交通事故による高次脳機能障害の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由


交通事故で頭部に強い衝撃を受けると、高次脳機能障害により、記憶力や注意力、言語能力、感情のコントロール能力などに支障をきたすような後遺障害が残ることがあります。
しかし、高次脳機能障害は外から見えない障害であるため、後遺障害の症状によっては見過ごされてしまうことも少なくありません。そのため、重大な後遺障害が残っているにもかかわらず、不当に低額の賠償金で示談に応じてしまっているケースも多々、見受けられます。
高次脳機能障害の事案で適切な賠償金を受け取るためには、交通事故という専門分野の中でも、高度に専門的な知識とノウハウを有する弁護士のサポートを受けることが重要となってきます。
この記事では、交通事故による高次脳機能障害の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由とともに、依頼する弁護士を選ぶ際のポイントについてもわかりやすく解説します。
交通事故による高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、脳が損傷を受けたことにより、記憶力や注意力、言語能力、感情のコントロール能力などの脳機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす障害のことです。
脳梗塞などの疾病による場合の他にも、頭部に強い衝撃を受けた場合に生じることがあり、交通事故によっても高次脳機能障害が生じることがあります。
具体的な症状は多岐にわたりますが、例えば、新しいことを覚えられなくなる、物事に集中できなくなる、言葉がうまく出てこなくなる、計画的な行動ができなくなる、怒りっぽくなる、などの症状が挙げられます。
重篤なケースでは寝たきりとなり、生命維持に必要な身のまわりの動作も一人ではできなくなることもあります。
高次脳機能障害で認定される後遺障害等級と賠償金の相場
交通事故で負傷すると、まず、治療期間中の損害に対する賠償金として、以下のうち該当するものを受け取ることができます。
- 治療関係費
- 付き添い看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 休業損害
- 入通院慰謝料
入通院慰謝料の金額は治療期間に応じて算出されますが、高次脳機能障害で後遺障害が残るケースでは、1年以上の治療期間を要するケースがほとんどです。
仮に1年(入院6ヶ月、通院6ヶ月)の治療を要した場合、裁判基準と呼ばれる慰謝料算定基準によると、入通院慰謝料の額は282万円が目安となります。
後遺障害が残った場合は、さらに後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益、場合によっては将来の介護費も受け取れます。
高次脳機能障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、1級1号(要介護)、2級1号(要介護)、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号です。
次の表では、等級ごとの後遺障害慰謝料の目安をまとめています。
後遺障害等級 | 症状 | 後遺障害慰謝料 (自賠責基準) |
後遺障害慰謝料 (裁判基準) |
---|---|---|---|
1級1号 (要介護) |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 1,650万円 | 2,800万円 |
2級1号 (要介護) |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 1,203万円 | 2,370万円 |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 861万円 | 1,990万円 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 618万円 | 1,400万円 |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 419万円 | 1,000万円 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 249万円 | 690万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
自賠責保険で支払われる慰謝料額は自賠責基準で計算されるため、裁判基準による慰謝料額よりも大幅に低額となることに注意が必要です。
加害者側の保険会社は通常、任意保険基準と呼ばれる算定基準を用いますが、後遺障害慰謝料については、自賠責基準とほぼ同額となることが多いです。
後遺障害逸失利益は、被害者の年齢や事故前の年収、認定された後遺障害等級に応じて計算されますが、後遺障害等級が重いほど高額となります。
