徒歩で横断していた主婦の死亡事故について、保険会社提示額から2,000万円以上アップして示談解決した事例

相手保険会社初回提案金額2,625万円⇒解決金額4,774万円

徒歩で横断していた主婦の死亡事故について、保険会社提示額から2,000万円以上アップして示談解決した事例

相手保険会社初回提案金額2,625万円⇒解決金額4,774万円
後遺障害内容・部位 頭部
診断名・症状名 脳ヘルニア
後遺障害等級
主な自覚症状

オールイズワンに後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い

賠償項目 示談交渉前 示談交渉後 増額分
死亡逸失利益 500万円 2,481万円 1,981万円
死亡慰謝料 2,000万円 2,150万円 150万円

ご依頼の経緯

1.ご依頼の経緯と事故態様について

本件は、片側一車線道路を横切る横断歩道上を横断歩行していた被害者が、同道路を直進してきた加害車両に衝突されたというものです。

このような事故態様では、歩行者の過失割合を基本的に0%としますが、本件は夕方から夜にかけての見通しの悪い時間帯であったため、5%の過失を課せられる可能性のあるケースでした。

しかしながら、本件現場の状況では、加害者の前方注意義務の程度を軽減する理由はないことなどを主張し、無事に被害者の過失割合0%で示談を進めることができました。

 

相手保険会社から金額の提示があるまでは、ご親族の方が対応されてきていましたが、提示されている金額が妥当なのか、また、後遺障害逸失利益が障害年金受給額をベースに認定されるのみで納得がいかないと悩まれご相談に来られました。

 

 

示談交渉の経緯

2.示談交渉について

被害者は本件事故受傷直後、現場から救急搬送される時点で既に心肺停止の状態にありました。そして、搬送中も、病院到着後も心肺蘇生が継続されましたが、心臓収縮は認められず、同日中に死亡の診断がなされました。

死亡後に撮影されたCTにより「頭部に著明な脳ヘルニア」、「脳底部骨折」、「環椎脱臼」等が認められたため、本件事故受傷に起因する死亡として示談交渉に臨むことになりました。本件で特に争点となったのは、①後遺障害逸失利益と②休業損害です。

 

① 死亡逸失利益

 死亡逸失利益は、基礎収入額(事故前被害者が行っていた家事労働の評価)×労働能力喪失期間(67歳までの期間)×労働能力喪失率(死亡事故の場合は100%)×(1-生活費控除率)でもって算出されます。本件で争点となったのは「基礎収入額」です。

 

被害者の方には元々、知的障害がありましたが、事故以前、被害者の方は重度の知的障害を負った兄と二人暮らしをしていました。兄は掃除、洗濯、調理のいずれについても自ら行うことはできず、これら家事については大半を被害者が担い、一部だけ居宅介護サービスを利用していました

相手方保険会社はこの生活状況に疑問を呈し、「被害者が担うことができた家事はより限定的だったのではないか」と反論し、基礎収入額を女性学歴計全年齢平均の50%にあたる約190万円とすべき旨の主張をしてきました。これは、被害者が自らも介護サービスを利用していたことを根拠としたものでした。

 

たしかに、被害者が介護サービスを利用していたことは事実で、その支援計画書からは、家事労働に取り組むことは困難に見え、立証にはかなりの困難を強いられました。

つまり、被害者は、軽度の精神疾患につき「薬の服用管理」という短時間で終わる簡易な介護を受けていました。この介護は支援計画の種別上では「身体介護」とされ、あたかも高度な介護を要する状態に見えてしまったというのが実情です。

 

しかし、被害者自身が受けていた介護に関する証拠書面の使い方を工夫するとともに、類似事案の判例分析を通じて主張を練り、事故前の被害者に対する介護は最低限の水準であったことや自立した生活の実態、同居の兄を支えていた事実を報告書等で裏付けることで、被害者が一定程度以上の家事に取り組んでいたことや、この家事労働は障害のない主婦の家事労働と同等の評価を受けるべきであることを訴えました。

 

家事従事者としての基礎収入額の満額にあたる約380万円を認めさせることに成功しました。

これにより2,482万円の死亡逸失利益を取得することができ、賠償金全体を大きく押し上げることができました。

 

② 死亡慰謝料

 相手保険会社からは、既に2,000万円の認定があり、知的障害のある方に関する裁判所の認定金額からするとまずまずの提示ではありました。しかし、被害者を亡くした同居の兄や、今後、被害者に代わって同居の兄の面倒を見ていかなければならない被害者の姉の精神的苦痛や経済的負担をつぶさに立証し、別途、親族固有の慰謝料150万円の認定を受けることに成功しました。

 

③ 休業損害

 本件では、被害者自身の休業損害に加え、駆け付けたご親族の休業損害が発生しました。

当法人としては、残されたご親族が被害者のもとへ駆け付けることは至極当然と考え、ご親族の休業損害は交通事故の損害に含まれてしかるべきと判断しました。そのため、この費目については譲歩せず交渉を続け、最終的にこれを認めさせることができました。

所感、争点

本件で争点となった「基礎収入額」は、他のケースでもポイントになることが多い問題です。本件では、被害者自身が事故前に介護を受けていたことが大きな問題となり、また、その時の介護の実態が、介護関連書面を一見するだけでは読み取ることができず、それによって大きく減額された保険会社提案の根拠となりました。書面を穴が空くほど見て、介護の実態を確認した上、その書面をどのように使っていくのかといったことの重要性も改めて感じさせられた事案でした。

 

本件のように被害者がお亡くなりになった交通事故の賠償金は、被害者のご親族が受け取られることになります。ご親族としては「お金で解決できる話ではない」とお考えになるのが当然です。

 

しかしながら、現状のルールではご親族のお気持ちは金銭で慰謝することしかできません。当法人では、ご親族の無念を少しでも汲み取って相手保険会社に訴えた上、ご親族にご納得いただける示談ができるよう、今後も様々な方法を模索していきたいと考えております。