高次脳機能障害なしと診断されてから逆転で9級を取得し、3,750万円の慰謝料を獲得した事例

「高次脳機能障害なし」の診断から逆転で9級を取得し、3,750万円を獲得した事例

高次脳機能障害なしと診断されてから逆転で9級を取得し、3,750万円の慰謝料を獲得した事例

「高次脳機能障害なし」の診断から逆転で9級を取得し、3,750万円を獲得した事例
後遺障害内容・部位 高次脳機能障害
診断名・症状名
後遺障害等級 9級
主な自覚症状 頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血、脳挫傷

オールイズワンに後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い

賠償項目 獲得金額
後遺障害慰謝料 690万円
増額慰謝料 100万円(裁判基準超)※1
親族慰謝料 90万円(裁判基準超)※1
後遺障害逸失利益 3,676万円(裁判基準超)※2
傷害慰謝料 109万円(裁判基準)
合計額 4,665万円 (裁判基準超)※3
(20%過失認定事案のため、取得額は3,750万円)  
※1 裁判上、後遺障害9級の事案において増額慰謝料・親族慰謝料の認定を受けることは、極めて困難です。
※2 基礎年収  6,487,100円(実収入は6,000,000円)
※3 相手の著しい過失を認めさせることに成功し、過失相殺は20%に留まりました。

ご依頼の経緯

被害者の方は、通院先病院の脳神経外科で、高次脳機能障害はないという診断を受けられましたが、「頭に浮かんでいるはずの言葉をうまく話すことができず、会話のやり取りに時間が掛かり、思考が止まってしまったような感覚に陥ることがある。やはり何かおかしい。」と、弁護士法人オールイズワンに相談にいらっしゃいました。

結果(後遺障害部分)

本件では、主治医の先生が、被害者の方の症状を後遺障害とは思っていないということが最大の問題でした。そのため、弁護士が主治医に高次脳機能障害を認めてもらうために様々な働きかけを行いました。

1.被害者の方が高次脳機能障害であるか判断が難しい事案

弁護士が被害者の方と初めてお話ししたときには、普通に会話ができるせいもあってか、正直申し上げて、高次脳機能に障害ありと見て取ることはできませんでした。

ただ、ご本人の切実な訴えがあること、時折見せる不安そうな表情や、ほんの少しですが苛立ち紛れにもどかしそうにされる表情が、今にして思えば高次脳機能に関連する症状であったのだと分かります。

2.被害者のお母様や勤務先の社長に高次脳機能障害の症状についてヒアリングをおこなう

まず、ご同居のお母様に連絡し、お話を伺いましたが、それほど変わったとは思わないということでした。次に、被害者の方の大学時代からの友人でもある勤務先会社の社長に連絡して、全てを悟ることになります。

社長は、多忙な業務の中、こちらからの連絡に対応して下さっていることもあり、物凄い早口でお話になりました。相当に地頭の良い、切れ者の社長であることは立ち所にわかりました。
その社長は、被害者の方について、本当にリーダーシップのある有能な社員であったこと、事故前は、社長ご自身以上に早口で日本語と英語の両方を駆使され業務のお話をされていたことなどを教えて下さいました。

そして、被害者の方のどこが変わったかという質問に対しては、「どこが変わったとかそういう問題ではない。ずっと苛々していたかと思うと、塞ぎ込んだようにうつむいているなど、人が変わったという他ない。」とお答えになりした。つまり、お会いしたときの被害者の方のあの感じ自体が、高次脳機能障害の症状であることがわかりました。

3.医療記録を取り寄せて後遺障害の再診断をしてもらうための準備をおこなう

医療記録を取り寄せてみると、入院カルテ上、意識障害は軽度でしたが、一緒に取り寄せていた救急搬送記録から、救急隊の現場到着時点では重大な意識障害が生じていることが分かりました。

医療記録は等級取得との関係では重要な事実ですので、主治医に等級申請書類の作成時、救急隊の現場到着時の意識障害を明記していただくよう要請しました。

そして、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血、脳挫傷による各脳実質の損傷部位と症状の整合性を割り出していき、当弁護士法人で通常使用している高次脳シートに落とし込んでいき、方針を固めました。

本件では、ご本人の訴えを重視し、コミュニケーション上の支障、特にスピードの低下を最重視し、意欲低下との関連性や、苛立つことが多くなったことから、情動障害ももう一つの柱としました。

これらを脳の損傷部位と引き合わせながら、医師に作成していただく医学的意見書に書いていただきたい事項を整理し、主治医の方にお会いして、後遺障害の再診断をしていただくための準備を重ねました。

