高次脳機能障害SOS

交通事故で家族が高次脳機能障害になった場合の対応について解説

大切な人が交通事故で高次脳機能障害になったとき、症状の回復を図り、社会復帰を目指すためには、家族のサポートが重要となります。

しかし、どのように対応すればよいのかが分からない方も多いでしょうし、経済的な不安や精神的ストレスなどにより、対応しきれないと感じる方もいることでしょう。適切に対応するためには、いくつかのポイントを理解しておく必要があります。

この記事では、交通事故で高次脳機能障害になった方のご家族が、どのように対応していけばよいのかについて解説します。利用できる制度や支援サービス、困ったときの相談先などもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳の損傷により、記憶・思考・注意・言語・感情コントロールなどの認知機能に障害が生じた状態のことです。交通事故で頭部に強い衝撃を受けた場合にも、高次脳機能障害を発症することがあります。

代表的な症状として、以下のようなものが挙げられます。

  • 記憶障害…新しいことを覚えられないなど
  • 注意障害…集中力が続かないなど
  • 遂行機能障害…物事を計画どおりに進められないなど
  • 社会的行動障害…怒りっぽくなるなど

これらの症状の原因は外見からは分かりにくいため、周囲から理解されにくく、「怠けている」「性格が変わった」などと誤解されることも少なくありません。家族であっても、本人への対応に困ることがあるでしょう。

交通事故後に家族がまずやるべき対応

ここでは、家族がやるべき初動対応について解説します。

医療機関で適切な診断を受ける

交通事故で頭部に衝撃を受けたら、速やかに専門の医師による診察・診断と治療を受けることが重要です。

重篤なケースではもちろんのこと、事故直後は外見に異常がなくても、脳に損傷が生じており、後からさまざまな症状が現れてくることもあります。

高次脳機能障害を見逃さないためにも、必ず脳神経外科がある専門性の高い医療機関を受診し、脳のMRIをはじめとする詳しい検査を経て、適切な診断を受けましょう。

症状を記録していく

日常生活においては、家族の方が本人の様子を注意深く見守り、気づいた症状を日々、記録していきましょう。

いつ・どこで・どのような状況で、何が起きたのかを、具体的かつ客観的に記録するのがポイントです。例えば、単に「怒った」ではなく、「通院する日を忘れたことを指摘したら、怒りだした」というように記録します。

継続的に症状を記録しておくことで、医師に詳しい状況を伝えやすくなり、適切な治療やリハビリを受けやすくなります。

また、後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定の申請をする際に症状の記録が有力な資料となり、高額の賠償金を受け取ることにもつながります。

専門性が高い施設でのリハビリへつなぐ

症状を改善するためには、リハビリが重要です。急性期(一般的には1~2ヶ月程度)には集中的な治療が必要ですが、回復期に移行したら、早期にリハビリを開始しましょう。

高次脳機能障害のリハビリの効果を高めるためには、専門性が高い医療機関や施設を利用する必要があります。

各地に「高次脳機能障害普及事業支援拠点機関」がありますので、必要に応じて家族の方が問い合わせるなどして、専門的なリハビリにつなぐとよいでしょう。

高次脳機能障害の症状と家族の接し方

高次脳機能障害になると、今まではできていたことができなくなったり、感情を抑制できなくなったりすることがあるため、家族であっても本人への対応に困ることが少なくありません。

ここでは、家族としての適切な接し方をご紹介します。

主な症状別の対応例

まずは、高次脳機能障害の主な症状別に、対応例をみていきましょう。いずれも、本人の「できないこと」や「不適切な行動」などを責めるのではなく、適切に行動できるように導くという視点が重要です。

症状 対応例
注意障害
  • 話しかけるときは一度に一つの内容に絞り、短く具体的に伝える
  • テレビやスマートフォンなどの刺激を減らし、作業環境をシンプルに整える
  • 作業時間を区切り、適度に休憩を入れることで集中力の維持を図る
  • チェックリストやメモを活用し、注意の抜け漏れを補う仕組みを作る
記憶障害
  • 予定や約束は口頭だけでなく、メモやカレンダーアプリで可視化する
  • 毎日の生活リズムを一定にし、「習慣」として記憶を補う
  • 重要事項は繰り返し伝え、確認の機会を設ける
  • 写真や図など視覚的な情報を活用し、記憶の定着を助ける
  • 忘れてしまう前提で環境を整え、家族がフォローできる体制を作る
遂行機能障害
  • やるべきことを細かい手順に分解し、順番に提示する
  • 「まず何をするか」を明確に示し、一つずつ完了させる支援を行う
  • スケジュール表やタスク表を用いて、行動の見通しを持たせる
  • 期限や優先順位を視覚的に示し、判断の負担を軽減する
社会的機能障害
  • 感情的な言動があってもすぐに否定せず、まず気持ちを受け止める
  • 不適切な言動については、その場で穏やかに具体的に指摘する
  • トラブルが起きた場合は、本人を一方的に責めず状況を整理する
  • 無理に多くの人と関わらせず、安心できる関係から広げていく

家族が適切に対応し、本人との衝突を回避することで、家族のストレス軽減にもつながることでしょう。

本人の自覚がない場合の対応

高次脳機能障害の患者の中には、自分の症状に対する自覚がない方も少なくありません。障害を自覚できず、障害がないかのように振る舞う状態のことを「病識欠如」といいます。

