60代兼業主婦が歩道上で跳ねられ、高次脳機能障害1級を取得して1億4,830万円で解決した事例
後遺障害内容・部位 | 高次脳機能障害 |
診断名・症状名 | 右急性硬膜外血腫、左急性硬膜下血腫、頭蓋骨骨折、脳挫傷、気脳症、 前額部、左側頭部裂創 |
後遺障害等級 | 別表第一第1級第1号 |
主な自覚症状 | 高次脳機能障害、片麻痺、半側空間無視、排尿排便障害等 |
オールイズワンに後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い
賠償項目 | 獲得金額 |
後遺障害逸失利益 | 2,800万円(裁判所基準超) |
後遺障害慰謝料・親族慰謝料 | 3,000万円(裁判所基準超) |
将来介護費 | 7,000万円(裁判所基準超) |
将来治療費・将来雑費、将来介護用品費、将来自宅改造費 | 1,150万円(裁判所基準超) |
成年後見関係費用 | 880万円(裁判所基準超) |
合計 | 1億4,830万円(裁判所基準超) |
ご依頼の経緯
1.ご依頼の経緯と事故態様について
本件は、歩道上にいた被害者に加害車両が突っ込んで衝突し、負傷させたというものです。加害車両は、本件被害者への衝突直前に車道上で自転車と正面衝突し、そこから更に暴走し、その奥の歩道上にいた本件被害者を含む計3名を跳ね飛ばしました。
このような事故態様から、被害者は自身に全く落ち度なく、衝突自体予期することもできないまま突然交通事故に見舞われてしまいました。したがって、本件では被害者の過失割合は当然に0%として示談交渉に臨みました。ある日突然奥様が事故で明日をも知れぬ状態になってしまい、今後について不安と恐怖の中、当事務所にご相談に来られました。
結果(後遺障害部分)
2.後遺障害について
被害者は事故受傷直後、JCSでⅢと評価される重篤な意識障害を呈していました。その後1年間以上にわたる治療を受けましたが、結果として高次脳機能障害という形で症状が残ってしまいました。
症状固定時の被害者は、知的機能の著しい低下に加え、片麻痺、半側空間無視により独力での移動や入浴ができず、また、食事や排尿・排便にも助けを要する状態でした。
当職としては、被害者の状態から後遺障害については別表第一第1級1号に認定されるべきと考え、後遺障害等級申請の準備を開始しました。そこで問題となったのは、本件被害者は意思疎通が困難な状態であったため、高次脳機能障害の審査において重視されるWAISやWMS-Rといった神経心理学的検査がいずれも実施できないことでした。
交通事故における後遺障害の判断においては、「公平な救済」や「請求事案ごとの均質的な取扱い」が重視されているため、知的機能の低下といった目に見えない障害を可視化する神経心理学的検査は非常に重要視されています。
そこで本件においては、被害者の実態を詳細に書面化することにより「食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの」であり、また、「高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの」に該当することを立証していきました。さらに、これらの実態を根拠として、被害者が「遷延性意識障害」に準ずる状態にあり、そのために神経心理学的検査の実施が不可能な旨を医師に書面化していただきました。
本件被害者は、このような重篤な状態にあることが認められたため、別表第一第1級第1号という適正な等級の認定を受けることができました。
示談交渉の経緯
3.示談交渉について
本件では、被害者が将来的にも自立した生活に復帰できる見込みが低かったことから、このことを踏まえて示談交渉に臨む必要がありました。そのうえで、交渉時の争点となったのは、①将来介護費・将来雑費、②成年後見関係費用、③後遺障害逸失利益(兼業主婦の休業損害)、④後遺障害慰謝料と親族固有の慰謝料、⑤将来治療費、⑥ご家族の休業損害、⑦症状固定時までに生じた介護施設費・介護用品費・自宅改造費、です。
① 将来介護費・将来雑費
前項の介護関係費用は、症状固定以降も当然に必要となります。
本件では、介護にあたっている被害者の夫もご高齢であったため、いずれは職業介護人に多くを任せる可能性を考慮する必要がありました。また、症状固定時までに手を付けられていなかった自宅内の段差解消、洗面所・トイレの介護用への交換等、改造費用の問題も残っていました。
これらについて、いずれも必須の費用であり、交通事故に起因する賠償として認められてしかるべきものと考え、しっかりと請求していきました。
その結果、裁判所の基準でも日額数千円~10,000円の認定例が多く、介護士による介護であっても日額平均13,000円前後で推移しているという判例状況の中、日額15,000円の認定を得ることに成功しました。
これにより、将来介護費の総認定額は、約7,000万円に達しました。
② 成年後見関係費用
