高次脳機能障害5級を取得し賠償金が大幅にアップした事案~医師面談の記録  Sさんの事例

脳神経外科の医師の後遺障害診断への立会と意識障害に関する弁護士報告書で高次脳機能障害5級を取得し賠償金が大幅にアップした事案

本件は、交通事故で外傷性くも膜下出血(左前頭葉基底部と右側頭頭頂葉部にそれぞれ小出血)の傷害を負った70歳代の女性について、脳神経外科の主治医の先生と面談して後遺障害等級の申請書類の作成について弁護士の意見をお伝えしたことで、高次脳機能障害について5級を取得することに成功し、賠償金額が大きくアップした事案です。

本件では、高次脳機能障害5級の取得により、自賠責保険からの給付額は1,889万円となりました。もし、高次脳機能障害5級を取得できなければ、自賠責保険からの給付額は足の後遺障害による224万円だけですから、約8.4倍にアップしたことになります。

本件では、埼玉では重症の患者さんの最後の砦となっている川越市にある基幹病院で医師面談を行いました。今回の面談は、事故後ずっと治療してきた被害者の方が高次脳機能障害についての後遺障害の診断を受ける日に立ち会うものでしたので、被害者の方と一緒に面談に臨みました。

後遺障害診断をして下さるのは、高次脳機能障害の件では何度もお世話になっている脳神経外科の先生でした。当法人は、外傷により高次脳機能障害を負った方の事案を数多く手掛けておりますので、同じ先生に何度もあたるということが増えてきました。

最初の頃は、いろいろと教えていただくことが多く、脳神経外科診療の実務の手ほどきをいただくようなこともありました。最近では、私から被害者の方について、カルテや看護記録を踏まえながら整理した情報やそれに関する意見をお伝えすると、これを大いに踏まえて下さり、大変感謝している先生のお一人です。

この時も、事前にお願いして実施していただいたMRI、知能検査(Wais-Ⅲ)と記憶検査(WMS-R)の各検査結果と救急搬送記録、カルテ、看護記録、リハビリテーション記録やご家族のお話に基づき用意した後遺障害等級の申請用書類の文案を持参し、先生とお話しさせていただきましたが、じっくりとお話しを聞いてくださり、快く後遺障害診断をして下さいました。

後遺障害診断書等々、ご作成いただいた申請用書類のできあがりを拝見すると、私の用意した文案を丁寧にお踏まえいただき、被害者の方の症状が詳細かつ具体的に記された一連の書類に仕上げて下さっていました。もっとも、意識障害に関する所見がやや弱く、このまま申請すると高次脳機能障害の等級が非該当とされてしまうリスクもありました。

他方で、既に取り寄せていたカルテには、軽度の意識障害所見が1か月以上にも渡り続いていたことが、ハッキリと記録されていました。そこで、カルテに基づき意識障害に関する報告書を作成し、医師が作成して下さった意識障害所見書と矛盾なく、もっと長期間意識障害が持続していたとみるべきことを説明しました。

このような報告書を添えて後遺障害の等級申請をすると、高次脳機能障害について5級の認定を受けることができました。下肢の後遺障害等級と併せて併合4級の認定を受けることができ、賠償金の大きなアップに繋がりました。

主治医の先生は、被害者の方の命を救うという重要任務を負われており、その甲斐あって被害者の方はとても元気な身体に回復されているわけですから、既に任務を全うされています。そうすると、先生の治療の過程に関する記録を後遺障害等級認定に相応しい形に加工して先生に届けるのは、弁護士であるべきだと思います。

等級認定を受けた後、示談交渉も無事終了し、ご本人やご家族にはとてもお喜びいただくことができました。

最後には、ご自宅におうかがいして、ご本人とご主人、お二人の娘さんとゆっくりお話しさせていただき、この後遺障害診断に際しご一緒した日を振り返りました。ご本人も、ご家族も、「あの時は本当に心強かった。」と満面の笑みを浮かべて下さり、当初ご依頼を受けた時にイメージしたとおりの笑顔に出会えたことが、私も嬉しくて仕方ありませんでした。

等級も、最初にお電話でご相談いただいた時に申し上げた併合4級を取得することができ、改めて、主治医の先生を訪れ申請書類を作成することや、医療記録を分析することの重要性を感じた一件でした。

一方で、ここに弁護士が関わらないと、数千万円の賠償金が数百万円になってしまうという、この世界の恐ろしさを改めて感じた一件でもありました。

脳外傷を負われた被害者の方のご家族は、どうか少しでも早く、専門の弁護士にご相談下さい。