交通事故の刑事裁判で被害者が知っておくべきこと


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【監修】 弁護士 青木芳之
/弁護士法人オールイズワン浦和総合法律事務所交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。
交通事故の損害賠償に注力する弁護士です。特に重大事故(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷、死亡事故など)は実績豊富です。最大限効果がある解決策をご提案します。
交通事故で重大な被害に遭われた方や、そのご遺族の方は、加害者を適正に処罰してほしいと強く願われることでしょう。
しかし、刑事裁判では、被害者の希望どおりに加害者が処罰されるわけではありませんし、すべての加害者が刑事裁判にかけられるわけでもありません。
とはいえ、被害者側の意見を刑事手続きに反映させる方法は存在します。
この記事では、交通事故の刑事裁判について被害者やご遺族が知っておくべき基本的な知識から、加害者の刑事責任を追及するための「被害者参加制度」、そして後悔しないための具体的なポイントまで、分かりやすく解説します。
民事裁判と刑事裁判の違い
まず、交通事故の裁判には民事と刑事の2種類があることを知っておきましょう。
民事裁判は、加害者が被害者に損害賠償金としていくら支払うべきかを審理する手続きです。通常、被害者(原告)が加害者(被告)を訴えることになり、原告と被告は対等の立場で主張や証拠を出し合います。
裁判所は中立・公平な立場で主張や証拠を精査し、どちらの言い分が法的に正しいかを判断して、最終的に判決で被告に対して金銭の支払いを命じます。
刑事裁判は、国が犯罪の容疑をかけられた人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑罰を科すべきか(量刑)を判断する手続きです。
当事者は検察官(国の代表)と加害者(被告人)であり、被害者は直接の当事者ではありません。検察官は犯罪事実と量刑の根拠となる事実のすべてを立証する責任を負っており、犯罪事実の証明が不十分な場合、加害者は無罪となります。
民事裁判の結果、賠償金が支払われたとしても、それだけで加害者の刑事上の罪が消えるわけではありません。また逆に、刑事裁判で罰金刑や拘禁刑が科されても加害者の民事上の損害賠償義務は残ります。
加害者が罰金を支払ったとしても、そのお金が被害者に支払われるわけではないという点に注意が必要です。
交通事故で刑事裁判になるまでの手続きの流れ
事故が発生してから加害者が刑事裁判にかけられるかどうかが決まるまでには、以下の流れで警察と検察による捜査が行われます。
事故直後の対応
交通事故が発生したら、警察に通報することが法律で義務づけられています。
警察官が現場に到着し、事故の発生状況などについて簡単な聴き取りが行われます。このとき、被害者は事故の状況をできる限り正確に伝えることが重要です。
ただし、被害者の怪我の程度が重い場合はただちに救急車で搬送され、事情聴取は後日行われることもあります。また、怪我をした被害者の方は、必ず「人身事故」として届け出るべきです。
実況見分調書の作成
事故後、日を改めて事故現場で実況見分が行われます。
これは、警察が現場や周辺の状況、ブレーキ痕などを詳細に調べた上で、加害者・被害者・目撃者からそれぞれ、事故当時の双方の車の動きなどを聴き取り、事故の発生状況を明らかにするための捜査です。
この捜査結果が記載された「実況見分調書」は、事故の発生状況を客観的に証明する極めて重要な証拠となります。そのため、被害者は現場で警察官からの質問に答えながら、当時の状況を記憶に従って正確に伝えることが重要です。
供述調書の作成
警察と検察は、実況見分とは別に、加害者・被害者・目撃者などの関係者から事故当時の状況や心情について聴き取りを行い、「供述調書」を作成します。
供述調書も刑事裁判において重要な証拠となるため、事実については記憶のとおり正確に供述し、被害感情については「厳しく処罰してほしい」というように本音を述べることが大切です。
供述調書に署名・押印すると、後からその内容を撤回することは非常に困難となるため、書かれた内容に事実と異なる点がないか、しっかり確認してから署名・押印しましょう。
起訴・不起訴の決定