4.弁護士が主治医に高次脳機能障害の症状を報告する

後遺障害再診断の当日、私は被害者の方と2人で、主治医の待つ脳神経外科病院を訪れました。2時間以上待合室で待っていると、漸く番が回ってきました。いよいよ、高次脳機能障害はないと診断した医師との対面です。

弁護士はまず、被害者の方の元同級生で勤務先社長の方のお話を報告書としてまとめていき、それに沿って、医師の方に、症状を詳細にお伝えすることから始めようと決めていました。

冒頭30分近く、主治医の先生が、なぜ、高次脳機能障害はないという診断をなさったかにかんするお話を伺いました。そこには、いろいろなご事情がおありでした。

その後、弁護士が予定どおり勤務先社長の方のお話をまとめた報告書に沿って症状の説明を行いました。主治医の先生は被害者の方の脳画像をご覧になり始めましたので、脳画像に関するお話を、弁護士からも少し説明させていただいた上、損傷部位ごとに整理した症状の存在をお伝えしました。

「なるほど、高次脳機能障害はあるんだね。」と主治医の先生は仰いました。「あるんです!」と言いたくなる気持ちを抑え、私は検査機関のご紹介をお願いしました。すると、主治医の方のお隣にいらした先生が、丁度良い人を知っていると、検査機関の医師をご紹介下さいました。

検査が終わったら、検査結果を持参して、改めて後遺障害の診断をしていただくことを、主治医の先生と約束し、弁護士は病院をあとにしました。「高次脳機能障害なしの診断が、どうやらひっくり返るかもしれない」と、一筋の光が差し込んだ瞬間でした。

5.検査機関で再検査を行う

検査当日、弁護士と被害者の方と2人で、紹介していただいた医師の方の待つ検査機関を訪ねました。まずは、言語聴覚士等検査士の方々との面談となりました。

ここで行う検査は、高次脳機能障害に関する神経心理学テストと呼ばれるもので、知能テストや記憶検査などを行います。実際に検査を行うのは医師ではなく検査士の方々なので、この方々に対し、詳しい症状や希望する検査について伝えておくことは重要です。

本件は、被害者の方の元々の能力が高いこともあって、症状は比較的軽いものでしたので、弁護士が事故前の被害者の方がどれだけ優秀な方であったか、今の被害者の方には一件障害などないように見えるけれども、事故前とは大きく異なっていることを丹念に説明しました。

次に、医師と面談し、改めて、被害者の方に生じている症状を説明し、検査についても詳細な依頼をしましたが、医師の方はただ、「何の検査をするかは検査士が決めるから。」とおっしゃるのみでした。

しかし、検査士の方には既に全て伝えてありましたので安心です。被害者の方にはその日を含め3度、検査に赴いていただき、必要な検査を全て済ませることができました。

6.検査結果を持参して主治医と再面談をおこなう

それから半月ほどすると、検査結果ができあがって、そこには必要な検査結果が全て記載されていました。

検査所見の欄には、被害者の方が元々知的能力の高い方であること、検査結果は標準的だが、元々の能力を踏まえると能力低下が疑われる。説明が上手にできないとか言葉が出ないという被害者の方の自覚があることを踏まえると検査課題中、言葉に関する部分について着目すべき点があるといった趣旨の記載がなされています。

やはり検査機関への同行が威力を発揮していることが分かりました。その翌週には、検査結果をもって主治医の先生のところに伺いました。今回も、被害者の方と弁護士の2人です。

主治医の先生は、検査結果の要旨を説明すると黙ってうなずかれました。その日、主治医は特にお忙しそうでしたが、私は、そんなこともあろうかと、後遺障害の等級申請に必要な書類にご記載いただきたいことは、全て書面にまとめてきていました。

その内容を一通り説明し、それを全てご記載いただけば、症状を全て網羅しており、かつ、画像所見や検査(神経心理学テスト)の結果と矛盾しないことをご理解いただきました。

7.必要書類を準備し等級申請をおこなう

それから2週間後、後遺障害診断書を初め、等級申請に必要な書類ができあがりました。

形式面について若干の手直しをしていただいて、勤務先社長のお話をまとめた書面に社長のご署名・ご捺印をいただいた陳述書、医療記録中、等級認定にプラスになりそうな書類などと一緒に投函します。あとは自賠責保険の調査事務所の等級判断を待つことになりました。

8.後遺障害第9級10号が認定される

3か月半を経過した頃のある日、事務担当が突如、悲鳴を上げたので驚いてそちらを見ると、笑顔満面で等級認定票を手渡してくれました。そこには、後遺障害第9級10号に該当するものと判断する旨記されていました。苦労が報われた瞬間でした。