本件事故により被害者は意思疎通が困難な状態になってしまったため、成年後見申立ては必須でした。
示談交渉までに申立て自体は完了しておりましたが、その費用だけでなく、将来的な後見人の報酬額を確保しておく必要がありました。裁判所は、この後見人の報酬金を認めることはなかなかありませんが、実際には必要となる費用です。
そこで、他の損害費目を引き合いに出すなど多角的に粘り強く交渉し、見事、約880万円の後見人報酬認定に漕ぎつけました。
③ 後遺障害逸失利益と兼業主婦の休業損害
被害者の方が、事故がなければどれだけの仕事と家事をこなすことができたのかに関する評価は、後遺障害逸失利益を算定する時の基礎年収額に反映されます。
本件ではこの点が争いとなり、保険会社は、67歳という被害者の年齢相応の年収約300
万円を固持していました。これに対し、当方は、被害者の方の家事のクオリティーの高
さやそのバイタリティーに焦点を当てた主張を繰り出し、全年齢平均の年収約380万円
をもって評価されるべきと争いました。
結局、両者の中間値にあたる約340万円を基礎年収とする認定を取り付けることに成
功し、約2,800万円の後遺障害逸失利益を獲得することに成功しました。
兼業主婦としての休業損害では、この基礎年収の1/365が基礎収入額として採用されます。したがって、上記のようにアップした基礎年収額を365で割った約9,250円の基礎収入日額として、症状固定まで約430万円の主婦の休業損害の認定を受けることができました。
④ 後遺障害慰謝料・親族固有慰謝料
これについても諸処の議論を経て、最終的には、赤い本で1級の相場とされている2,800万円で決着しました。示談交渉の中では、しばしば、裁判で認定されるべき親族固有の慰謝料がゼロのまま解決に至ってしまうようですが、本件では、自宅で被害者を介護しているご主人その他のご親族に合計200万円の認定がなされました。
⑤ 将来治療費
被害者は本件事故以降、2か月に1回の頻度で主治医によりてんかんの薬が処方されていました。てんかんの治療は長期を要することが多く、突然に薬の服用をやめてしまった場合には発作のリスクが大きくなってしまいます。そのため、症状固定後も薬を確保できるよう、強く交渉に当たりました。
⑥ ご家族の休業損害
本件では被害者自身に休業損害が発生したことは勿論ですが、被害者の入院中には夫と息子が仕事を休んで付き添っていたため、この両名にも休業損害が生じていました。被害者は身の回り動作のほとんどについて介護を要する状態でしたので、ご家族の付添いは必須であり、それによる休業損害はしっかりと補償されるべき費目でした。
⑦ 症状固定時までに生じた介護施設費・介護用品費・自宅改造費
被害者は事故受傷後3か月ほどで病院を退院し、以降は自宅で生活することになりました。しかしながら、従前の自宅の構造では被害者が生活するには困難であったため、手すり等の設置が不可欠でした。また、車椅子やベッド等の介護用品は継続的に発生します。さらに、夫等による介護だけでは限界があるため、デイサービス等の利用も必須でした。
このように、重度の高次脳機能障害を負ってしまった患者が生活していくためには、様々な物品や設備、手助けが必要となり、そのための費用は決して低額ではありません。そのため、これらの費用については漏れなく請求していく必要がありました。
所感、争点
(所感)
本件被害者は、事故受傷前までは家事の一切を担い、更にパート勤務もこなしていました。
ご主人の心の支えでもあったのではないでしょうか。しかし、本件交通事故により、このような状況から一転、自立した生活すら困難な状態となってしまい、ご家族も含め多大な損害が生じてしまいました。
この損害を何としても填補するため、まずは、獲得金額を大きく左右する後遺障害等級認定の段階において、顧問医の協力を得ながら、主治医に対し的確なパス出しを行い、1級の認定を確かなものにすることに成功しました。
その後の示談交渉の中では、後遺障害等級申請時に準備した医証に加え、これまでの重症案件の交渉で培った介護費用や後遺障害慰謝料、逸失利益に関する判例分析データ等を駆使し、最大限の交渉を行うことができました。
本事案は、同種事案では他所にはなかなかない、突出した示談金額で解決に至ったケースとなり、また、オールイズワンの技術が形になった事案です。
今日まで、被害者のご主人との道のりは決して短いものではなく、刑事手続被害者参加のお手伝いをさせていただいたり、成年後見の申立に際し家庭裁判所でお会いしたり、後遺障害診断へのご協力を頂いたり、示談交渉に必要な資料を揃えていただいたりと二人三脚で取り組んできた日々でした。
色々なことがありましたが、示談解決の報告をさせていただき、ホッとされたご様子を見るにつけ、私も今日までの取り組みに間違いはなかったと胸を撫でおろしました。
今後も、当法人の専門分野である高次脳機能障害の被害者の方々を一人でも多く救済することができるよう、努力してまいります。