交通事故の被害者が後日死亡した場合の損害賠償請求について
交通事故の被害者が後日死亡した場合の損害賠償請求について
交通死亡事故では、被害者の方が事故直後に死亡されるだけでなく、入院後にしばらく経ってから亡くなられるケースがあります。そのような、交通事故の後日死亡の場合、亡くなるまでにかかった費用も損害賠償の対象となり、加害者側へ請求できます。
この記事では、交通事故の被害者が後日死亡したときの損害賠償請求と慰謝料相場について解説していきます。
交通死亡事故では約1,2割の方が30日以内に亡くなる
警察が発表する死亡事故の死者数は事故後24時間以内に亡くなった方の数ですが、実際には事故直後に亡くなられる方ばかりではありません。
内閣府がまとめたデータによると、24時間以内に亡くなられる方は全体の84.9%、後日30日以内に亡くなられる方は、15.1%となっています。つまり交通事故で亡くなられる方は警察の発表よりも1,2割ほど多くなるというのが実際のところです。
後日死亡は特に高齢者の割合が高く、歩行中、自転車走行中に頭部を損傷して、後日に亡くなられるケースが多く見られます。高齢者の方は、軽い頭部の外傷でも受傷後に「硬膜下血腫」などにより、頭に血液がたまることで容態が悪化するためです。
【参考】:道路交通事故交通統計24時間死者,30日以内死者及び30日死者の状況の比較|平成26年交通安全白書(全文) – 内閣府
交通事故の被害者が後日死亡した場合に請求できる損害賠償
このように交通死亡事故では、被害者の方が後日死亡するケースがありますが、死亡するまでに発生した以下の損害賠償金は加害者に請求することができます。
入院費用
被害者が交通事故のあとに入院し後日死亡した場合、事故に遭ってから死亡するまでの入院費用や治療費は加害者へ請求できます。入院費用や治療費は実際にかかった実費で計算し、その他の入院雑費は1日あたり通常1,500円で算出されます。
入院付添看護費用
被害者の入院中に近親者が付き添った場合の入院付添看護費用は、自賠責基準では1日あたり4,100円、弁護士基準では1日あたり6,500円を基準に計算します。なお、職業付添人に関しては実費で計算されます。
死亡後の損害賠償
また、遺族の方は被害者の死亡後には以下の損害賠償を請求することができます。
葬儀費用
交通事故が原因で被害者が死亡した場合、葬儀を執り行うのにかかった費用も損害賠償の対象となり、自賠責保険から100万円が補償されます。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が亡くなった精神的苦痛に対する損害賠償です。死亡慰謝料には、当事者である被害者本人への慰謝料、被害者の近親者である遺族への慰謝料の2種類があります。
死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、交通事故の被害者が生存していれば得られたであろう利益のことです。死亡事故の被害者は生活費がかからないため、その分は「生活費控除」として差し引かれます。
死亡逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
死亡事故の慰謝料相場
死亡慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定基準があります。それぞれの基準の慰謝料相場は以下のとおりです。
自賠責基準
被害者本人への死亡慰謝料は350万円です。
なお、被害者に遺族がいる場合、遺族にも慰謝料が支払われます。遺族への慰謝料は、遺族慰謝料請求権を持つ人数によって金額が異なります。遺族慰謝料請求権を持つのは、被害者の父母、配偶者、子どもです。
人数と金額に関しては、以下の表を参考になさってください。
【遺族への慰謝料】
請求者数 | 慰謝料の金額 |
---|---|
1名 | 550万円 |
2名 | 650万円 |
3名以上 | 750万円 |
さらに、被害者に被扶養者がいる場合は200万円が加算されて支払われます。
任意保険基準
任意保険基準の死亡慰謝料は、被害者の属性によって以下のように金額が変わってきます。
被害者の属性 | 慰謝料の金額 |
---|---|
一家の大黒柱 | 1,500~2,000万円 |
配偶者・専業主婦(主夫) | 1,300~1,600万円 |
子ども・高齢者 | 1,100~1,500万円 |
弁護士基準
弁護士基準の死亡慰謝料も、任意保険基準と同様に被害者の属性によって金額が変わります。弁護士基準の慰謝料額は過去の判例をベースとしており、3つの基準の中では最も高額になります。
被害者の属性 | 慰謝料の金額 |
---|---|
一家の大黒柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
子ども・高齢者 | 2,000〜2,500万円 |
死亡事故の損害賠償の時効
損害賠償請求には「時効」が存在します。交通事故の示談交渉を長期間行わなかった場合、損害賠償請求の時効が過ぎてしまう可能性があるため注意しなければなりません。
死亡事故の損害賠償に対する時効は以下のとおりです。
【自賠責保険に対する時効】
死亡事故の翌日から3年
【加害者側に対する時効】
損害および加害者を知ったときから5年(ただし物損は3年)
損害および加害者が分からなかった場合は、交通事故の翌日から20年