高次脳機能障害SOS

高次脳機能障害のリハビリの重要性と具体的内容や注意点について解説

交通事故で頭部に衝撃を受けると、高次脳機能障害になり、記憶力や注意力、言語能力などの認知機能に障害が残ることがあります。

高次脳機能障害で後遺症が残ると、本人の日常生活や社会生活に支障が生じるだけでなく、家族も介護などで重い負担を負い続けることになりかねません。このようなリスクを軽減させるためにも、リハビリを十分に受けておくことが大切です。

この記事では、高次脳機能障害のリハビリの重要性や具体的な内容、リハビリを受けるときの注意点などについて解説します。

高次脳機能障害のリハビリの重要性

高次脳機能障害のリハビリは、以下の3つの観点から、非常に重要なものです。

症状を改善するため

まずは、高次脳機能障害の症状を改善するためにリハビリを行うことが、何よりも大切です。

「脳の損傷は元に戻らない」と考えて諦めてしまう人も少なくありませんが、適切なリハビリを行うことで、一定程度の症状改善が期待できます。

症状改善の効果を高めるためには、早期にリハビリを開始し、継続することがポイントです。

社会復帰を促進するため

高次脳機能障害による症状の内容や程度によっては、就労が困難となり、社会復帰が難しくなることも少なくありません。しかし、適切なリハビリによって、社会復帰の可能性を高めることにつながります。

特に、記憶力や注意力、判断力などは、専門的な訓練を繰り返すことで、機能の改善や代替手段による対応力を高めることが期待できます。

事故前と同等に働くことが難しい場合でも、リハビリによって症状を改善した上で、職場で周囲の人の協力を得たり、職種を変更したりすることにより、社会復帰を果たしたケースは数多くあります。

適正な後遺障害等級を獲得するため

高次脳機能障害になると、何らかの障害が残るケースが多いのが実情です。

交通事故による高次脳機能障害で後遺症が残った場合には、症状に応じて後遺障害等級の認定を受け、加害者に対して高額の損害賠償金を請求できる可能性があります。

ただし、後遺障害等級認定の対象となるのは、「治療を尽くしても治らず残った障害」のみです。「治療」にはリハビリも含まれます。

リハビリを尽くしておかなければ、適正な後遺障害等級を獲得できず、賠償金で損をするおそれがあることに注意しなければなりません。

高次脳機能障害はリハビリで治るのか

残念ながら、高次脳機能障害は、元どおりの状態にまで完治することはありません。脳の損傷は回復しないため、失われた機能そのものが元に戻ることはないからです。

しかし、適切なリハビリによって次のような改善は期待できます。

  • 残存した機能の強化
  • 代替手段の習得(メモ帳やスマートフォン、ボイスレコーダーの活用など)
  • 環境調整(家族や職場のサポートも含む)

このように、リハビリでは「治す」ことよりも、「できることを増やす」ことに主眼が置かれます。それによって生活の質を高めるとともに、社会復帰を目指すことになります。

高次脳機能障害のリハビリに関する基礎知識

ここでは、高次脳機能障害のリハビリの基本事項について解説します。

リハビリの流れ

高次脳機能障害のリハビリは一般的に、次の3種類のプログラムを段階的に進めていきます。

  • 医学的リハビリプログラム
  • 生活訓練プログラム
  • 就労移行支援プログラム

また、急性期と回復期以降で、リハビリの内容が大きく異なります。

急性期では、命の安定を最優先にしながら、状態に応じて医学的リハビリプログラムを開始します。状態が安定し、回復期に入ると、医学的リハビリプログラムを集中的に行い、主に機能の回復を図ります。

機能がある程度回復し、生活期に入ると、生活訓練プログラムに移行し、代替手段の習得や環境調整などを進めていきます。

さらに、状態に応じて就労移行支援プログラムに移行し、ハローワークなどの就労支援機関などとも連携しながら、職業相談や職業訓練なども実施しつつ、職場復帰を目指すという流れです。

リハビリ期間の目安

高次脳機能障害のリハビリ期間の一般的な目安は、以下のとおりです。

  • 急性期…1ヶ月程度
  • 回復期…数ヶ月~6ヶ月程度
  • 生活期…6ヶ月~1年程度

全体で6ヶ月~1年程度がおおよその目安ですが、適切なリハビリ期間には個人差があり、数年を要するケースも少なくありません。

交通事故による高次脳機能障害で後遺症が残ったケースでは、1年以上を要するケースが多いです。

リハビリができる医療機関

リハビリの効果を上げるためには、適切な医療機関でリハビリを受けることも大切です。

一般的に、急性期・回復期では、脳神経外科がある病院でリハビリを行い、生活期以降では、リハビリ専門の病院や施設などでリハビリを行います。

専門性が高い病院・施設を探すには、最寄りの高次脳機能障害支援拠点機関に相談するとよいでしょう。国立障害者リハビリテーションセンターのホームページには、各地の相談窓口が掲載されています。

高次脳機能障害のリハビリの具体的内容

次に、高次脳機能障害のリハビリにおいて、具体的にどのようなことが行われるのかをみていきましょう。

リハビリの方法

リハビリを開始する際には、まず、具体的な目標を設定し、その目標の達成に向けたリハビリ計画を個別に立てます。そしてリハビリを実施し、定期的に結果を評価した上で、必要に応じて目標やリハビリ計画を見直していきます。

