交通死亡事故の慰謝料相場と請求できる項目について

交通死亡事故の慰謝料相場と請求できる項目について

交通事故の被害者が死亡してしまった場合、遺族は加害者に慰謝料を請求することができます。死亡事故の慰謝料は非常に高額ですが、請求の方法によっては慰謝料に大きな差がつくことがあります。

 

そのため、適正な慰謝料の金額を獲得するためには、死亡事故ではどのような項目の慰謝料が請求できるのか、死亡事故の慰謝料相場はどれくらいなのか、遺族の間で慰謝料の配分はどうなるのかを把握しておくことが大切です。
この記事では、不幸にも死亡事故に遭われた被害者とご遺族の方に向けて、交通死亡事故の慰謝料相場と請求できる項目について解説していきます。

死亡事故は被害者と遺族の両方に慰謝料が認められている

大切なご家族を交通事故で亡くしたご遺族の悲しみや苦しみは計り知れないものです。そのため、死亡事故の被害者本人はもちろん、ご遺族にも精神的苦痛に対する慰謝料請求権が認められています。
ただし、死亡事故の場合、被害者本人が加害者に対して慰謝料を請求することができません。そのため、死亡してしまった被害者の慰謝料請求権は法定相続人である遺族に相続されることになり、遺族には被害者と遺族の両方の慰謝料を請求できる権利があります。

 

なお、死亡事故で加害者に請求する慰謝料を「死亡慰謝料」と言います。

被害者の慰謝料の違い(一家の支柱、子供、高齢者)

交通事故の損害賠償請求では、一般的に被害者の年齢や職業、家族構成など様々な要素を考慮して慰謝料の金額を算定します。死亡慰謝料の場合、それに加えて被害者が「一家の支柱」であるかが重視されます。一家の支柱とは、主として一家の生計を維持している者を指します。死亡事故の被害者が一家の支柱の場合は母親や妻や独身の若年者に比べて高い死亡慰謝料が認められています。
また、死亡事故の被害者が子供の場合、家族の精神的苦痛は平均的な死亡事故で受ける精神的苦痛を超えるものと認められることが多く、慰謝料が高額となるケースが多いと言えます。

 

被害者が高齢の場合は、若年者より低い慰謝料になってしまうと考えている方も少なくありません。しかし、交通事故で命を失った精神的苦痛は、年齢によって変わるものではありません。実際は、死亡事故の場合、高齢者の場合でも一般的な独身男女と同程度の死亡慰謝料が認められることがよくあります。

遺族の慰謝料

死亡事故では、被害者のご家族も強い精神的苦痛を受けることから遺族固有の慰謝料が認められています。
ただし、遺族として死亡事故の慰謝料を請求できるのは民法第711条に定められている、「被害者の父母・配偶者・子」に限られます。該当する者のことを「遺族慰謝料請求権者」と言います。
自賠責保険基準では、遺族固有の慰謝料は遺族慰謝料請求権者の人数によって決まります。具体的には、遺族慰謝料請求権者が1人の場合550万円、2人の場合650万円、3人以上の場合750万円となります。また、被害者に被扶養者がいる場合は、1人の場合750万円、2人の場合850万円、3人以上の場合950万円となります。

死亡事故の慰謝料計算には3つの基準がある

交通事故の慰謝料の算定基準は、自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準の3つの基準があります。どの基準に基づいて死亡事故の慰謝料を算定するのかで最終的な慰謝料の金額が大幅に変わります。
交通事故に遭った場合、ほとんどは加害者が加入している任意保険会社に慰謝料の計算を任せることになります。ただし、保険会社は独自の支払い基準に基づいて慰謝料を算定するため、被害者に不利な示談金額を提示しているのが実情です。

 

実際に、交通事故の損害賠償請求でかなりの金額を損している被害者は非常に多いと言わざるを得ません。正当な死亡慰謝料を獲得するためにも3つの基準の違いについて理解しておくことが大切です。

自賠責保険基準

自賠責保険(共済)は、加害者が支払いを拒否した場合や任意保険に加入していない場合などに、国が交通事故被害者に最低限の補償を行うために設けられた制度です。そのため、自賠責保険基準は3つの基準の中で最も低い金額となります。
自賠責保険基準における、被害者本人に対する慰謝料は、被害者の年齢や家族構成等に関わらず一律350万円と定められています。これは子供の場合も同様です。

 

他にも葬儀費や被害者本人の逸失利益が加算されます。なお、自賠責保険基準の死亡慰謝料の限度額は全体で3,000万円と定められています。

    「自賠責保険基準の死亡慰謝料の相場」

  • ・本人慰謝料一律350万円+遺族慰謝料550万円~950万円+葬儀費+逸失利益(被害者)