将来の介護費用は、重度の後遺障害が残った場合に受け取れます。1級(要介護)と2級(要介護)のケースでは原則的に認められ、3級のケースでも認められることが多いです。しかし、5級以下のケースでは、等級が軽くなるほど認められるケースが少なくなる傾向にあります。
高次脳機能障害での示談交渉を弁護士に依頼するメリット
高次脳機能障害での示談交渉を弁護士に依頼するメリットは、以下のとおりです。
ここでご紹介するメリットと、次章でご紹介する「弁護士に依頼せず自分で対応するリスク」とが、高次脳機能障害の示談交渉を「弁護士に依頼すべき理由」となります。
保険会社とのやりとりを任せられる
交通事故の被害者から依頼を受けた弁護士は、代理人として加害者やその保険会社と示談交渉をします。
加害者側とのやりとりは全面的に弁護士が代行してくれますので、被害者やそのご家族は、加害者側と直接やりとりする必要がありません。治療や仕事、家事などに専念できますし、精神的な負担も大きく軽減されるでしょう。
有利な後遺障害等級を獲得しやすくなる
適切な後遺障害等級を獲得するためには、後遺障害として残った症状の内容やその症状が交通事故によって生じたことを、医学的な証拠によって立証する必要があります。
しかし、高次脳機能障害の症状は外見から分かりにくいため、家族など周囲の人が注意深く観察しないと気づかないことがありますし、主治医でさえ見逃すケースも少なくありません。
その点、脳外傷専門の弁護士に依頼すれば、日常生活において注意すべきポイントや、どのような検査を受ければよいのかなどについて、具体的なアドバイスが受けられます。
主治医に対しても弁護士から積極的に働きかけて、診断書や意見書などをはじめとする、後遺障害等級認定の申請に必要な医学的書類の作成に関与してもらえます。
そして、後遺障害等級認定を申請する際には、被害者請求と呼ばれる手続きを弁護士が代行し、充実した医学的証拠を審査機関へ提出してくれます。
一般的に後遺障害等級認定の申請手続きは加害者側の保険会社に任せることが多いですが、以上のように弁護士が積極的に関与することにより、有利な後遺障害等級を獲得しやすくなるのです。
賠償金の増額が期待できる
交通事故の慰謝料の算定基準には、次の3種類があります。
- 自賠責基準…自賠責保険会社が慰謝料を算定する際に用いる基準
- 任意保険基準…任意保険会社が慰謝料を算定する際に用いる基準
- 裁判基準…裁判所や弁護士が慰謝料を算定する際に用いる基準
慰謝料額は裁判基準による金額が最も高く、自賠責基準による金額が最も低くなります。任意保険基準では、自賠責基準と同額か少し高い程度の金額となることがほとんどです。
任意保険会社は通常、任意保険基準による慰謝料額での示談案を提示します。被害者やそのご家族が裁判基準による慰謝料額での示談を希望しても、応じることはほとんどありません。
しかし、弁護士に依頼すれば裁判基準による慰謝料額を請求してもらえて、訴訟提起も視野に入れて保険会社と交渉してくれます。
その他にも、後遺障害逸失利益や将来の介護費用などについても、保険会社はできる限り支払額を抑えようとして、低めに見積もってくることがほとんどです。しかし、弁護士は被害者の後遺障害の程度などに応じて適正な金額を算出して請求し、交渉してくれます。
このようにして、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するだけでも、賠償金の増額が期待できるのです。
弁護士に依頼せず自分で対応するリスク
一方、示談交渉を弁護士に依頼せず、被害者やそのご家族がご自身で対応する場合には、以下のリスクを負うことになります。
適切な治療やリハビリ、検査を受けられないおそれがある
脳機能の低下により、さまざまな症状が出現しても、被害者ご自身が申告しなければ主治医にも分からないことになりがちです。そのままでは、適切な治療やリハビリ、検査などを受けられないおそれがあります。
また、加害者側の保険会社から早期に治療やリハビリの終了を打診されることも多く、弁護士が付いていなければ、安易にこの打診に応じてしまうケースが多いのが実情です。
治療やリハビリ、検査を十分に受けることができなければ、症状が改善しにくいだけでなく、医学的証拠が不足することにより、後遺障害等級認定の審査で不利になる可能性が高くなることに注意しなければなりません。
後遺障害等級認定で不利になりやすい
被害者側に弁護士が付いていないケースでは、後遺障害等級認定の申請手続きを加害者側の保険会社に任せる、「事前認定」という手続きによることがほとんどです。
しかし、加害者側の保険会社は、審査機関へ最低限の書類しか提出してくれません。高次脳機能障害は外見から分かりにくい障害であるだけに、最低限の書類だけでは、後遺障害等級認定で不利になりやすいと言わざるを得ません。
保険会社と対等に交渉するのは困難
加害者側の保険会社の担当者は、交通事故における損害賠償のプロです。専門的な知識に加えて、巧みな交渉術も身に付けています。
