後遺障害7級の認定と約2,000万円の提示を受けていた被害者の件を、受任後、後遺障害5級、総額6,000万円にアップさせ示談解決した事例
後遺障害内容・部位 | 高次脳機能障害 |
診断名・症状名 | 脳挫傷、外傷性くも膜下出血、急性硬膜外血種 |
後遺障害等級 | 5級 |
主な自覚症状 |
2,000万円
6,000万円
2,000万円
6,000万円
オールイズワンに後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い
賠償項目 | 示談交渉前 | 示談交渉後 | 増額分 |
後遺障害逸失利益 | 2,500万円(7級前提) | 3,900万円(5級前提) | 1,400万円 |
後遺障害慰謝料 | 500万円(7級前提) | 1,400万円(5級前提) | 900万円 |
休業損害 | 0円 | 680万円 | 680万円 |
傷害慰謝料 | 85万円 | 200万円 | 115万円 |
過失割合 | 30% -1,000万円 | 2.86%(実質)-180万円 | 820万円 |
ご依頼の経緯
本件は、夜間、住宅建築工事中の現場を自転車で通りかかった被害者が、現場に何の目印もなく張られていたロープに引っ掛かって転倒し、頭部を強打して頭部外傷を負ったという事案でした。
事故前とあきらかに変わってしまった被害者の弟様からご相談を受け、お引き受けすることになりました。
オールイズワンがこの件を引き受ける前の段階では、保険会社が選任した弁護士が被害者に30%過失があるとして譲らず、したがって賠償金も約3分の2になるという主張をしていました。
オールイズワンが引き受けた後は、被害者に過失はないということを徹底的に主張し、過去に同種事案について被害者の過失はゼロであるとしたある裁判例と本事案の類似性を強く訴えました。
その結果、最終的に相手保険会社側弁護士もその点について理解を示し、最終的に総額6,000万円で解決しました。ここから逆算して過失割合を割り出すと、被害者の過失は2.86%であったことになります。
高額の事案となったため、過失割合が30%から2.86%へと減少したことで、獲得金総額を大きく押し上げることに成功しました。
結果(後遺障害部分)
(1)オールイズワンが受任する前の段階で、被害者は、既に高次脳機能障害7級の認定を受けていました。
たしかに、Wais-Ⅲという知能テストの結果、被害者の知能はこの事故の後も維持されており、異常所見なしと言えばそのとおりだったかもしれません。
しかし、WMS-Rという記憶テストの結果は、被害者に障害が残されたことをハッキリ示しており、その他にも、集中力が続かないなどの注意機能低下や、感情をうまくコントロールできない情動障害、意欲の低下などの症状が見られました。
何より、このような症状のために、被害者の方は事故に遭って以来、長期にわたって仕事に復帰することができずにおり、オールイズワンでは、後遺障害は7級より上位の5級と認められるべきであるという結論に達しました。
他方で、意識障害所見や画像所見といった、上記のような検査の結果を裏付ける医学的所見は歴然として存在していました。
特に、画像所見については、事故直後、両側の前頭葉と左の側頭葉にかなり明確な脳挫傷の所見があり、事故から約2年後のMRIでもこれら脳挫傷の痕跡が認められ、かつ、脳挫傷部位の萎縮が認められました。
これらの所見は、上記の5級が認められるべきという仮説を十分に裏付けてくれるものでした。
(2)とは言え、既に相手保険会社の認定が7級とされてしまっている以上、これをひっくり返すのは大変です。特に、この件は交通事故ではなかったため、自賠責保険の認定手続きのような異議の制度がなく、相手弁護士に対し7級ではなく5級が正しいと訴えていく他ありませんでした。
それでも、本件は7級か5級かで3,000万円以上の開きが出てしまう事案で、かつ、被害者は未だに仕事に戻れずにいましたから、簡単にあきらめるわけにはいきません。そこで、主治医の先生が後遺障害診断に際して作成された書類を一通り改変してもらうことにしました。
大要、後遺障害診断の際には、他院で行われた記憶テストなどの結果を把握していなかったことから被害者に対する問診が十分にできず、そのために症状が軽いかのような診断書となっていたが、新たに検査結果を踏まえて問診した結果、より症状が重いことが分かったという内容の意見書を頂き、等級申請書類の一つである医学的意見書についても、いくつもの項目について、オールイズワンが引き受ける前よりも重い症状が出ているという内容の意見を頂くことができました。
これにより、被害者が高次脳機能障害5級相当の障害を残していることを裏付ける医証ができあがりました。
ご多忙を極める中、長時間を割いて被害者のためにご尽力下さった主治医の先生は、本当に被害者思いの素晴らしい先生だと思います。
示談交渉の経緯
医証はできあがりましたが、本件では、これをもとに相手の弁護士と交渉しなければなりません。本件は交通事故ではなく、自賠責保険への異議申し立てという手段が使えないためです。
そこで、弁護士に対し、新たに出来上がった医学的な証拠に基づき、本件被害者の後遺障害は、保険会社が認定した高次脳機能障害7級ではなく5級にあたり、賠償金は大幅に増額されなければならないという内容の主張をしました。
交渉は、様々な損害費目に関する賠償額や過失割合の問題など多岐にわたりましたが、最終的には、目標どおりの示談金額での解決に至ることができました。
まず、オールイズワンの受任前には相手方保険会社がゼロとしていた休業損害については約680万円の認定を受けました。また、7級を前提として保険会社が約2,500万円を提示していた後遺障害逸失利益については約3,900万円の認定を得ました。
慰謝料についても大幅にアップしました。受任前、保険会社が約85万円としていた傷害慰謝料は約200万円となり、同じく7級を前提として約500万円としていた後遺障害慰謝料は1,400万円となりました。
冒頭で述べた過失割合についても、被害者の過失を2.86%とする解決に漕ぎつけ、結局、総額6,000万円で解決することができました。
所感、争点
主治医の先生に後遺障害診断書類を一から書き直してもらったことや、保険会社の後遺障害等級認定を覆す交渉となったことから、長期間を要しましたが、結局、お引き受けする前、2,189万円だった保険会社の提示を6,000万円まで引き上げることに成功しました。後遺障害等級も7級からより上位の5級にアップしています。
被害者が仕事に戻ることができないという現実を前に、妥協が許されない状況でしたが、正直、業務を遂行する中で、全く出口が見えず、どうしてここまでやってしまったのだろうと思う日もありました。
それでも、ここまで来てみて、挑戦して良かったと思います。後遺障害7級の認定を根本から疑い、主治医に対し、一度した診断と異なる診断を要請するという一見無謀とも思える試みですが、オールイズワンでは、必要な場合には常にこのような取り組みをしています。
しかし、この取り組みが功を奏するのは、主治医の先生が協力して下さればこそです。治療が本業の医師の方々にとって、後遺障害に関する書面作成は「関係のない」仕事であり、実際にそのように仰っていただいたこともあります。それでも、お忙しい中、笑顔でご協力くださり、「よくやるねえ。」などと仰って下さる医師の方々や、この件でもオールイズワンに惜しみなくご協力下さった当法人の顧問医の先生方に心からの感謝を申し上げて、結びにかえさせていただきます。