定められているのと同じ一覧表です。別表1は、要介護の1級と2級だけを定めた特別の一覧表です。

要介護の1級の中は、さらに症状別に1号と2号に分類され、後遺障害1級1号とは、「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」と定められています。

後遺障害1級1号と認定された場合に受け取れる慰謝料や労働能力損失率の割合は、下記の表を参考になさってください。

後遺障害1級1号(要介護)の場合
慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 自賠責の上限金額 労働能力喪失率
1,600万円 約3,000万円 4,000万円 100%

※上記「慰謝料(弁護士基準)」には後遺障害逸失利益を含みませんが、「自賠責の上限金額」には後遺障害逸失利益を含みます。

後遺障害2級1号とは

後遺障害2級には1級と同様に、要介護の症状と要介護ではない症状があります。要介護の2級は、日常生活において随時介護を必要とする障害に認定される等級です。 要介護の2級は、さらに症状別に1号と2号に分類され、後遺障害2級1号とは、「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」と定められています。 後遺障害2級1号と認定された場合に受け取れる慰謝料や労働能力損失率の割合は、下記の表を参考になさってください。

後遺障害2級1号(要介護)の場合
慰謝料(自賠責基準) 慰謝料(弁護士基準) 自賠責の上限金額 労働能力喪失率
1,163万円 約2,400万円 3,000万円 100%

高次脳機能障害の等級認定基準と等級取得で重要なこと

後遺障害1・2級の将来的な介護と費用項目

交通事故の後遺障害で介護費用が認められるには、将来的に介護を要すると判断される必要があります。そのため、要介護の後遺障害1級、2級が認定された場合、交通事故の被害者には将来的な介護費用が原則として認められます。

なぜなら、後遺障害1級、2級が認められたということは、後遺障害等級認定の際に「介護を要するもの」という判断を受けていることになるからです。

ここでは、将来的に受け取れる介護費用について、近親者付添人介護の場合と職業付添人介護の場合に分けてご説明します。

近親者付添人介護の場合

近親者付添人介護とは、交通事故被害者の家族や親族といった近親者による介護を指します。
近親者付添人介護の場合、介護費用は日額8,000円が基準とされています。しかし、この金額はあくまで基準であり、後遺障害の内容や必要とされる介護の内容、時間などによって変動します。

例えば、随時介護である2級が認定されている場合、常時介護の1級よりも必要な介護時間が短いと判断され、8,000円から減額となることが考えられるのです。

職業付添人介護の場合

職業付添人介護とは、介護士やヘルパーといった介護職による介護を指します。家庭や仕事など様々な事情により、必ずしも交通事故被害者の家族が介護に専念できるとは限りません。その場合は、介護を専門とする介護職に依頼することになるでしょう。

職業付添介護の場合、介護費用は実費全額が原則として認められ、日額1万円〜3万円程度で推移しています。日額2万円以上の介護費用は、24時間体制や複数人による介護が必要な場合に認められることが多いと言えます。

利用できる介護施設と種類

高次脳機能障害の影響で介護が必要になった場合、介護の知識や経験を持つ専門職による介護サービスを利用することになるでしょう。

介護サービスを利用する場合、高次脳機能障害の被害者が満65歳以上であれば介護保険が適用されます。65歳未満の場合は適用されないため、傷害保険など別の保険を検討することになります。

ここでは、高次脳機能障害の被害者が利用できる介護サービスの種類をご説明します。

在宅介護サービス

在宅介護サービスとは、高次脳機能障害を患った方の自宅に介護士や看護師が訪れ、食事や入浴補助などの介護を提供するサービスのことです。

在宅介護サービスには、住み慣れた自宅で介護を受けられるメリットはあるものの、ともに暮らす家族のストレスや負担は無視できません。長期間の介護が必要になり、身体的にも精神的にも支障をきたす場合は、施設への入所を検討することをおすすめします。

通所介護サービス

通所介護サービスとは、日帰りの介護施設(デイサービス)のスタッフによって提供される介護サービスのことで、高次脳機能障害を患った方は施設へ通う形で介護を受けます。

通所介護サービスを利用する場合は定期的に介護施設に通うため、家族以外とのコミュニケーションが取れる貴重な機会になるでしょう。しかし、施設の雰囲気に馴染めずストレスを感じたり、利用者同士のトラブルが発生したりと、施設に通うことで起こり得るデメリットも把握しておく必要があります。