それに対し、被害者やそのご家族のほとんどは、初めて交通事故の示談交渉に直面することでしょう。示談交渉に関する知識やノウハウについて、保険会社との力の差は圧倒的です。
保険会社と対等に交渉するためには、どうしても弁護士によるサポートが必要になってきます。
高次脳機能障害の示談交渉を依頼する弁護士を選ぶ際のポイント
高次脳機能障害の示談交渉は、どの弁護士に依頼してもよいというわけではありません。
満足できる結果を獲得するためには弁護士選びが重要となりますので、ここでは、弁護士を選ぶ際のポイントをご紹介します。
交通事故の解決実績が豊富にあること
まずは、交通事故の解決実績を豊富に有する弁護士を選ぶことが大前提です。
弁護士の取り扱い業務は多岐にわたっており、すべての弁護士が交通事故によるトラブル解決に取り組んでいるわけではありません。
しかし、交通事故によるトラブルを適切に解決するためには、弁護士の取り扱い業務の中でも特有の知識やノウハウを要します。このような知識やノウハウは、実際の事案に数多く取り組むことによって蓄積されていくものです。
交通事故の賠償問題に関する経験が浅い弁護士に依頼した場合には、十分なサポートが受けられないおそれもあることにご注意ください。
後遺障害等級の問題に精通していること
高次脳機能障害のケースは適切な後遺障害等級を獲得することが難しい部類の事案ですので、後遺障害等級の事案に精通している弁護士を選ぶことも大切です。
有利な後遺障害等級を獲得するためには、どのような症状が何級何号の後遺障害に該当するのか、その等級の認定を受けるためにどのような医学的証拠が必要になるのか、といった専門的な知識が要求されます。
その上で、主治医へ積極的に働きかけるなどして十分な医学的証拠を確保し、被害者請求の複雑な手続きを的確に進めるためのノウハウも必要です。
高次脳機能障害に関する事案の解決実績が豊富にあること
高次脳機能障害の賠償問題を適切に解決するためには、交通事故による後遺障害の事案の中でも高度な専門性が要求されます。そのため、高次脳機能障害に関する事案の解決実績が豊富にある弁護士を選ぶべきです。
弁護士の実績や重点的な取り扱い分野は、各法律事務所のホームページに掲載されていることが多いです。
弁護士を探す際には、インターネットで検索するなどして、交通事故の中でも高次脳機能障害における後遺障害等級の問題を積極的に取り扱っていて、豊富な解決実績を有する事務所を選び、まずは相談してみることをおすすめします。
説明が分かりやすく相性が良いこと
依頼した弁護士とは、問題が解決するまで、さまざまな連絡や打ち合わせを重ねていくことになります。そのため、説明が分かりやすく、ご自身と相性が良い弁護士を選ぶことも、欠かせないポイントです。
いかに豊富な専門知識を持ち、優れた技術を有する弁護士であっても、説明が分かりにくかったり、こちらの話を聞いてくれなかったりすると、ストレスが溜まってしまうでしょう。依頼した弁護士との意思疎通が不十分であれば、解決方針などで齟齬をきたし、納得のいく結果が得られなくなるおそれもあります。
したがって、弁護士に依頼する前には必ず法律相談を利用し、その弁護士の人となりや、ご自身との相性も確認することをおすすめします。
料金体系が明確で適切であること
弁護士に高次脳機能障害の示談交渉を依頼するために必要な費用は、決して安いものではありません。そのため、依頼する前に弁護士費用についても慎重に確認しておく必要があります。
法律相談の際には、依頼した場合に必要な弁護士費用の見積もりを取り、その内容について詳しい説明を受けましょう。
料金体系が不明確であったり、説明が分かりにくかったりする事務所に依頼すると、相場よりも高額の弁護士費用を請求されたり、後から追加費用を請求されたりするおそれがあるので、注意が必要です。
交通事故の高次脳機能障害における弁護士法人オールイズワンの強み
埼玉県さいたま市の弁護士法人オールイズワンは、2014年に交通事故専門の法律事務所として誕生しました。交通事故の賠償問題の中でも特に後遺障害が残った事案の解決に力を入れており、高次脳機能障害をはじめとする脳外傷の事案についても、豊富な解決実績を有しております。
高次脳機能障害の示談交渉をご依頼いただいた場合には、積極的に主治医に働きかけるなどして十分な医学的証拠を確保するように努めます。その上で、被害者請求による後遺障害等級認定の申請手続きもお任せいただけますので、有利な後遺障害等級の獲得が期待できます。
後遺障害等級の認定を受けた後は保険会社との示談交渉を行いますが、当法人では綿密な裁判例の調査に基づき、裁判基準での示談解決に徹底的にこだわっております。状況次第では訴訟による強制的な解決も可能ですので、最終的に受け取れる賠償金の額に満足していただけることでしょう。
重度の後遺症が残った事案については、全国対応でご相談を受け付けております。
初回の法律相談料は60分まで無料で対応しており、着手金も無料としておりますので、お気軽に当弁護士法人のサービスをご利用いただけます。
交通事故で高次脳機能障害と診断された方や、そのご家族の方は、賠償金で損をしないためにも、お気軽に当弁護士法人までお問い合わせください。