自転車で走行していた30代男性が自動車に追突され高次脳機能3級と脊柱の変形11級の併合2級を取得して6,500万円で解決した事例
自転車で走行していた30代男性が自動車に追突され高次脳機能3級と脊柱の変形11級の併合2級を取得して6,500万円で解決した事例
後遺障害内容・部位 | 高次脳機能障害、脊柱の変形 |
診断名・症状名 | 外傷性くも膜下出血、脳挫傷、頭部外傷後せん妄、高次脳機能障害、頚胸椎棘突起骨折、胸椎圧迫骨折 |
後遺障害等級 | 併合2級 |
主な自覚症状 | 注意障害、理解力低下、記憶障害、遂行機能障害、社会行動障害、妄想障害等 |
オールイズワンに後遺障害等級認定・示談交渉サポートを受ける前と
受けた後の違い
賠償項目 | 獲得金額 |
裁判基準 | 4,300万円 |
解決金額 | 6,500万円 |
差額 | 2,200万円 |
ご依頼の経緯
事故後、被害者が身体に残された様々な障害に悩まれているときに、当法人のホームページをご覧になり無料相談の後、ご依頼をされました。
本件は、普通乗用自動車で走行していた加害者が、前方にて自車と同一方向に進行していた被害者運転の自転車に追突したという事故でした。
加害者はアクセルとブレーキを踏み間違えたとのことで、本来減速すべきところで更に加速しており、50~60km/hの速度で被害車両に衝突しました。被害者は当該衝突によりボンネット上に跳ね上げられ、フロンドガラスに衝突した上で地面に転倒しました。
本件は追突事故という事故態様であったため、被害者には全く過失のない事故として後の示談交渉に臨みました。
結果(後遺障害部分)
被害者は本件事故受傷後3年近くにわたり治療を受けておりましたが、高次脳機能障害の各症状が残存したため、症状固定の診断を受け、後遺障害等級申請に臨みました。
被害者の障害は、注意障害、理解力低下、記憶障害、遂行機能障害、社会行動障害、妄想障害等、多岐にわたり、いずれも非常に重度のものでした。一方で、身の回り動作の多くについては自立して行うことができる状態でした。
高次脳機能障害の等級認定では、1・2級と3級以下の間に「身の回り動作の介護の要否」という要件があります。本件被害者はこの点で2級以上の等級を認められることが難しい状態でした。しかしながら、「行動面においては、単独行動に生命身体の危険を伴うこともありうる」とされる程度の障害が残存していたことから、より上位の等級が認められる必要性があるというのが実情でした。
そこで、本件では脊柱の障害についてもしっかりと等級認定を受けることで、併合で上位等級を目指す方針をとりました。
脊柱の圧迫骨折とは、椎体の前縁が潰れてしまう楔状椎、椎体の中央部が凹む形で潰れる魚椎、椎体が全体的に潰れる扁平椎といった状態を指します。圧迫骨折は骨の強度低下が原因で生じることもあるため、交通事故による外傷が原因であることを立証する場合は、経時的な画像撮影により、圧壊の進行を確認することが要点の一つとなります。
本件では、高次脳機能障害について第3級に加え、脊柱の圧迫骨折について第11級を認めさせることに成功したため、併合等級として第2級の評価を得ることができました。
示談交渉の経緯
本件被害者は、今回の事故に遭う数年前から統合失調症に対する治療を受けており、この症状が第14級相当であったとされました。そのため、本件では①逸失利益、②将来介護費、③成年後見費用に加え、④素因減額が争点となりました。
①逸失利益
被害者は事故以前、患っていた統合失調症により就労できない状態が続いていました。しかしながら、その症状は少しずつ緩解しており、事故に遭う直前の時期には軽作業ではあるものの仕事に復帰することができたところでした。このようなタイミングでの事故受傷であったため、事故時には被害者の本来的な能力に相当する収入は得られていませんした。そこで、当職では被害者の最終学歴が大卒であったことに加え、過去の収入証明等を立証資料とし、被害者の基礎収入の額が現状以上であることを主張、これを認めさせることに成功しました。
②将来介護費
被害者のお母様は70歳近い年齢であったため、高次脳機能障害で第3級とされる障害を負った息子の介護は非常に負担の大きいものでした。そのため、「近親者介護を担う母67歳以降は日額15,000円を認めた」判例等を根拠として、将来介護費の金額を主張し、相手の低額の認定を引き上げることが出来ました。
③成年後見費用
成年後見費用は、実際に手続きに至っていない場合には否定の反論を受けることがあります。そのため、後遺障害等級申請手続と並行して成年後見の申立ても行い、加えて今後発生する成年後見費用も主張しました。
④素因減額
本件では被害者の抱える統合失調症について、後遺障害認定の既存障害として正式に第14級相当である旨が認められておりました。そのため、これを根拠とした素因減額はある程度受け入れる必要がありました。この場合、裁判上での解決を図れば形式的に大きな素因減額がなされる可能性が高かったため、裁判となれば上記①~③の費目が高額となることを強く主張の上、全体として妥当な金額となるよう交渉し、裁判外での解決を図りました。その結果、裁判上基準を見積もると最終支払額として4300万円程度となる可能性があったところ、6500万円での解決を迎えることができました。
所感、争点
本件では、被害者が社会復帰に向かって前進し出したタイミングで事故に遭ってしまったことが大きなポイントでした。交通事故の賠償費目では「基礎収入」が非常に重要な意味を持つため、傷病等で本来の能力以下の収入となっているところで事故に遭ってしまうと大きな損失となってしまいます。
このようなケースでいかに適正な等級認定を得られるか、又は示談交渉において相当額を認めさせることができるか、今後も模索を続けていきたいと存じます。