高次脳機能障害の異議申立てとは?手続きの流れや成功させるためのポイントも解説


交通事故で頭部に衝撃を受けると高次脳機能障害になり、日常生活や仕事に支障が生じることがあります。しかし、後遺障害に該当しない(非該当)と判断されたり、不当に低い後遺障害等級に認定されるケースも少なくありません。
そんなときは、異議申立てをすることで、再審査を求めることが可能です。とはいえ、高次脳機能障害で適正な後遺障害等級を獲得するためには、専門的な知識や経験が要求されます。
この記事では、高次脳機能障害の異議申立ての手続きの流れや、異議申立てを成功させるためのポイント、注意点などについて解説します。
高次脳機能障害の異議申立てとは
異議申立てとは、交通事故で負った後遺症について、後遺障害等級認定の結果に納得できない場合に、再審査を求める手続きのことです。
高次脳機能障害は、他の後遺障害と比べて適正な後遺障害等級を獲得するのが難しい傾向にあることから、異議申立てをすべきケースも少なくありません。
異議申立ての回数に制限はないため、何度でも申し立てることが可能です。ただし、当初の後遺障害等級認定申請時と同じ資料を提出するだけでは、認定結果を覆すことは難しいです。
そのため、異議申立てを行う際には、新たな医学的証拠を収集して提出するなどの対策が重要となります。
高次脳機能障害の後遺障害認定が難しい理由
高次脳機能障害の後遺障害認定が難しい傾向にある理由は、主に次の3つです。
外見からは分かりにくい障害であるため
高次脳機能障害は脳の損傷が原因となって発症するため、外からは分かりにくい障害です。
被害者は一見すると正常で、普通に会話ができることも多いため、外見からは障害を抱えていることが分かりにくいという特徴があります。
被害者自身が症状を自覚していないケースや、自覚していても医師に対して的確に伝えられないケースも多く、そのために主治医が高次脳機能障害を見落とすことも珍しくありません。
医師による正確な診断が得られなければ、後遺障害の適正な認定を受けることは非常に困難となります。
医学的証拠が不足しがちであるため
後遺障害等級認定の審査は、原則として書面のみで行われます。そのため、医師が作成する後遺障害診断書の他、MRIやCTなどの画像、神経学的検査の結果など、客観的な医学的証拠を十分に提出することが重要です。
しかし、患者側から医師に具体的な症状を伝えることができなければ、適切な検査が行われません。また、後遺障害の認定基準を把握している医師は少ないため、医師が症状を把握していても、十分な検査が行われないこともあります。
このような理由で医学的証拠が不足し、審査で不利になるケースも少なくありません。
日常生活や就労への支障の証明が難しいため
高次脳機能障害の主な症状である記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などは、日常生活や職場で折々に現れます。
その具体的な状況を、診察時の短い会話の中で医師に伝えることは困難です。そのため、被害者の家族が注意深く見守り、症状の内容や経過を記録していくことが重要となります。
具体的かつ継続的な記録がなければ、日常生活や就労への支障を証明することが難しくなり、後遺障害に非該当、または不当に低い後遺障害等級に認定される可能性が高まります。
高次脳機能障害の異議申立ての流れ
高次脳機能障害の異議申立ての手続きは、以下の流れで進められます。
- ① 異議申立書の作成・提出
- ② 自賠責損害調査事務所にて再審査
- ③ 結果の通知
異議申立書の提出から結果が通知されるまでの期間は、2ヶ月~4ヶ月程度が目安です。ただし、再審査は初回申請時の審査よりも慎重に行われるため、審査期間は長引く傾向にあり、6ヶ月以上を要することも珍しくありません。
このように、異議申立ての手続きの流れは、さほど複雑なものではありません。しかし、認定結果を覆し、納得のいく結果を得るためには、次にご説明するように、いくつかのポイントに注意する必要があります。
高次脳機能障害の異議申立てを成功させるためのポイント
単に「納得できない」というだけの理由で異議申立てをしても、認定結果を覆すことは期待できません。高次脳機能障害の異議申立てを成功させるために注意すべきポイントは、以下のとおりです。
現在の認定理由を徹底的に分析する
まずは、現在の認定結果が導き出された理由を把握する必要があります。
現在の認定理由は、保険会社から送付された「後遺障害等級認定結果通知書」に必ず記載されていますので、よく読みましょう。
- 脳の損傷が画像で確認できない
- 事故直後の意識障害が確認できない
- 日常生活における具体的な症状が確認できない
他にもさまざまなケースがありますが、何が不足していたのかを徹底的に分析することで、はじめて反論すべきポイントが分かります。
新たな医学的証拠を収集する
反論すべきポイントが分かったら、その内容を裏づける医学的証拠を新たに収集する必要があります。
例えば、画像資料が不足していた場合には、通常のMRIやCTだけでなく、SPECT検査 (単一光子放射断層撮影)などのより詳しい画像検査を受けることが考えられます。
神経心理学的検査についても、WAIS-IV(成人知能検査)やWMS-R(ウェクスラー記憶検査)だけでなく、CAT(標準注意検査法)やBADS(遂行機能障害症候群の行動評価)、RBMT(リバーミード行動記憶検査)など、障害の内容に応じた詳しい検査を受けた方がよいでしょう。
主治医に反論の意見書を作成してもらうことも、有効となることが多いです。