入所介護サービス

入所介護サービスとは、高次脳機能障害を患った方が介護施設に入所する形で、その施設のスタッフによる介護を受けるサービスです。長期間の入所介護の他、ショートステイと呼ばれる短期入所介護もあります。

入所介護サービスを利用する場合、通所介護サービスと同様に、施設の雰囲気や他の入所者との交流でストレスを感じることがあるかもしれません。長期間の入所では精神的に大きな負担となる恐れがあるため、被害者本人の気持ちや意思を尊重するよう心がけましょう。

将来的に介護者なき後をどうするか計画する必要がある

将来的に親や家族などの介護者がいなくなった場合、それまでに介護者が担っていた役割をどう補っていくか考える必要があります。

介護者なき後の対応としては、介護施設への入所が有力と考えられます。介護施設にはスタッフが24時間常駐し、日常生活のあらゆる場面をサポートしてもらえるため、家族も安心して任せることができるでしょう。

介護施設へ入所する場合は、事前にどのような施設があるのか調べ、入所する施設を検討しておかなければなりません。また、介護者なき後に契約内容や支払い手続きが変更になる場合はどうするのか、緊急連絡先や身元保証人は誰になるのかなど、様々な確認や検討が必要になります。

後遺障害3級以下は介護費用が認められない?

交通事故が原因で高次脳機能障害が残ってしまっても、食事や入浴などの日常的な動作が本人だけでも可能な場合は、後遺障害3級以下が認定されます。

後遺障害で介護費用が認められるのは、後遺障害1級、2級のケースが多く、原則として3級以下は認められていません。なぜなら、後遺障害3級以下が認定された場合は、「要介護」の障害とは判断されていないことになるからです。

3級以下でも認められるケースとは?

後遺障害3級以下の場合、原則として介護費用は認められていないものの、例外的に認められるケースも存在します。例えば、平成25年3月19日の名古屋地裁の判例では、後遺障害5級の高次脳機能障害の被害者に対し、日額3,000円の介護費用を認めています。

5級にもかかわらず介護費用が認められた理由は、リハビリにより症状の改善は見られるものの、将来的に見守りや声かけによる指示が随時必要であると判断されたからです。

同様に、平成16年12月13日の東京地裁の判例では、後遺障害3級の高次脳機能障害の被害者に対し、近親者付添人介護の場合は日額6,000円、職業付添介護の場合は日額1万850円の介護費用を認めています。介護費用が認められた理由は、常時介護は不要であるものの、随時介護は必要であると判断されたからです。

高次脳機能障害で介護が必要な方に弁護士ができること

高次脳機能障害で介護が必要なった場合は、専門の弁護士に相談することをおすすめします。
下記は、高次脳機能障害の被害者のために弁護士がサポートできる項目です。

  • ・後遺障害等級認定の申請手続き
  • ・損害賠償金額の交渉
  • ・適切な慰謝料金額の算定
  • ・成年後見の申立
  • ・社会保障の紹介

後遺障害認定を受けるには、様々な書類の作成や情報収集、手続きが必要です。こういった作業に慣れていない被害者本人や家族では、大きな負担に感じてしまうでしょう。弁護士にすべて一任することで、被害者や家族の負担は大幅に軽減するはずです。

また、賠償金額交渉の際に交通事故の後遺症に詳しい弁護士が介入することで、賠償金額が増額するケースは数多くあります。被害者や家族にとっては大きなメリットとなるでしょう。

まとめ

高次脳機能障害は、交通事故の被害者に多い障害です。症状によっては将来的な介護が必要となるため、介護施設やサービス、費用、介護者なき後の対処法など、あらかじめしっかりと理解しておく必要があります。

しかし、後遺障害申請や損害賠償請求など、交通事故の被害者や家族にとっては慣れないことも多く、大きな負担がのしかかります。その場合は、弁護士に頼ることもひとつの手段として検討してみてください。

弁護士法人オールイズワンは、交通事故の高次脳機能障害のサポートに数多くの実績と経験があります。被害者ご本人様、ご家族の方は、交通事故に強い当事務所にお気軽にご相談ください。