この場合、家族が無理に理解させようとすると、対立が生じやすくなることに注意が必要です。日常生活の中で手伝いすぎず、適度に本人に任せながら、自分で障害に気づくように、環境を整えましょう。

家族だけで抱え込まず、専門の相談窓口を活用し、第三者から客観的な評価を伝えてもらうことも有効です。そして、専門的なリハビリにつないでいきましょう。

高次脳機能障害の家族が直面する問題

高次脳機能障害の患者の家族は、適切な対応がとれなければ、以下のように深刻な問題に直面しやすいことを知っておきましょう。

本人の性格変化による家族関係の悪化

高次脳機能障害になると、性格や人格が変化し、事故前とは別人のように感じるケースもあります。

一緒に暮らす家族が対応を変えなければ、本人と衝突しやすくなり、感情的な対立がエスカレートすると家族関係の悪化を招くことにもなりかねません。

就労が困難な場合の経済的不安

高次脳機能障害の影響で、今後の就労が困難になるケースも少なくありません。

特に、一家の大黒柱が就労困難になってしまった場合は、家計に不安が生じやすいでしょう。若年者が高次脳機能障害になった場合も、生涯にわたって医療費や介護費を要するなどして、経済的な不安を抱えることが多いです。

介護や見守りによる負担

重篤なケースでは本人が寝たきりとなり、終生、介護を要することもあります。障害が比較的軽微なケースであっても、家族が日常的に本人の行動を見守る必要が生じます。

長期にわたる介護や見守りのために、家族には身体的、精神的に大きな負担がかかってしまいます。

家族の負担を軽減するために利用できる制度や支援サービス

高次脳機能障害の家族の負担を少しでも軽減するためには、以下の公的支援制度や支援サービスの利用を検討するとよいでしょう。

障害者手帳・障害年金

高次脳機能障害によって日常生活や社会生活に制約が残った場合には、精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。手足に麻痺が残ったり、言語障害(失語症)が残った場合には、身体障害者手帳を取得できる可能性があります。

障害者手帳を取得すれば、各種税金や公共料金等の控除・減免のほか、さまざまな行政サービスを受けることができます。

また、年金の納付要件を満たしていれば、障害の程度に応じて、障害年金を受給できる可能性もあります。

介護保険・障害福祉サービス

本人が65歳以上であれば、介護保険を利用するで、さまざまな介護サービスを受けることができます。

65歳未満の方は介護保険のサービスを利用できませんが、「障害者総合支援法に基づく福祉サービス」により、さまざまな介護サービス(介護給付)や、自立訓練・就労移行支援など(訓練等給付)を利用することが可能です。

リハビリ施設

高次脳機能障害の患者への対応は、家族だけで抱え込む必要はありません。専門的なリハビリを継続的に受けることで、効率的に症状の回復や社会復帰を目指すことが可能です。

全国各地に、高次脳機能障害のリハビリを専門的に実施している施設がありますので、積極的に利用しましょう。

【参考】高次脳機能障害のリハビリの重要性と具体的内容や注意点について解説

家族会などの支援団体

家族の精神的な負担を軽減するためには、高次脳機能障害の家族会に参加することが有効です。

家族会では、同じ立場の人たちと交流し、悩みを共有したり、本人への対処方法を分かち合ったり、利用できる支援制度に関する情報を得たりすることができます。

【参考】交通事故で家族が高次脳機能障害に…家族会とは?参加するメリットと探し方を解説

高次脳機能障害の家族が困ったときの相談先

高次脳機能障害になった方への対応に困った家族の方は、家庭内で抱え込まず、早めに以下の窓口へ相談しましょう。

医療機関やリハビリ施設

医療機関では、高次脳機能障害の治療方法について相談できるほか、リハビリ施設や家族会などの紹介を受けられるところもあります。

リハビリ施設でも、リハビリ方法について相談できるだけでなく、さまざまな生活上の困りごとについても相談できることが多いです。

専門性が高い医療機関やリハビリ施設の紹介を受けたいときは、「高次脳機能障害支援センター」など各地に設置されている支援拠点機関や、国立障害者リハビリテーションセンターへの相談が有効です。

自治体や福祉団体の相談窓口

自治体や福祉団体の相談窓口では、社会保障制度や福祉サービス、就労支援サービスなどの案内を受けることができ、日常生活での困りごとについて相談することもできます。

まずは市区町村の役所の福祉担当課や、各地の福祉事務所に問い合わせてみるとよいでしょう。

交通事故に強い弁護士

交通事故で高次脳機能障害になった場合の損害賠償請求については、弁護士へのご相談をおすすめします。

特に後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の申請手続きや、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することで、賠償金の大幅な増額も期待できます。

ただし、高次脳機能障害の損害賠償請求では高度に専門的な知識が要求されますので、交通事故に強い弁護士に相談することが重要です。

まとめ

高次脳機能障害の患者の家族には、長期にわたって重い負担がかかることも少なくありません。困ったときは家族だけで抱え込まず、さまざまな公的制度や支援サービスを活用し、負担を減らしていきましょう。

早い段階で交通事故に強い弁護士に相談すれば、治療やリハビリ、検査の受け方から、適正な後遺障害等級の獲得と損害賠償請求に向けて準備すべきポイントなどについてまで、専門的なアドバイスが受けられます。

弁護士によっては、公的制度や支援サービスの活用方法についてもアドバイスしてくれることがあります。

弁護士法人オールイズワンには、交通事故による高次脳機能障害のサポートに数多くの実績と経験があります。お困りの際は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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