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軽度の高次脳機能障害とは?症状と等級認定における注意点

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軽度の高次脳機能障害とは?症状と等級認定における注意点

高次脳機能障害は、外見からは窺い知ることができない障害です。特に軽度の高次脳機能障害の場合、その発生機序から身体機能的には回復していることが少なくなく、そのため本人は病識を持ちにくく、しかし一方で日常生活の様々な場面で脳機能的な違和感を覚えます。

軽度の高次脳機能障害について等級審査を行う際には、医療機関での治療内容や検査結果等を拠り所とするため、本人の病識欠如により十分な治療やリハビリを受けていない場合、適切な等級が認められません。

このような事態を避けるためには、軽度の高次脳機能障害について正しく理解し、しっかりとした準備を行うことが重要です。そこで、本記事では軽度の高次脳機能障害の概要、及び等級認定のために必要な知識を解説します。

軽度の高次脳機能障害とは?

別表第一第1級又は第2級のような重度の高次脳機能障害の場合は介護が必須となります。一方、軽度の高次脳機能障害は、ある程度の自立した生活動作が可能な状態の方を指します。等級としては別表第二第5級、第7級、及び第9級に該当します。

軽度の高次脳機能障害は、その性質上、介護費用の請求が難しいのが実情です。しかしながら、本人だけでは自己完結できない事柄、問題が多く生じることも事実です。

そのため、等級認定を得た後には、将来の介護費も含めた請求を検討しなければなりません。なお、労災においては、第7級以上の等級では「年金給付」となり、「一時金給付」となる第9級とは大きな差があります。

軽度の高次脳機能障害の症状

記憶障害

「思い出せない」又は「新しいことを覚えられない」等の障害です。
「物を置いた場所を思い出せない」、「買い物の内容を記憶できない」等、日常生活の多くのシチュエーションで支障が生じるため、本人にとっては強いストレスややるせなさの要因となってしまいます。

注意障害

「物事に集中できない」という障害です。
「ケアレスミスが多くなる」、「作業の持続力が低下する」等の形で障害が顕在化するため、特に高次脳機能障害を負った後も就労を継続する方は多大な支障を感じ易く、後の離職の要因となってしまうことがあります。

遂行機能障害

「自分で計画を立てて物事を実行することができない」という障害です。
重度の場合、指示がなければ何もできなくなってしまいますが、軽度の高次脳機能障害を負った方の場合は「段取りが悪い」、「行き当たりばったりな行動をとる」といった形で障害が現れます。

病識欠如

「自分が障害を負っていることについての認識がうまくできない」という障害です。
特に高齢者の方が軽度の高次脳機能障害を負ってしまった場合、病識欠如を生じることが多い印象です。

社会的行動障害

「抑うつ」、「欲求コントロール低下」、「感情コントロール低下」、「対人技能拙劣」、「固執性」、「依存性・退行」、「意欲・発動性低下」等、社会に適応するために必要となる様々な能力に関する障害です。

「人の目を気にせず怒鳴り散らす」、「些細なことに対して怒りを抑えられない」等の激しい易怒性や、「活発だった人が何もせず家に引き籠る」等の意欲低下は、軽度の高次脳機能障害の方の多くが呈する症状です。

軽度の高次脳機能障害と労災の等級認定基準

等級 後遺障害の内容 自賠責・補足的考え方(H12.12.18報告書) 労災新認定基準(H15.8.8基発第0808002号)
【自賠責】別表第二第5級2号
【労災】第5級の1の2
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 「単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」 「高次脳機能障害のため,きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」
a 4能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの
b 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの
【自賠責】別表第二第7級4号
【労災】第7級の3
神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの 「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」 「高次脳機能障害のため,軽易な労務にしか服することができないもの」
a 4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの
b 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
【自賠責】別表第二第9級10号
【労災】第9級の7の2
神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」 「通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,社会通念上,その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているもの

軽度の高次脳機能障害の認定の注意点とやるべきこと

軽度の高次脳機能障害は、検査だけで全貌を把握できる障害ではありません。
例えば、知能についてはWAIS等の検査で数値化できますが、全ての患者において障害の程度に見合った検査結果が出るわけではなく、絶対的な指標にはなりません。

また、高次脳機能障害の原因となる脳損傷等は、CT、MRI等の画像上において明確に写るものばかりではありません。例えば、軽度外傷性脳損傷(MTBI)、びまん性軸索損傷等は、専門医でも判断に難儀します。

このような実情を踏まえ、適切な等級認定を得るためには、診察や診断書の作成を安心して任せられる医師の選択、そして、患者本人では伝えきれない障害の実態を説明できるご家族等のサポートが重要となります。

適切な診察と診断書の作成

高次脳機能障害の診断・治療は、脳神経外科を中心に、リハビリテーション科やその他併発する症状ごとにそれらを専門とする診療科と連携してなされます。
等級申請の際には、次の医証が必要となります。

医証に記載のない障害については等級審査の対象になりません。特に軽度の高次脳機能障害の場合、気付かれにくい形で症状・障害を呈することが多いため、高次脳機能障害に造詣の深い医師を選択し、残存する障害を漏れなく記載してもらうことが重要です。

家族が被害者の変化を医師に伝える

軽度の高次脳機能障害は、仕事上や日常生活上においてその障害を顕在化させます。しかしながら、医師は診察の際の短い時間しか被害者本人の状態を確認することができません。そのため、いかに医師に対して本人の実態を伝えることができるかが非常に重要となります。

ただし、数ある障害内容を五月雨式に説明してしまうと、医師も実態把握に苦慮してしまいます。そのため、認定要件を理解したうえ、必要な情報を整理して伝えるべきです。

等級申請に際しては「日常生活状況報告」という書式を提出することになりますので、この書式に則り本人の状態を整理し、そのうえで医師に説明すると効果的です。

高次脳機能障害の日常生活状況報告書の書き方と注意点

高次脳機能障害に経験豊富な弁護士のサポートを受けることが重要

軽度の高次脳機能障害が本人に与える影響は深刻なものです。従前の社会生活を再現することは限りなく困難であり、身体機能が健常である分、精神的にも大変辛い思いをなされます。

また、ご家族等近親者の方も、被害者と元通りの関係を取り戻そうとする中で、心身ともに疲れ果ててしまいます。このような状況下で複雑な等級申請手続きを行うのはとても骨が折れる作業です。

弁護士法人オールイズワンでは、医師に対してどのように障害内容を説明すれば良いのか、そのために日常生活上のどのような部分に着目すれば良いのか、多岐にわたる検査の中で何を選択すれば良いのか等、等級認定に必要なあらゆる場面でサポートすることができます。

また、必要に応じて当法人の顧問医からのセカンドオピニオンを取り付けることも可能です。さらに、その後の示談交渉についても全面的にバックアップいたします。軽度の高次脳機能障害の場合、等級ごとの賠償金額には大きな差があり、更には将来介護費が認められるか否かでも激変します。

弁護士法人オールイズワンは、交通事故により軽度の高次脳機能障害を負った被害者を数多くサポートしてまいりました。後遺障害に強い当事務所までお気軽にご相談ください。