警察での捜査が終わると、事件が検察官に送られます(検察官送致)。加害者が勾留されている場合はその身柄も一緒に送致されますが、在宅捜査が行われている場合は事件の書類や証拠のみが送致されます(書類送検)。
検察官は、関係者からの事情聴取などの捜査を補充的に行った上で、集まった証拠をもとに加害者を裁判にかける(起訴)か、かけない(不起訴)かを決定します。
起訴・不起訴は、あくまでも加害者を処罰すべきかどうかという観点から決められます。被害者やご遺族が不起訴に納得できない場合は、「検察審査会」への申立てが可能です。
検察審査会では不起訴処分の妥当性が検討され、「起訴相当」「不起訴不当」と判断された場合は、検察官が再度、起訴・不起訴の判断をすることになります。
交通事故の刑事手続きにおける起訴・不起訴の基準
交通事故を起こしたからといって、すべての加害者が起訴されるわけではありません。
起訴・不起訴の判断基準は法律で定められているわけではありませんが、一般的には主に次のような観点から総合的に判断されます。
- 犯行態様の悪質さ
- 被害結果の重大性
- 社会的な影響の大きさ
- 示談の成否
それでは、交通事故の刑事手続きにおいて、起訴されやすいケースと不起訴になりやすいケースを、それぞれみていきましょう。
起訴されやすいケース
次のような事情がある場合には、起訴されやすい傾向にあるといえます。
加害者に故意または重過失がある場合
無免許運転や飲酒運転、著しいスピード違反、ことさらな赤信号無視、救護義務違反(ひき逃げ)などが代表例として挙げられます。
重大な被害が生じた場合
被害者が死亡した場合や、重大な後遺障害が残るような傷害を負った場合などが挙げられます。
加害者に前科や前歴がある場合
過去にも人身事故を起こしている場合や、交通規則違反を繰り返している場合、他の刑事事件を犯したことがある場合などが挙げられます。
被害者が加害者の厳しい処分を望んでいる場合
被害者側が抱く処罰感情も、ひとつの判断要素となります。ただし、あくまでも、さまざまな要素を総合的に考慮して、起訴・不起訴が判断されることに注意が必要です。
不起訴になりやすいケース
一方で、不起訴になりやすい事情として次のようなものが挙げられます。
被害が軽微な場合
被害者の負傷が全治数週間~数ヶ月程度の比較的軽傷である場合は、起訴されないことが多いです。
加害者の過失が小さい場合
被害者側が飛び出した場合など、過失割合において被害者の影響も大きいと判断できる場合などが挙げられます。
示談が成立している場合
加害者と被害者との間で民事上の示談が成立し、被害者側が処罰を望まない意向であるときは、不起訴になりやすい要素のひとつとなります。
加害者が深く反省し、前科がない場合
加害者が初犯であり、真摯な謝罪や反省の情が見受けられる場合も、不起訴になりやすい要素のひとつとなります。
交通事故の刑事裁判の流れ
検察官が加害者を起訴すると刑事裁判が始まりますが、起訴の手続きには「略式起訴」と「公判請求」の2種類があります。
それぞれについて、手続きの流れをご説明します。
略式起訴の場合
略式起訴とは、被疑者(加害者)が罪を認めて同意することを条件として、書面審査だけで100万円以下の罰金刑や科料を科すことを求める手続きです。
書面審査によって裁判所が加害者に罰金刑や科料を科すことを「略式命令」といいます。
この手続きは公開の法廷ではなく、書面だけで行われるため、被害者が傍聴したり、意見を述べたりする機会はありません。
公判請求の場合
公判請求とは、裁判所で公開の法廷を開いて審理を行う、いわゆる「正式な刑事裁判」を求める手続きです。
公開の法廷における刑事裁判の手続きは、以下の流れで進められます。
①冒頭手続き
検察官が起訴状を朗読し、罪状認否(加害者が起訴内容を認めるかどうかの確認)が行われた上で、検察官がこの裁判で証拠により証明する予定の事実を陳述します(冒頭陳述)。
②証拠調べ手続き
実況見分調書や供述調書などの証拠が提出され、必要に応じて証人尋問も行われます。被害者やご遺族が証人として、法廷で尋問を受けることもあります。
弁護士・検察官・裁判官が被告人に質問する「被告人質問」も行われます。
③論告・求刑
検察官が事件についての意見を述べ、科すべき刑罰を明示して裁判所に求めます。
④弁論
弁護人が事件についての意見を述べます。
⑤最終意見陳述
最後に、被告人が自由に発言できる機会が設けられます。
⑥判決言い渡し
裁判官が有罪・無罪を決定した上で、有罪の場合には刑罰の内容も決定して言い渡します。
被害者参加によって加害者に対する刑罰は重くなる?