十分な医学的証拠を確保するためには、高次脳機能障害に関する医学的な知識も要求されます。
日常生活や就労への支障に関する証拠を補強する
日常生活や就労への支障の内容は、当初の申請時に「日常生活状況報告書」に記載して提出しているはずです。しかし、その記載が不足しているケースも少なくありません。
その場合には、家族や職場の上司・同僚などの関係者が、改めて本人の問題行動やトラブルのエピソードなどを記載した陳述書を作成することが重要です。
その際には、いつ、どこで、どんな問題が発生し、それに対して周囲の人がどのようなサポート(監視や声かけも含みます。)を余儀なくされたのかを、具体的に記述することがポイントとなります。
被害者請求で申立てる
後遺障害認定の申請や異議申立ての手続きには、加害者側の保険会社に任せる「事前認定」と、被害者側ですべての手続きを行う「被害者請求」という2つの方法があります。
異議申立てを事前認定で行う場合は、異議申立書を保険会社に送付するだけで済みます。しかし、保険会社が新たな証拠を収集することは基本的にないため、認定結果を覆せる可能性は低いと言わざるを得ません。
それに対して、被害者請求で行う場合には、追加の資料を自由に収集・提出できます。高次脳機能障害の異議申立てでは、証拠の追加が極めて重要なポイントとなりますので、被害者請求で行った方が、認定結果を覆せる可能性が高まります。
高次脳機能障害の異議申立てに関する注意点
その他にも、高次脳機能障害の異議申立てを進めるに当たって、注意すべきポイントがいくつかあります。
MRIやCTで異常がなくても後遺障害に認定されるケースはある
高次脳機能障害で後遺障害の認定を受けるためには、基本的に画像検査で脳の器質的病変(頭部外傷による損傷など)が認められ、それが原因となって認知機能に障害が生じていなければなりません。
しかし、交通事故による頭部外傷でも、びまん性軸索損傷のケースでは、画像による他覚的所見が認められないこともあります。
びまん性軸索損傷とは、脳が強く揺さぶられることにより、神経線維(軸索)が広範囲に引き伸ばされたり断裂したりする損傷のことです。この損傷は受傷直後の画像検査では確認できないことも多く、その後もCT検査では明確に確認できないことがあります。
MRI検査でも通常の撮影方法では他覚的所見が確認できないケースがあり、T2強調画像や拡散強調画像など、高度な手法による検査を受けることが重要です。
また、他覚的所見が認められなくても、神経障害として後遺障害に認定されるケースもあります。
そのため、MRIやCTで脳に異常が認められなくても、後遺障害認定の申請や異議申立てを諦める必要はありません。
申立てに期限はないが時効がある
異議申立ての期間に制限はありません。そのため、当初の認定結果に納得できない場合は、認定理由の分析や新たな証拠の収集などにある程度の時間をかけてでも、入念に準備を行う方が得策です。
ただし、損害賠償請求権には時効があります。民法上の時効期間は症状固定日の翌日から5年とされていますが、自賠責保険金請求権の時効期間は、自動車損害賠償保障法により3年とされています。
異議申立てを繰り返したり、放置していたりすると、3年が経過して異議申立てができなくなるおそれがあるため、早期に異議申立ての手続きを的確に行うことが重要です。
成功率は低いが諦める必要はない
高次脳機能障害の異議申立ての成功率は、おおよそ10%程度と言われています。
ただし、事前認定の方法で異議申立てを行っているケースや、いわゆる「ダメもと」で異議申立てを行っているケースも多いため、実質的な成功率はもう少し高いと考えられます。
新たな医学的証拠を追加したり、日常生活状況に関する証拠を補強したりすることで、異議申立てに成功するケースは少なくありません。成功率が低いからといって異議申立てを諦める必要はなく、当初の認定結果に納得できない場合は異議申立てを検討しましょう。
高次脳機能障害の異議申立てを弁護士に依頼するメリット
高次脳機能障害の異議申立てには専門的な知識や経験が要求されるため、弁護士への依頼が有効です。弁護士のサポートを受けることで、以下のメリットが得られます。
- 当初の認定理由や反論すべきポイントを的確に把握できる
- 医師との連携により、新たな医学的証拠を十分に収集できる
- 日常生活状況に関する新たな証拠の作成もサポートしてもらえる
- 説得力のある異議申立書を作成してもらえる
- 被害者請求の手続きを一任できるため、時間的・精神的な負担を軽減できる
- 加害者側との示談交渉も一任できる
- 弁護士基準による慰謝料を請求してもらえるため、賠償金の増額が期待できる
異議申立てを弁護士に依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
まとめ
高次脳機能障害による後遺障害は、見過ごされることも少なくありません。賠償金で損をしないためにも、当初の認定結果に納得できない場合は、異議申立てにより適正な後遺障害等級を獲得することが大切です。
ただし、単に「納得できない」というだけの理由で異議申立てをしても、良い結果は期待できません。そのため、異議申立てが必要な場合には、弁護士による専門的なサポートを受けることをおすすめします。
オールイズワンでは交通事故による後遺症を専門的に取り扱っており、特に高次脳機能障害など重大事故の解決実績が豊富にあり、絶対的な強みを持っています。
高次脳機能障害による後遺障害の認定結果に納得できない方は、お気軽に当事務所へご相談ください。