リハビリの方法には、さまざまなものがありますが、主なものを以下に掲げておきます。

リハビリの方法 内容
要素的訓練 記憶・注意・言語など低下した特定の機能を、集中的な作業により回復させる訓練
認知行動療法 認知の歪み(偏った考え方や思い込み)に気づき、より現実的でバランスの取れた考え方へ修正していくことで、心理的安定を図る療法
行動変容療法 感情のコントロールが難しい場合などに、問題行動を望ましい行動へと置き換えていく療法
代償訓練 低下した機能の回復が難しい場合に、メモやスマホなど道具を活用して補うための訓練
家事動作の機能訓練 調理、洗濯、掃除、買い物などの家事を自分で行えるようになるために、日常生活で必要な動作を反復して行う訓練
社会技能訓練 あいさつや会話の進め方などについて、ロールプレイによる練習などを通じて、対人関係や社会生活を円滑に営むために必要なスキルを身につけるための訓練
環境調整 生活しやすい環境や周囲の人との関わり方などを工夫することで、生活上の混乱を減らす

実際には、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、作業療法士、理学療法士、心理専門職などの専門家、および家族も含めてリハビリチームを構成し、多種多様なリハビリ法の中から、本人に合った複数の療法・訓練が採用されます。

症状の種類に応じた訓練方法

リハビリの内容は、症状の種類によっても変わってきます。ここでは、高次脳機能障害の種類別に、主なリハビリの内容をご紹介します。

症状の種類 症状の内容 主なリハビリ例
記憶障害
  • 新しいことを覚えられない
  • 約束を忘れてしまう
  • 何度も同じ質問をする

など

  • 反復訓練
  • 環境調整
  • 内的記憶戦略法(視覚イメージ法、顔-名前連想法、物語作成法など)
  • 代替手段の習得
注意障害
  • 作業を長く続けられない
  • 周囲の状況を判断せず行動を起こそうとする
  • 椅子や車椅子で寝ていることが多い

など

集中力を高めるため、以下のような課題を用いた訓練

  • パズル
  • 教育関連テキスト
  • 間違い探し
  • ゲーム(カルタ、トランプなど)

など

遂行機能障害
  • 約束の時間に間に合わない
  • 作業を途中で投げ出してしまう
  • 今までと異なる手順で作業ができない
  • 作業過程を分解し、各過程をルーティン化する
  • 直接訓練(必要な行為、動作やその組み合わせを練習する)
  • マニュアル利用(手順どおりに自分で作業を遂行する)
  • 行動療法(誘導、暗示の与え方を工夫する)
  • 作業活動課題(組み立てキットなど)
社会的行動障害
  • 興奮しやすい、暴力を振るう
  • 思いどおりにならないと大声を出す
  • 不潔にしていたり、だらしない行為をしたりする
  • 自傷行為をする
  • 環境調整
  • 行動療法

この他にも、多種多様なリハビリ法が存在します。また、症状の具体的な内容は人によって異なりますし、複数の種類の症状を併発しているケースも少なくありません。

したがって、高次脳機能障害になった本人の症状の内容に応じて、オーダーメイドでリハビリプログラムを組むことが重要です。

高次脳機能障害でリハビリを受けるときの注意点

高次脳機能障害でリハビリを受ける際には、以下の3点に注意が必要です。

医師など専門家のアドバイスに従う

リハビリは、医師をはじめとする医療の専門家が策定したプログラムに従い、指示を守って行うことで、効果が高まるものです。

本人や家族の素人判断で指示を守らなかったり、リハビリの内容を変更したりすると、かえって症状が悪化することにもなりかねません。必ず専門家のアドバイスに従ってください。

焦らず気長に取り組む

高次脳機能障害の症状は、長期間をかけて少しずつ回復していくものです。一朝一夕に改善することは期待できませんので、焦らず気長に取り組むことが大切です。

事故前にできていたことが、なかなかできないとイライラすることもあるでしょうが、根気よくリハビリを継続しましょう。

家族など周囲のサポートを受ける

高次脳機能障害のリハビリにおいては、家族をはじめとする周囲の人たちのサポートが不可欠です。

特に、家族が本人の症状を理解した上で、介護や日常生活の見守りを行うことで、本人にとって大きな心理的支えにもなります。

家族が適切に対応することで、症状回復の促進も期待できます。

交通事故による高次脳機能障害で後遺症が残ったときの対処法

交通事故で高次脳機能障害になった場合は、適正な損害賠償金を受け取ることが重要です。後遺症が残った場合には、後遺障害等級の認定を受けることで、高額の賠償金を請求できる可能性が高まります。

適正な後遺障害等級を獲得するためには、まず、治療とリハビリを十分に受け、必要な検査も受けた上で、さまざまな書類を収集しなければなりません。家族の方が「日常生活状況報告書」を作成することも必要です。

リハビリの受け方や、収集した書類の内容次第では、後遺障害認定の結果を左右することもあります。

そのため、賠償金で損をしないためにも、早期に弁護士へご相談の上、専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。弁護士に依頼して、後遺障害等級認定の申請手続きや、加害者側との示談交渉を任せることもできます。

まとめ

高次脳機能障害のリハビリは、医師など医療関係の専門家の指示に従って実施する必要があります。

併せて、交通事故で高次脳機能障害になった場合には、適正な損害賠償金を受け取るために、弁護士の力を借りることも重要です。

弁護士法人オールイズワンには、交通事故による高次脳機能障害のサポートに数多くの実績と経験があります。お困りの際は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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