※逸失利益は、被害者が死亡しなければ将来得られたであろう収入から、本人の生活費を控除して計算します。

任意保険基準

任意保険は、自賠責保険でカバーできない損害部分を補償するための保険です。任意保険基準は各社が独自に賠償金額の算定基準を持っていますが、任意保険基準の算定基準は公表されていません。一般的に、任意保険基準は自賠責保険基準をベースとした算定基準が用いられています。
そのため、自賠責基準より少し高い程度の賠償金額になることが一般的であり、裁判所基準と比べると大きな差が出るケースがほとんどです。

裁判所基準(弁護士基準)

裁判所基準とは、過去の交通事故の判例を基にした計算方法です。交通事故の損害賠償請求における計算方法の中で最も高い金額となるのが裁判所基準です。
弁護士に交通事故の損害賠償請求を依頼した場合、裁判所基準を用いて慰謝料を計算するため、弁護士基準とも言われています。つまり、弁護士に依頼した場合は裁判所基準が採用されることになり、適正な死亡慰謝料が獲得できます。

    「裁判所基準の死亡慰謝料の相場」

  • ・被害者が一家の支柱の場合2700万円~3400万円(本人慰謝料+遺族慰謝料)+葬儀費+逸失利益等
  • ・一家の支柱に準ずる場合(※)2400万円~3200万円(本人慰謝料+遺族慰謝料)+葬儀費+逸失利益等
  • ・その他の場合2000万円~2500万円(本人慰謝料+遺族慰謝料)+葬儀費+逸失利益等

また、裁判所基準では、加害者の態度が悪質だった場合や重過失がある場合、事故形態が法に違反する場合などは死亡慰謝料の増額が認められるケースもあります。
※一家の支柱に該当しない者のうち、家事の中心をなす主婦、養育が必要な子を持つ母親、独身者であっても高齢な父母や幼い兄弟を扶養し、あるいはこれらの者に仕送りをしている者などを「一家の支柱に準ずる者」と言います。

死亡事故で死亡慰謝料等以外に請求できる慰謝料

逸失利益

逸失利益とは、「事故がなければ得られたであろう収入や利益」のことです。死亡逸失利益とも言います。通常の逸失利益は、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(就労可能年数に対応する中間利息控除係数)= によって算定されますが、死亡事故の場合、基礎収入から、本人の生活費割合を控除し、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を乗じて算定します。

    「死亡事故の逸失利益の計算方法」

  • ・基礎収入額×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数=死亡逸失利益

葬儀関係費

死亡事故の損害賠償請求事件において、被害者の葬儀関係費用を請求することができます。裁判所基準では、原則として150万円が認められています。
ただし、葬儀を行い、実際に支出した額がこの範囲内で認められます。他方で、150万円を超える費用がかかったことを立証すれば、その費用が認められることもあります。また、香典については損害額から控除されませんが、香典返しの支出分は損害と認められていません。

死亡事故の慰謝料は法定相続人の間で分配される

死亡事故の慰謝料分配は、被害者が遺言書を作成している場合を除き、相続財産同様に相続人の間で分配することになります(法定相続)。なお、遺言書を作成している場合は、原則として遺言書の内容に従って相続することになります。
法定相続では、被害者との関係により優先順位・相続できる財産の割合が定められています。法定相続の優先順位が高い順から下記のような相続割合になります。

  • ・配偶者のみの場合・・・100%
  • ・配偶者と子供・・・配偶者2分の1/子供全体で2分の1(2分の1を子供の人数で均等割)
  • ・配偶者と父母・・・配偶者3分の2/父母それぞれ6分の1
  • ・配偶者と兄弟姉妹・・・配偶者4分の3/兄弟姉妹全体で4分の1
  • ・子供のみ・・・子供100%
  • ・父母のみ・・・父母それぞれ50%
  • ・兄弟姉妹のみ・・・兄弟全体で均等に分ける

ただし、法定相続は相続人同士の合意があれば上記の内容に従って分配する必要はありません。法定相続人の間で分配率を決め、分配することもあります。

まとめ

今回は、交通死亡事故の慰謝料相場と請求できる項目などについて解説しました。たとえ死亡事故であっても保険会社が適正な示談金を提示してくれることはありません。
弁護士に死亡事故の慰謝料請求を任せることで保険会社から提示される示談金から大幅に増額することが一般的です。不幸にも死亡事故の被害に遭った被害者の無念を晴らすためにも、ご家族の精神的負担を軽減するためにも、遺族の方は適正な賠償金を獲得しなければいけません。