刑事裁判には「被害者参加」という制度があり、被害者がこの制度を利用することにより被害者の意見が反映され、結果として重い判決につながる場合があります。
ここでは、被害者参加制度について詳しく解説します。
被害者参加制度とは
被害者参加制度とは、一定の重大な刑事事件の被害者やそのご遺族が、刑事裁判の法廷に直接参加できる制度です。
傍聴人や証人としてだけではなく、「被害者参加人」として自発的な活動が認められているため、被害者の意見を刑事裁判の審理により強く反映させることができます。
危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪は被害者参加制度の対象事件とされていますので、人身事故の被害者やご遺族は、この制度を利用できます。
被害者参加制度の利用方法
被害者参加制度を利用するには、まず担当の検察官に対して申し出ます。
検察官が裁判所へ被害者の参加許可を申請し、裁判所が許可を出すと、被害者「被害者参加人」として刑事裁判への参加が認められます。
ただし、被害者参加人として手続きを適切に進めるためには、専門的な法的知識も要求されるため、弁護士に依頼し、「被害者参加弁護士」としてサポートしてもらうことが一般的です。
弁護士費用がかかりますが、収入や資産に関する一定の条件を満たせば、法テラスの国選被害者参加弁護士制度を利用できます。
被害者参加制度を利用した場合の刑事裁判の流れ
被害者参加人は、刑事裁判の手続きの中で、以下の流れで権限を行使できます。
1. 法廷への出席
公判期日に出席し、検察官の隣に着席できます。
2. 証人や被告人への質問
証人尋問や被告人質問の際に、独自の立場で直接質問できます。加害者に対しては、事故の発生状況や危険な運転をした理由、反省しているのかなどを問いただして真相の究明を図ったり、それまでの加害者の供述の真意を確かめたりすることが可能です。
3. 意見陳述
裁判の最後段階で、事実関係や心情、加害者に望む刑罰についての意見を述べることができます。この意見は、裁判官が加害者に対する刑罰を決める際の資料のひとつになります。
被害者参加制度を利用するメリット
被害者参加制度を利用することで、これまで述べてきたように、真相の究明を図ることができたり、加害者に対する刑罰が重くなる可能性があることが挙げられます。
加害者や裁判所に対して、被害者側の生活が事故によってどれほど一変したかを直接訴えることができるという点も、精神的なメリットとして挙げられるかもしれません。
これらのメリットを最大化するためには、弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士に依頼すれば、被害者参加の申出から証人尋問、被告人質問、検察官への意見表明、意見陳述に至るまで、フルコースのサポートを受けて手続きを適切に進めることが可能となります。
また、弁護士は被害者の代理人として、検察官に補充捜査を要請したり、被告人質問では法律上質問できる限界まで肉薄したりすることによって、刑事裁判はかなり充実したものとなります。
このように専門的なサポートを受けることで、検察官の求刑や裁判所の判決にも大きな影響を及ぼすことが期待できます。
加害者が事実を否認して言い逃れをしているようなケースでは、弁護士の充実した活動によって特に大きな影響を及ぼしやすい傾向にあります。
交通事故の被害者が刑事裁判で後悔しないためのポイント
交通事故の刑事裁判が終わってしまった後に「もっとこうしておけばよかった」と後悔しても、一度下された判決や処分を覆すことは非常に困難です。
納得のいく結果を得るためには、以下のポイントに注意しましょう。
事故の発生状況を正確に説明する
実況見分や警察や検察の事情聴取では、記憶が曖昧な部分をうやむやにせず、覚えていることを正確に伝えましょう。
警察官や検察官が作成した供述調書を読む際は、自分の言いたいことと少しでも違う表現があれば、訂正を求めてください。
供述調書に記載された内容は、基本的にそのまま刑事裁判で証拠となるため、納得のいかない記載を放置すると、裁判で不利な材料として使われてしまう危険があります。
処罰感情を適切に伝える
処罰感情(加害者に対してどのような処分を求めるのか)については、警察や検察の事情聴取の段階から、本音に従ってありのままに伝えましょう。
刑事裁判でも、被害者参加弁護士のサポート受けて、加害者に対する怒り、怪我の痛さや後遺障害の苦しみ、生活上の不便さ、遺族の無念さなどを、しっかりと訴えることが大切です。
検察官の処分決定(起訴・不起訴)や裁判所の判決では、被害者の処罰感情(どれだけ強い罰を望んでいるか)もひとつの判断要素として重視されます。
示談に安易に応じない
加害者本人や加害者側の弁護士は、刑事処分を軽くするために、刑事裁判が始まる前(起訴前)に示談を求めてくることが多いですが、安易に応じるのは考えものです。
示談書の中に「加害者の処罰を望まない」といった文言が含まれていると、加害者が不起訴になったり、裁判での刑が軽くなったりする可能性が高まります。
また、加害者からの謝罪に対しても、慎重に対応すべきです。示談が成立していなくても、加害者が真摯に謝罪し、被害者側がそれを受け入れたと判断されると、刑事裁判では加害者に有利な材料のひとつとなる可能性があります。
厳しい処罰を望む場合は、刑事裁判で刑が確定するまで加害者側との接触を回避する、といった対応も考えられます。
弁護士に依頼する
刑事手続きは専門的で分かりにくく、被害者やご遺族が自分で検察官や加害者側弁護士、裁判所などに対応するのは大きな精神的負担となるため、弁護士への依頼を強くおすすめします。
交通事故に詳しい弁護士に依頼(被害者参加の代理人委任など)することで、以下のようなサポートを受けることができます。
- 検察官との協議や捜査状況の確認
- 実況見分調書など刑事記録の取り寄せ
- 被害者参加制度の手続きや法廷での質問・意見陳述のサポート
- 民事上の示談交渉とのバランスを考慮したアドバイス
弁護士に相談するだけでも、状況に応じて最善の対処法についてアドバイスが受けられます。まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
交通事故における刑事裁判は、加害者にしかるべき法的責任を負わせるための大切な手続きです。
被害者やご遺族が泣き寝入りせず、後悔のない納得のいく結果を得るためには、刑事手続きの流れを把握し、捜査段階から実況見分や供述調書の作成に正しく対応すること、そして必要に応じて「被害者参加制度」を活用することが有効です。
オールイズワンは交通事故の被害者側の方へのサポートに特化した法律事務所です。交通事故による捜査や被害者参加制度など、刑事手続きに関しても、状況に応じて適切なアドバイスを差し上げることが可能です。
交通事故の刑事裁判で加害者の適正な処罰を求めたいとお考えの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。