そこには、「コミュニケーション上の支障や労働意欲の低下から、それほどコミュニケーションを求められず、勤務形態について融通の利く会社に転職している。」との記載が認められ・・・第9級10号に該当するといったことが書かれており、弁護士が医師に記載していただいた事項が等級認定の根拠として採用されていました。

示談交渉の経緯

等級取得後の相手保険会社との交渉では、慰謝料・示談金が裁判基準により高額になるように示談交渉を行います。

相手方保険会社に損害賠償請求書類を送付

等級認定期間中に、示談交渉のための準備は少しずつ進めていましたので、等級認定から数日で、相手保険会社に対し損害賠償請求書類を送付しました。

当初は1週間以内に回答するよう要求していましたが、2週間経っても3週間経っても回答は帰って来ず、結局、保険会社からこの件は「弁護士に依頼する」という返事が来ました。

請求を出してから1か月前後経過してから弁護士に依頼したと言い、それからさらに弁護士からの回答まで何週間もかかるということは、この業界ではよくあることです。

しかし、被害者の方にしてみれば、「交通事故の件から早く解放されたい」というお気持ちですので、こういう仕打ちを受けると本当にがっかりします。

当弁護士法人では、保険会社の担当者ごとの情報を共有し、回答の遅い担当者や、不合理な主張に固執する担当者については、早期に紛争解決機関の利用を提案するなどの取り組みをしています。

相手方弁護士と徹底交渉をおこなう

本件では、弁護士が付いたところから紛争処理センタ―に持ち込めば最大で4か月程度、訴訟なら10か月以上かかることも考慮に入れます。

まずは如何なる形でも良いからどういう内容で解決する意思があるのかと徹底的に相手弁護士に回答を促し続けたところ、2週間程度で最初の回答が出てきました。

こちらが既に諸処の主張を行っていたこともあってある程度の金額提示ではありましたが、未だ後遺障害の評価も、過失割合の点も、こちらの納得のいくものではありませんでした。

裁判基準を超える慰謝料での解決

そこで、後遺障害の点に加え、被害者の方が一線で働いてきたシステム・エンジニアであったこと、その高い能力を交通事故で奪われた。

将来について途方もない不安にさいなまれていることなどを主張して、示談では一般的に異例とされる増額慰謝料認定の必要性を訴えるとともに、過失割合についても、刑事記録をもとに詳細な主張を行った結果、裁判基準を超える金額での解決に辿り着きました。

その結果、3,750万円の慰謝料を獲得することができました。

【関連記事】高次脳機能障害の慰謝料相場とは?算出基準から慰謝料の増額事例まで解説

所感、争点

本件は、事故前のようにリーダーシップを発揮して仕事をすることができなくなってしまい、思った言葉が出てこなくなってしまったと悩む被害者が、主治医から高次脳機能障害がないと言われ、途方に暮れて、弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所の門を叩いたことから始まりました。

いわばマイナスからのスタートでした。このような事案は、弁護士にもやはり緊張が走ります。なかなかタフな仕事になるぞとも思いました。しかし、こんな時にお役に立ちたいからこそ、私は交通事故専門事務所を立ち上げました。

この時既に、弁護士の手元には、この件を逆転で高次脳機能障害ありと診断していただき、後遺障害9級を獲得するだけのノウハウがありましたので「必ず解決できる」という確信がありました。

被害者の方の後日談では、初めてオールイズワンを訪れた日、おそらくは、手に負えないと言われて帰ってくることになると思っていたそうです。しかし、弁護士から「解決方法を考えます」と言われて安心したということでした。

オールイズワンは高次脳機能障害の被害者を一人でも多く救済したい

頭部外傷により高次脳機能障害を負われた被害者の方々を、一人でも多く安心して差し上げ
ることができるよう、今日からまた、全力で業務に打ち込んでいきたいと考えています。

当弁護士法人では、常に裁判基準での示談解決を目標に徹底した交渉を行っています。症状に相応しい等級の取得と、裁判基準での示談解決。頭部外傷により高次脳機能障害を負われた方は、事故後、できるだけ早く、この2つを実現可能な弁護士に相談して下さい。

早く相談すればこそ、医療記録に正しい内容が記載され、事故直後の受傷の状態を検査結果として残すことができるであるとか、後々の立証のために有力な証拠を残すことができるということは、この高次脳機能障害の領域でも少なくありません。

高次脳機能障害を負われた全ての被害者を救済するため、オールイズワンは前進を続けます。